健康や栄養面を考えて食品を選ぶ際は、その食品に含まれる栄養成分の種類や含有量、各栄養成分の機能についての表示を確認することが大切です。今回は栄養成分表示が義務付けられている「脂質」と、脂質のなかでも摂取量を意識したい「飽和脂肪酸」「コレステロール」の働きとともに、栄養成分表示の絶対表示および相対表示の表示方法について解説します。


■脂質、脂肪酸、コレステロールとは?
エネルギー源として欠かせない「脂質」の働きと種類
脂質は、炭水化物、たんぱく質と共に「三大栄養素」と呼ばれ、体に欠かせない栄養素です。
摂り過ぎると肥満や生活習慣病などにつながることからよくないイメージがあるかもしれませんが、炭水化物とたんぱく質が1g当たり4kcalであるのに対し、脂質は9kcalと高く、効率の良いエネルギー源です1)
脂質には、中性脂肪、リン脂質、糖脂質、ステロール類などがありますが、食事から摂取する脂質のほとんどは中性脂肪です2)。中性脂肪は、日頃はエネルギーの貯蔵庫として脂肪組織に蓄えられ、糖質のみではエネルギーが足りないときなどにエネルギー源として使われます3)。一方で、体内に脂質が増え過ぎると、肥満を招いたり、動脈硬化などの病気を引き起こしたりします2)

脂肪酸には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」がある
中性脂肪を構成する成分である脂肪酸は、その構造によって「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類されます。
飽和脂肪酸はバターや動物の脂などに含まれますが、体内でも合成されます。飽和脂肪酸は総コレステロール値を高くするといわれ2)、食事摂取基準ではエネルギー比率7%が目標量となっています4)
一方、不飽和脂肪酸は魚の油や植物油に含まれています5)。不飽和脂肪酸には、青魚に含まれるEPAやDHA、亜麻仁油などα-リノレン酸のn-3(オメガ3)系脂肪酸、リノール酸を含むn-6(オメガ6)系脂肪酸等があります。これらは、体内で合成できない、あるいは必要量を合成することが難しく、食事から摂取しなければならない必須栄養素のため、必須脂肪酸と呼ばれます1),5)
n-3系脂肪酸は中性脂肪を下げ6)、n-6系脂肪酸はLDLコレステロール値を下げるといわれ2)、1日当たりの摂取量の目安を、n-3系脂肪酸は18~29歳の男性で2.0g、女性は1.6g、n-6系脂肪酸は18~29歳の男性で11g、女性は8gとしています4)

コレステロールの働きと体への影響
脂質の一種であるコレステロールは、細胞膜の材料となったりステロイドホルモンの材料になったりするなど、体に欠かせない役割を担っています7)
HDLコレステロールは善玉コレステロール、LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれることがありますが、コレステロール自体に善玉と悪玉があるわけではありません。LDLと呼ばれるリポ蛋白と複合体を作って肝臓から全身に運ばれるコレステロールがLDLコレステロール、全身の余分なコレステロールがHDLと複合体を作って肝臓に戻っていくのがHDLコレステロールです。全身に運ばれるLDLコレステロールも体に必要なものですが、必要以上に多いと血液中にコレステロールが増え、動脈硬化などを引き起こすと考えられています8)

■脂質、飽和脂肪酸、コレステロールの表示法
脂質は表示が義務づけられている
厚生労働省は、生活習慣病の予防を目標として、摂取する総エネルギーに対する脂質のエネルギーの割合を20~30%に設定しています(食事摂取基準)。それに加えて、飽和脂肪酸の目標量、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸などの目安量も設定しています4)。脂質は、適切な量を摂取するだけではなく、飽和脂肪酸やコレステロールを摂り過ぎず、n-3系脂肪酸やn-6系脂肪酸の摂取を心がけるなど、その内訳や質に配慮することが大切です。
栄養表示基準では、脂質はたんぱく質や炭水化物と同様に含有量の表示が義務づけられています9),10)。飽和脂肪酸とコレステロールは、表示が義務づけられているわけではありませんが、表示栄養成分量の記載を必要とする成分として扱われています。飽和脂肪酸やコレステロールは、含まれる量が少ないときにその旨を表示できる(強調表示)ためで、適切な量を摂取するための表示といえます。*1

