飲料は食品と比べて満腹感が得にくいという説があります。ところが、クッキーとコーラ飲料が満腹感にどのように影響するかを調べた研究では、どちらの場合も満腹感に違いはなく、私たちの身体は食品か飲料かにかかわらず、カロリーを等しく認識することが示唆されました。私たちの身体は、飲料や食品から余分なカロリーを摂取した後に食べる量を減らしてバランスをとることが得意ではありません。しかし、食品のサイズをチェックしたり、より低カロリーの食品を選んだりすることで、飲料からのカロリーを調整することが可能です。


肥満分野の専門家であるAdam Drewnowski先生 へのインタビュー

肥満は世界中で急激に増加しており、その原因についてはさまざまな説があります。一説では、肥満の急増は、清涼飲料水などの砂糖入り甘味飲料から摂取する「液体由来のカロリー」の量が増えていることに関連しているといいます。研究者の中には、「清涼飲料水は食品から摂取するカロリーとは異なり、食欲を満たすことはできない」と考える者もいるからです。

しかし、食欲を満たす働きには飲料と食品とで違いはないことや、食品以上に満腹感の得られる飲料があることが研究によって示されており、飲料では、それほど満腹感が感じられないという説にはまだ議論の余地があります。

このように諸説あるなか、「飲料と食品とで、カロリーを摂取することで得られる満腹感に違いはあるのか?」「異なる種類の飲料ではどうなのか?」「カロリー摂取量に対する生理学的メカニズムはどうなっているのか?」など、数々の疑問が湧いてきます。そこで、この問題についての展望と科学的見解について、ワシントン大学の肥満の専門家であるAdam Drewnowski先生にお話を伺いました。

<Contents >
1.液体由来のカロリーと肥満の関係
●メディアでは、砂糖入り甘味飲料などから摂取する「液体由来のカロリー」が肥満の主な原因であるといわれています。この説の根拠はどこにあるのでしょうか? また、どうして注目されるようになったのでしょうか?

●満腹感について飲料と食品を比較された先生のご研究では、これとはまったく異なる結果が示されました。この調査結果についてご説明いただけますでしょうか。

●満腹感を決定する要因は、飲料か食品かではなく、軽食から昼食までの時間ということですか?

2.満腹感に関するさまざまな研究
●現在、飲料と食品、満腹感に関する研究の関心は、どのようなところにありますか?

●先生は、さまざまな種類の飲料がもたらす満腹感について調査されています。この点に注目した理由と、そこからどのようなことがわかってきたのかを教えていただけますか。

●私たちは飲料や食品から余分に摂取したカロリーをうまく釣り合わせることが難しいようです。体重を気にしている人にとってはあまりうれしくないことのように思えますが?

●飲料のカロリーと満腹感との関係をより明確にするために、今後はどのような研究を実施される予定ですか?

1.液体由来のカロリーと肥満の関係

メディアでは、砂糖入り甘味飲料などから摂取する「液体由来のカロリー」が肥満の主な原因であるといわれています。この説の根拠はどこにあるのでしょうか? また、どうして注目されるようになったのでしょうか?
  Drewnowski先生:この説の背景には、「我々の身体は液体由来のカロリーを認識できない」という考え方があります。飲料は食品と同じような満腹感を与えることはできず、高カロリーの清涼飲料水を飲んでも空腹感は変わらないため、他の食品を摂取することで、結果的にはより多くのカロリーを摂取してしまうのではないかと推測しているのです。

この説は、2003年に世界保健機関(WHO)により肥満の原因として取り上げられたことで、多くの注目を集めるようになりました。ところが、実はその根拠となる研究は、一つしかないと考えられています。その研究では、15人の被験者に対して、それぞれ4週間ずつ2回の試験期間が設けられました。被験者はそれぞれの試験期間中、通常通りの食事の他に、ジェリービーンズあるいは清涼飲料水から450kcal分を摂取しました。ジェリービーンズを食べた被験者は、他の食事や軽食からのカロリー摂取が少なくなり、余分なカロリーが相殺され、カロリー摂取量は普段と変わりませんでした。しかし清涼飲料水を飲んだ場合はカロリーが相殺されることはなく、結果的に普段より多くのカロリーを摂取することになったのです。
 
