普段、缶やペットボトルの飲料を飲む時、その香りを気にすることはありますか? 果実のさわやかな香り、茶葉の芳醇な香り、ミルクやバニラの甘い香りなど、味に負けない存在感を放っていると感じる人もいるのではないでしょうか。実は“香り”は飲料の“おいしさ”には欠かせない存在です。その理由について、食品香料の役割や香りの感じ方を視点に紐解いていきます。

 

●飲料に使われる“食品香料”とは
市販の食べ物や飲料の多くには、それらをよりおいしくする目的で食品香料が使われています1)。その役割は、食品素材の本来の香りを強めたり、加工や流通の過程で失われた香りを補ったりすることです。また、食品素材の本来の匂いが好ましくない場合や、加工時に加熱香や発酵臭などが生じる場合に食品香料を加えることもあり、マスキング(風味矯正)の役目を担うこともあります。食品香料には、果物や花の香りなど天然由来の“天然香料”と、人工的につくられる“合成香料”があり1, 2)、厚生労働省により安全性が認められたものだけが使われています3)
 

●もし食品香料が入っていなければ……
食品香料は、飲料のおいしさにとって欠かせない存在です。
例えば、炭酸飲料の基本的な組成は、糖類などの甘味料、クエン酸などの酸味料、炭酸ガスですが、加える食品香料によってさまざまな種類のおいしさが生まれます1, 4)。また、コーヒー飲料は、缶やボトルに詰める時に加熱殺菌する必要がありますが、この時コーヒーの香り成分の一部が分解されてしまうため、熱に強い食品香料で補っています1, 5)
もし食品香料を使うことができなかったら、炭酸飲料の味を物足りなく感じてしまったり、自動販売機などで手軽に缶コーヒーを楽しむことができなくなったりするかもしれません。食品香料は、私たちの豊かな生活を支えてくれているものの一つといえます。

●“おいしさ”に欠かせない香りを、私たちはどのように感じる?
私たちは、食べ物や飲料の香りを2つのルートで感じています6)。一つは、空気と一緒に吸って鼻先から入るルート、もう一つは口の中で咀嚼するうちに喉を超えて鼻の奥に入り込むルートです。鼻の奥にある匂いセンサーが、香りの正体である匂い分子を認識すると、私たちはそれを「香り」として感じることができます。また、私たちが微妙な香りの違いを嗅ぎ分けられるのは、この匂いセンサーを数百種類も持っているからです。
近年、嗅覚研究により、香りを感じるメカニズムが紐解かれ、食べ物や飲料のおいしさに香りが大きく貢献していることがわかってきました。今後、香りをターゲットにしたおいしさへのアプローチが、ますます進んでいくことが期待されます。
味だけでなく、香りも意識してみると、いつものコーヒーブレークがより豊かな時間になるかもしれませんね。

参考文献
1) フレーバー(日本香料工業会)
http://www.jffma-jp.org/flavor/
2) 香料講座(日本香料工業会)
http://www.jffma-jp.org/course/
3) 厚生労働省の取り組み 7食品添加物の安全確保(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/pamph01_10.pdf
4) よくわかる食品添加物(日本食品添加物協会)
http://www.jafaa.or.jp/tenkabutsu01/tenka4.html
5) 阿部和也, 食品と容器, 55(4):256-258, 2014
6) 東原和成, 化学と生物, 45(8):564-569, 2007