低カロリー甘味料であるアスパルテームを使用した飲食物は、砂糖と同程度の甘さを感じながら、体重管理を行うことが可能であると、最近の研究で証明されています。また別の研究では、アスパルテームを用いて体重管理を行った場合、体重減少維持率が高く、いわゆる「リバウンド」を起こしにくいことが明らかになっています。かつては、アスパルテームの摂取により、逆に食欲や食事量が増してしまい、余計なカロリーを摂取するような事態を生むのではないかと懸念されていたこともありましたが、現在では前述の研究などにより、アスパルテームが健康に影響を及ぼすことはないということが明らかになっています。


アスパルテームは食欲を亢進させず、食事量を増加させないことが明らかになった。 - アスパルテームは体重管理に有用である。
「低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料が、逆に体重を増加させるのではないか」という懸念を示した疫学調査や動物試験が、広くメディアに取り上げられ注目を集めました。しかし、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料を含む食品・飲料は、高カロリー甘味料に比べて体重管理に役立つことが、多くの試験によって示されています。ただし、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料入りの食品・飲料をどのように選択し、利用するかによってその効果が大きく異なります。なぜなら、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料を用いた食品・飲料を使用してカロリー制限をしても、他の食品・飲料による過剰カロリーが大きければ、効果が相殺されてしまうからです。

Blackburnらによる2年間のランダム化比較対照試験*1では、アスパルテームを用いた減量プログラムを実施した肥満者は、アスパルテームを用いなかった肥満者と、体重減少量がほぼ同等であったことが明らかになっています。ただし、2年間のフォローアップ調査では、アスパルテーム利用者は体重減少の維持率が高く、体重の「リバウンド」効果が、アスパルテーム非利用者に比べて50%未満でした。
 
*1: 評価の偏りを避けるために、研究の対象者をランダム(無作為)に2つのグループに分け、一方には評価する治療などの介入を行い、もう一方には異なる治療などを行う。一定期間後に両グループの結果を比較して、効果を検証する。質の高い研究手法とされる。
 
2012年には、砂糖入り飲料を水またはダイエット飲料に変更した場合について報告されました。水に変更した場合は体重が2.0%減少したのに対して、ダイエット飲料の場合は2.5%も減少することが示されました。
 
2011年の試験では、ダイエットコーラ飲料が代謝に及ぼす影響は「水とほぼ同等である」ことが明らかにされました。
 
Appetite誌に掲載されたAntonらによる、やせた被験者および肥満の被験者における満腹感に関する2010年の試験では、ステビアまたはアスパルテームを含む低カロリー食品(飲料)を食事前に摂った場合、ショ糖を含む高カロリー食品(飲料)を摂取した場合に比べて、昼食または夕食の食事量が増加することはありませんでした。
 
2009年にAmerican Journal of Clinical Nutrition誌に掲載されたMattesとPopkinによるレビュー論文*2では、食欲、食事量、体重に対する、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料の影響を調べた試験224件を評価しています。「低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料が体重を増加させる可能性がある」という懸念は、1986年に英国で行われた試験がきっかけとなりました。その内容は、アスパルテームで甘味を付けた水を飲んだ人は、通常の水を飲んだ人に比べ、自己評価で食欲が亢進したというものでした。しかし、この結果は他の試験では確認されておらず、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料を摂取することで、食事量が増加するという報告はありませんでした。短期間の試験では、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料の使用により、摂取カロリーが減少したというエビデンスには相反する結果が混在していますが、著者らは「長期試験では、おそらくほとんどが栄養摂取に注目した試験であることもあり、一貫して、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料の使用により摂取カロリーを若干減少させることが示されている」と結論づけています。
 
  *2:すでに発表された複数の原著論文を収集・要約した論文。
 
  MattesとPopkinは、Body Mass Index(BMI)に対する影響について、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料の使用によって体重が増加したという最近の疫学的知見のうち少なくとも一部は「逆の因果関係がその説明となる可能性が高い」とし、「我々および他の研究者によってまとめられたエビデンスは、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料を高カロリー甘味料の代わりに使った場合、体重管理に役立つ可能性があることを示唆している」と述べています。
 
BellisleとDrewnowskiによる2007年の検証では、低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料、エネルギー密度*3、満腹感に関してさまざまな基礎研究、臨床試験、疫学的試験に対する評価が行われ、「低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料は万全ではないものの、食品・飲料に用いることで、摂取カロリーを減少できる」と結論づけました。

  *3:食べ物の重さに対するカロリー(kcal/g)を示す単位。
 
英国栄養協会(British Nutrition Foundation:BNF)により2006年に行われた16件の研究に対するレビューでは、「ショ糖の代わりにアスパルテームで甘味付けされた食品・飲料を用いることで、味を損なうことなく体重を管理することができる。平均体重75 kgの成人の場合、12週間の観察において、週に約0.2 kgの体重減少が見込まれる」と結論づけています。
 
米国栄養士会(American Dietetic Association:ADA)では2008年に「エビデンス分析」(Evidence analysis:EAL)アプローチを用いて、アスパルテームに対する一般的な懸念に関して、分析を行いました。例えば、アスパルテームのような低カロリーまたはカロリーゼロ甘味料には、「リバウンド」効果があるため、実際には体重を増加させる事実が認められるかどうかという分析です。この分析では、アスパルテームが健康に悪影響をもたらすというエビデンスが存在するかどうかについても評価しています。ヒトを対象とした試験結果に対して、各試験の規模や質、潜在的なバイアスも含めて徹底的に分析した結果、メディアによる臆測とは異なり、アスパルテームを甘味料として用いたとしても、食欲や食事量に影響を与えないことがわかりました。この評価では、規制当局がこれまでに何度も述べていた通り、アスパルテームは一般消費者に悪影響を及ぼさない、ということが再確認されました。
 
