運動している時、スポーツ飲料がいつもより甘く感じたことはありませんか? 実は、運動中は、味覚が敏感になることが知られています。でも、だからといってスポーツ飲料を薄めて飲めばよいわけではありません。味覚のしくみを理解し、運動中も正しい水分補給を心がけましょう。


味を感じるしくみとは?
私たちが食べ物や飲料を口に入れた時に、味を感じ取るセンサーの役割をするのは「味蕾(みらい)」という組織です。味蕾は、舌や口蓋(口の中の上側の部分)、頰の粘膜などに広く存在しています。食べ物や飲料を口に入れると、5つの基本の味である、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味のもとになる呈味物質が唾液に溶け出します。そして、味蕾が感知した呈味物質の情報が神経を通じて脳に伝えられると、「味」として感じることができます。呈味物質の濃度が低いと感じることはできませんが、濃度を高めていくと、次第に味として感じられるようになります。味を感じられる最低濃度のことを、その呈味物質の味覚閾値(いきち)といいます1)

運動中は味覚閾値が下がる!?
最近の研究により、運動中は、(1)甘味(2)塩味(3)酸味の各味覚閾値が下がるために、これらの味を敏感に感じるようになることがわかってきました2)。味覚閾値の低下は、運動で消費されたエネルギーや、失われたミネラル等に対する、一種の欲求シグナルと考えられています。具体的に、(1)甘味閾値の低下は、運動で失った糖質を補うため(2)塩味閾値の低下は、汗で失われたミネラル(ナトリウム)を補うため、(3)酸味閾値の低下は、エネルギー代謝を円滑にするクエン酸などの有機酸を補うためのシグナルと推測されています。失われたものに該当する呈味物質を検知するために味覚閾値を下げると、結果的に、味に対して敏感になるというわけです2)

甘味を強く感じても、スポーツ飲料は薄めずに飲むのが原則
手軽に水分補給ができるスポーツ飲料も、運動中は普段よりも甘味を強く感じるために、薄めて飲みたくなることがあるかもしれません。しかし、市販のスポーツ飲料は、一般的に糖質や電解質がバランスよく含まれており、効率的な水分補給ができるように設計されています。そのため、正しい水分補給のためには薄めないで飲むのが原則です。運動時の水分補給には、糖質とナトリウム(0.1~0.2%)を含む飲料が適しており、特に1時間以上の運動では、4〜8%程度の糖質を含む飲料を選ぶと、水分補給だけでなく疲労の予防にも役立ちます3)。水を加えて薄めると、糖質の濃度が下がって水分補給の効率も悪くなってしまうため、注意が必要です4)。スポーツ飲料には、かんきつ類の果汁が入っていたり、後味がよりスッキリしていたりと、さまざまな種類があるので、好みの味のものを選ぶようにするとよいでしょう。

運動中の味覚の変化と上手につきあいながら、運動の持続時間にも見合った「正しい水分補給」を意識することが大切です。

参考文献

1) 佐々木繁盛ほか, 仙台大学紀要. 2013, 45, 47-53
2) 本岡佑子, 麻見直美, 日本運動生理学雑誌. 2010, 17, 59-66
3) スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(日本体育協会)
http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guidebook_part3.pdf
4)Kamijo Y, et al, Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2012, 303, R824–R833

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