満腹感について飲料と食品を比較された先生のご研究では、これとはまったく異なる結果が示されました。この調査結果についてご説明いただけますでしょうか。
  Drewnowski先生:我々は、クッキーとコーラ飲料が満腹感に与える影響について調べました。調査は昼食前に2回行い、数時間にわたって、空腹度、満腹度、ノドの渇き具合をチェックし、また調査時の食事における食品摂取量を解析しました。

実際には、32人の被験者に、軽食として無脂肪ラズベリークッキーまたはコーラ飲料(300kcal分)をそれぞれ2回、昼食の2時間前(「早い時間」)もしくは20分前(「遅い時間」)にとってもらいました。その結果、軽食がクッキーでもコーラ飲料でも、昼食時のカロリー摂取量に影響しないことが明らかになりました。一方で、「遅い時間」にとった軽食は、食品か飲料かにかかわらず食欲を抑制し、そのため昼食時の摂取量は減少しました。
 
満腹感を決定する要因は、飲料か食品かではなく、軽食から昼食までの時間ということですか?
  Drewnowski先生:その通りです。空腹感や食欲、昼食で摂取されるカロリーの量は、クッキーを食べた場合でもコーラ飲料を飲んだ場合でも同様で、満腹感の違いはありませんでした。この結果は、食品か飲料かにかかわらず、我々の身体はどちらからのカロリーも等しく認識できることを示唆しています。つまり、飲料か食品かに関係なく、すべてのカロリーは同等に扱われるということです。我々の研究では、昼食の直前に摂取した飲料のカロリーが食欲を減退させるのに非常に効果的であったという結果を得ることができました。一方、これを否定する研究者も存在します。

2.満腹感に関するさまざまな研究

現在、飲料と食品、満腹感に関する研究の関心は、どのようなところにありますか?
  Drewnowski先生:最近、ジェリービーンズと清涼飲料水との比較調査を行った同じグループによって、飲料と食品の違いが食欲とカロリー摂取に与える影響についての再調査が行われました。彼らが今回比較したのは、スイカとスイカジュース、チーズと牛乳、そしてココナッツ果肉とココナッツミルクです。その結果、どの食品を摂取してもカロリーの追加補充を減らすことは、ほとんどありませんでした。飲料の影響は食品より若干弱かったものの、カロリー相殺の差は、液体の糖質と固体の糖質との間でわずか12%でした(スイカの場合)。これまで「飲料では満腹感は得られない」と考えられていたことを思うと、この数字は予想以上に小さな値といえるでしょう。

我々はこのテーマに関するすべての文献を再検討しました。飲料が食品ほど満腹感を与えることはないとする研究がある一方で、多くの食品よりもスープのほうが満腹感を得られるとする研究もあります。もちろん、液体のダイエット食品は「空腹をより長く抑える」というコピーで売られていることからも、飲料による満腹感は食品に劣ると結論づけることはできません。一般的に言って、我々人間には、余分なカロリーを相殺する能力があまり備わっていないのかもしれません。
 
先生は、さまざまな種類の飲料がもたらす満腹感について調査されています。この点に注目した理由と、そこからどのようなことがわかってきたのかを教えていただけますか。
  Drewnowski先生:牛乳やフルーツジュース、野菜ジュースが、飲料としてよりもむしろ「飲む食品」として扱われていたことに興味をもったのがきっかけで、この研究を始めました。研究の中には、これらの飲料によって満腹感を得ることは良い選択だとするものもあります。一般の清涼飲料水は喉の渇きを潤すだけで空腹を抑えることはありませんが、ジュースや牛乳は空腹を抑えて満腹感をもたらすことができるという考え方です。これらの飲料はエネルギー密度が低いために、重量あたりのカロリーが少なく、その結果、より少ないカロリーで満腹感を得ることができるのです。

これは非常に興味深いことで、普通のコーラ飲料は、乳脂肪分1%の牛乳やオレンジジュースとまったく同じエネルギー密度(0.4 kcal/g)を有しているからです。そこで、これらの飲料が満腹感に与える影響に違いがあるのかを調べることにしました。なお、これらの飲料はエネルギー密度が同じなので、すべての飲料を同量・同カロリーに揃えて試験を行うことができました。