*1: 2015年に施行され、2020年までが経過措置期間である「食品表示法」では、飽和脂肪酸は推奨表示、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸が任意表示となり、表示する場合は脂質の下に、一字下げ、-(ハイフン)から始める表示となります11)
 

■「ゼロ」「低」「○%カット」と表示するときの基準
含まない旨の表示「ゼロ」「無」「ノン」の表示に関する基準値(絶対表示)
「脂質ゼロ」「ノンファット」などと表示され、脂質を含まないことを謳っている商品がありますが、食品表示基準では、「ゼロ」や「無」「ノン」と表示する基準として、脂質は食品100g当たり0.5g未満、飽和脂肪酸は100g当たり0.1g未満、コレステロールは100g当たり5mg未満と定められています9)。コレステロールについては、それに加え、飽和脂肪酸含有量と飽和脂肪酸のエネルギー量の基準値も設けられています(表)9)

低い旨の表示「低」「ひかえめ」「ライト」の表示に関する基準値
また、脂質や飽和脂肪酸、コレステロールが低い場合の「低」「ひかえめ」「ライト」という表示にも基準があります。脂質は食品100g当たり3g(飲料の場合は100mL当たり1.5g)以下、飽和脂肪酸は1.5g(飲料の場合は100mL当たり0.75g)以下でかつ飽和脂肪酸由来のエネルギーが全エネルギーの10%以下であること、コレステロールは20mg(飲料の場合は100mL当たり10mg)以下でかつ飽和脂肪酸の含有量が1.5g(飲料の場合は100mL当たり0.75g)以下、かつ飽和脂肪酸のエネルギー量が10%以下という基準が定められています(表)9)*2

*2: 「食品表示法」では、脂質は食品100g当たり3g(飲料の場合は100mL当たり1.5g)未満、飽和脂肪酸は1.5g(飲料の場合は100mL当たり0.75g)未満でかつ飽和脂肪酸由来のエネルギーが全エネルギーの10%以下であること、コレステロールは20mg(飲料の場合は100mL当たり10mg)未満でかつ飽和脂肪酸の含有量が1.5g(飲料の場合は100mL当たり0.75g)以下、かつ飽和脂肪酸のエネルギー量が10%以下という基準に変わります11)
 

低減された旨の強調表示(相対表示)にも基準がある
他の商品より脂質の含有量を低減させた商品の場合は、脂質、飽和脂肪酸、コレステロールの低減量が、基準値以上である必要があります(表)9)。脂質の場合は、低減量が食品100g当たり3g以上あり、例えば比較対象商品より低減量が50%を上回っていれば、「50%オフ」「50%カット」と表示できます(図)12)*3

*3: 「食品表示法」では、低減量が基準値以上であることに加え、比較対象商品との相対差が25%以上であることが必要となります11)
 

表 含まない旨、低い旨、低減された旨の表示の基準

 

図 低減された旨(相対表示)の例

■まとめ
脂質は体に欠かせない栄養素ですが、飽和脂肪酸やコレステロールの摂り過ぎ、必須脂肪酸であるn-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸の摂取を心がけるなど、摂取量とその内容に注意が必要です。栄養成分表示を確認することにより、脂質摂取量を把握できるほか、商品を比較して脂質が含まれない、あるいは少ない商品を選ぶことができます。

参考文献
1) 五十嵐脩, 最新栄養学 新訂版, 実教出版, 2010, P23

2) 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定委員会」報告書, 脂質(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042631.pdf

3) 山本順一郎, 運動生理学[第2版], 化学同人, 2010, P28

4) 日本人の食事摂取基準(2015年度版)の概要(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

5) 渡邊昌 監修, 運動・からだ図解 栄養学の基本, マイナビ出版, 2016, P98-101

6) 中屋豊, よくわかる栄養学の基本としくみ, 秀和システム, 2009, P82

7) コレステロール摂取に関するQ&A(一般社団法人日本動脈硬化学会)
http://www.j-athero.org/general/colqa.html

8) 石川俊次, 脂質異常の最新治療, 主婦の友社, 2012, P26

9) 栄養表示制度とは(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin829.pdf

10) おしえてラベルくん 健康増進法に基づく食品表示ガイド(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin881.pdf

11) 栄養成分表示ハンドブック(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hyouji/kyouzai/files/eiyouseibun_handbook.pdf

12) 食品に栄養表示するときは・・・―栄養表示基準・誇大表示について―(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/hoei/hoei_016/files/panfu.pdf