ADAによる、アスパルテームについてのエビデンスベース分析に基づいた主な見解は次の通りです。
 
「アスパルテームが食欲または食事量に影響しないことを示す十分なエビデンスが存在する」。このコンセンサス声明には「グレード1」が与えられました。これはEALスケールで最高のグレードです。
 
「低カロリーダイエットという観点からアスパルテームを使用することは、成人において、体重を増加させず、逆に減少させる可能性がある」。この研究には「グレード1」が与えられました。これはEALスケールで最高のグレードです。

同委員会は、このテーマに関する研究論文のうち、査読を経た研究論文の評価を行い、「アスパルテームの摂取は、一般消費者に対して悪影響を及ぼさない」と結論づけています。ここでも、専門家によりこの見解がグレード1(EALスケールで最高のグレード)であることが確認されました。これらのプロセスはすべて、ADAによって管理されています。また、この評価はADAと味の素株式会社の共同出費により提供されました。この報告書へのアクセス、およびこの研究の要約へのアクセスと全質問については、www.eatright.orgからADA Evidence Analysis Libraryのウェブサイトを参照してください。
 

参考文献
Tate DF, et al. Replacing caloric beverages with water of diet beverages for weight loss in adults: Main results of the Choose Healthy Options Consciously Everyday (CHOICE) randomized clinical trial. American Journal of Clinical Nutrition. Published ahead of print February 1, 2012. doi:10.3945/ajcn.111.026278.

Maersk M, et al. Sucrose-sweetened beverages increase fat storage in the liver, muscle, and visceral fat depot: a 6-mo randomized intervention study. American Journal of Clinical Nutrition. First published ahead of print December 28, 2011. doi:10.395/ajcn.111.022533.

:Position of the Academy of Nutrition and Dietetics.Use of Nutritive and Nonnutritive Sweeteners J Acad Nutr Diet. 2012; 112: 739-758.

Anton S, et al. Effects of stevia, aspartame, and sucrose on food intake, satiety, and postprandial glucose and insulin levels. Appetite. advance online publication March 2010. doi:10.1016/j.appet.2010.03.009

Mattes R and Popkin B. Nonnutritive sweetener consumption in humans: effects on appetite and food intake and their putative mechanisms. American J Clin Nutr. 2009; 89: 1-14.

Bellisle F and Drewnowski A. Intense sweeteners, energy intake and the control of body weight. European J Clin Nutr. 2007; 61: 691-700.

Monsivais P, et al. Sugars and satiety: Does the type of sweetener make a difference? Am J Clin Nutr. 2007; 86: 116-123.

Ashwell M, et al. A review of the effectiveness of aspartame in helping with weight control. Nutr Bull. 2006; 31(2): 115-128.

Academy of Nutrition and Dietetics Evidence Analysis Library on Aspartame. A systematic review of the literature on aspartame. www.adaevidencelibrary.com

Blackburn GL, et al. The effect of aspartame as part of a multidisciplinary weight-control program on short- and long term control of body weight. Am J Clin Nutr. 1997; 65: 409-418.

総評
大橋 靖雄 先生(東京大学名誉教授、中央大学人間総合理工学科 教授)

アスパルテームは1981年に米国で、1983年に日本で使用が許可された人工甘味料であり、ノンあるいはローカロリーの食品・飲料に広く用いられている。

世界的に、とくに米国ではエネルギー過剰摂取による肥満および2型糖尿病患者の増加が社会問題化しており、飲料中のショ糖を人工甘味料で置き換えることによるエネルギー摂取の抑制と、それに伴う体重維持あるいは減少が期待されている。

本記事は、食欲、食事摂取量そして体重管理にアスパルテームが与える影響を10編の論文を参考にまとめたものである。10編の参考文献は原著論文、従来の主観的レビュー、システマティックレビューとメタアナリシスからなっており、引用文献の網羅性と客観性から、文献3の米国栄養士会によるポジションペーパー、文献8の英国栄養協会のシステマティックレビュー・メタアナリシスのエビデンスの質が高いと判断できる。いずれの研究に関しても製法特許を有する味の素社の資金提供がなされているが、このことが評価に偏りを生じさせている傾向は見出せない。

少なくとも一般の成人に対しては、アスパルテームが何らかの有害反応を引き起こすエビデンスは存在しない。また、臨床試験の結果、アスパルテームが食欲と食事摂取量に影響しないことを示すエビデンスが存在する(文献3)。体重に関しては、短期間(平均12週間)の臨床試験のメタアナリシスでアスパルテームの効果が示されている(文献3)。しかし長期的効果のエビデンスは不十分であり、長期ランダム化臨床試験が必要であることが複数の文献で指摘されている。

日本人に対し、アスパルテームあるいはアスパルテームを用いたダイエットが体重管理に有効かどうかを検討したランダム化臨床試験は、PubMedおよび医中誌webを用いた文献検索の限りは存在しない(2016年1月現在)。体格、食事パターン、砂糖を含む飲料水摂取量が欧米とは異なる日本人に対し、本記事の体重管理に関する結論がそのまま適用できるとは限らない。