32人の被験者に、研究室へ4回来ていただき朝食をとってもらいました。メニューには、何も付けていないトースト1枚と、560mL(20fl. oz.)のコーラ飲料、オレンジジュース、脂肪分1%の牛乳(それぞれ約250kcal相当)を用意しました。対照には、カロリーゼロの炭酸水を用いました。その結果、コーラ飲料、ジュース、牛乳が、摂取後2時間までに被験者が感じる空腹感や満腹感、食欲に与える影響は、同じであることがわかりました。つまり、これらの飲料による満腹感は同じであることが明らかになったのです。ただし、昼食時にカロリーが相殺されなかったため、これらの飲料摂取後の全カロリー摂取量は、対照の炭酸水と比べて増加しました。

この結果から言えることは、清涼飲料水はカロリーの相殺を促進しないということであり、それはオレンジジュースや牛乳も同様であるということです。別のグループによる研究では、コーラ飲料、オレンジジュース、脂肪分1%の牛乳を、食前ではなく食事と一緒に飲んだ場合でも、同じ結果が得られています。
 
私たちは飲料や食品から余分に摂取したカロリーをうまく釣り合わせることが難しいようです。体重を気にしている人にとってはあまりうれしくないことのように思えますが?
  Drewnowski先生:我々の身体はカロリー不足に対してうまく調整できるようになっていて、カロリーが足りなくなってくるとより多くの食品を求めます。子どもやスポーツ選手は特にこの点に長けています。しかしながら、我々のほとんどは、余分なカロリーを摂取した後に食べる量を減らして摂取量のバランスをとるということがあまり得意ではありません。少なくとも、それを担う生理学的メカニズムは存在しないのです。

だからといって、がっかりすることはありません。我々は生理学的メカニズムに完全に支配されているわけではないのです。我々は、カロリー摂取量をコントロールするために「食べる量」以外の要因を考慮することができます。つまり、何かを食べたり飲んだりする際に、食品のサイズをチェックしたり、より低カロリーな食品を選んだりすることで、飲料からのカロリーを食事の一部で調整することができるということです。
 
飲料のカロリーと満腹感との関係をより明確にするために、今後はどのような研究を実施される予定ですか?
  Drewnowski先生:ある研究者が述べた「人間は、進化の過程で、液体にもカロリーが含まれていることがわからなくなってしまった」という意見に興味を持っています。その研究者は「我々人間は長い歴史を通して、普通の水にしか接してこなかったからだ」と主張したいようです。これに対して私は、「母乳」という1つの言葉で反論したいと思います。ご存じのように、哺乳類は母乳を飲んで進化してきました。母乳にはカロリーも栄養素も含まれています。また、母乳と同様に、農業には長い歴史があります。グラニュー糖は、紀元前510年にはすでに製造されていました。食物の歴史は、昨日始まったわけではないのです。

 

参考文献
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DellaValle DM, et al. Does the consumption of caloric and non-caloric beverages with a meal affect energy intake? Appetite. 2005; 44: 187-193.

経歴
Adam Drewnowski, PhD

Dr.Adam Drewnowskiは、ワシントン大学公衆衛生栄養センター(Center for Public Health Nutrition)のディレクターであり、またワシントン大学疫学・医学科教授である。オックスフォードのベリオール・カレッジとニューヨークのロックフェラー大学で学位を取得。味覚、コスト、利便性が食品の好みと食生活にもたらす影響、および健康状態における格差について研究している。また、NIH Roadmap Initiativeが資金提供しているワシントン大学肥満研究センター(UW Center for Obesity Research)のディレクターでもある。同センターは、地域や州レベルで環境、経済、政策問題に取り組んでおり、肥満予防を支援している。博士はさらに栄養素のプロファイリング法を開発して栄養成分により食品や飲料を分類し、栄養や健康食品の規制にも寄与している。100以上の研究論文と多数の論評、専門書を執筆・出版しており、国内外の会議にも多く招かれている。

免責事項
本稿で引用されている専門家や組織の見解と意見は、あくまでも各自のものであり、必ずしも属する機関や協会、またはThe Coca-Cola Companyの意見を代表するものではありません。

本記事に記載されている情報は、医療と栄養の専門家によるアドバイスとは異なります。特定の健康上の懸念がある場合は、医療と栄養の専門家にご相談ください。