健康や栄養面を考えて食品を選ぶ際は、その食品に含まれる栄養成分の種類や含有量、各栄養成分の機能についての表示を確認することが大切です。今回は「炭水化物」「食物繊維」「糖質」「糖類」の働きと摂取基準値、強調表示・相対表示の基準について解説します。


■炭水化物、食物繊維、糖質、糖類の関係
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に分けられる
たんぱく質、脂質と並ぶ「三大栄養素」の1つである炭水化物は、ご飯やパン、麺などの穀類や砂糖、果物、菓子などに多く含まれる栄養素です1-2)。近年、主食などを制限する糖質制限ダイエットが話題ですが、炭水化物と糖質は全く同じものではなく、炭水化物は、体内でエネルギー源となる糖質と、体内の消化酵素では消化できない食物繊維に分けられます2)

「糖質」は単糖類、二糖類、多糖類に分類される
糖質は化学構造の違いにより、単糖類、2つの単糖が結合した二糖類、単糖が多数結合した多糖類に分かれます3)。単糖類には、穀類や果物に含まれるブドウ糖、果物に含まれる果糖などが、二糖類には砂糖の主成分であるショ糖、麦芽に含まれる麦芽糖などがあります。多糖類には穀類や芋類に含まれるでんぷん、でんぷんから作られるグリコーゲン、貝類などに含まれるデキストリンなどがあります4)。なお、糖類は単糖類と二糖類の総称であり、糖質に水素が添加された糖アルコール(キシリトールなど)や多糖類は含まれません5-6)

「糖質」の働き
糖質は、体内で消化・吸収され、エネルギー源となります5)。脂質に比べて分解・吸収が速く、即効性のあるエネルギー源とされています3)。糖質が不足すると、体は肝臓にためていたグリコーゲンを糖質に変える、体内のたんぱく質や体脂肪を分解するといった方法でエネルギーを補います4)。反対に糖質を摂り過ぎると、体脂肪や中性脂肪として蓄えられるため、肥満や生活習慣病の原因となります2), 4)

「食物繊維」の働き
食物繊維は、体内の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総称で、口から摂取した後は、消化されずにそのまま大腸まで運ばれます。食物繊維は、りんごやわかめ、ごぼうなどに含まれる水溶性食物繊維と、穀類や豆類などに含まれる不溶性食物繊維に分類されます。水溶性食物繊維には血糖値の上昇抑制や高血圧の予防、脂質代謝の改善作用があり、不溶性食物繊維には便の量を増やして便秘を予防・解消する、大腸がんのリスクを低下させるなどの作用があります。また、どちらの食物繊維にも腸内の有害物質を排出し、善玉菌を増やすといった腸内環境を整える働きがあり、積極的に摂取したい栄養素です3-4)

■炭水化物の摂取基準の考え方
エネルギー必要量はどのように決められるのか?
人が1日に必要なエネルギー量は、18歳以上の成人の場合、推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベルで計算します7)。基礎代謝量は、起きている状態での必要最小限のエネルギーです。必要な身体活動レベルが「ふつう」レベルなら、18歳から49歳の男性は2,650kcal、同じく女性は1,950~2,000kcal、身体活動レベルが低ければエネルギー必要量は低く、身体活動レベルが高い場合や妊婦、授乳婦などではエネルギー必要量は高くなります8)

炭水化物の摂取量は、性別・年齢に関係なくエネルギーの50~65%が目標量
厚生労働省が定める食事摂取基準では、1日に摂取する総エネルギー量のうち、アルコールを含めた炭水化物が占める割合の目標量は、年齢・性別にかかわらず50~65%となっています。18歳から49歳の男性であれば、1,325~1,722.5kcalを炭水化物から摂る計算です。

食物繊維の食事摂取基準は、18~69歳の男性で1日当たり20g以上、同じく女性で18g以上が目標量となっています8)
体に必要な炭水化物は通常十分な量を摂取できていますが、注意を払わなければならないのはその「質」です。甘いものの摂り過ぎや食物繊維の不足は生活習慣病のリスクにつながります。どのくらい炭水化物を摂っているかだけでなく、どのような炭水化物を摂取するかも重要です9)

■飲料に含まれる炭水化物とは?~炭水化物、食物繊維、糖質、糖類の表示法
炭水化物は必ず表示、食物繊維、糖質、糖類は義務づけなし
健康増進法に基づく栄養表示制度では、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムについて、含有量を記載することが義務づけられています。一方、食物繊維や糖質、糖類には表示義務はありませんが、炭水化物の代わりに、糖質および食物繊維の含有量が表示されている場合もあります10-11)*1

*1: 2015年に施行された食品表示法では、食物繊維は、義務ではありませんが積極的に表示を推進される推奨表示、糖質と糖類は任意表示となっています12)
 

砂糖入り飲料でも糖類の表示がない場合はどこを見る?
ダイエット中や血糖値が高い人などは、清涼飲料水を選ぶときに糖分がどれくらい含まれているのか気になるのではないでしょうか。しかし、上述のとおり、糖質や糖類の含有量が記載されているとは限りません10), 12)。その場合は、食物繊維を多く含まない飲料であれば、炭水化物の含有量表示を参考にするとよいでしょう。炭水化物というとご飯やパンのイメージが強く、飲料に含まれていることに違和感があるかもしれません。しかし、炭水化物から食物繊維を除いたものが糖質ですから、炭水化物の表示から糖分のおおよその量を把握することが可能です。

■食物繊維入り、糖類ゼロ、糖類オフ飲料とは何か
「食物繊維たっぷり」「食物繊維入り」と表示できる基準値
食物繊維を補給できる食品や飲料には、含有量が高い、または含む旨を表示できます10), 12)。栄養表示制度では、「食物繊維たっぷり」など含有量が高い旨を表示できるのは100g当たり6g(飲料では100ml当たり3g)または100kcal当たり3g以上含むことが条件となっています。「食物繊維入り」など含む旨を表示できる基準値は、100g当たり3g(100ml当たり1.5g)または100kcal当たり1.5g以上です(表1)10) 。

表1 強調表示の基準(高い旨、含む旨、強化された旨の表示)

「糖類ゼロ」の表示に関する基準値
糖類についても同様の基準値があります。食物繊維とは反対に、糖類を含まない、低い、低減された旨の表示に関する基準です。飲料に「糖類ゼロ」「ノンシュガー」「無糖」と表示できるのは、100g当たり0.5g(100ml当たり0.5g)未満であることが必要です(表2)6), 10)

ただし、「糖類ゼロ」と表示されていても、「糖質ゼロ」や「甘くない」を意味するわけではありません。含まれる糖類が0.5g未満でも、糖類に分類されない糖アルコールの人工甘味料を含む場合があるためです6)

糖類が低い旨、低減された旨の表示の基準値
「低糖」「糖分ひかえめ」など糖類が低い旨の相対表示は、含有量が100g当たり5g(100ml当たり2.5g)に満たないものに限られます(表2)。「糖分○%オフ」などと表示できる飲料は、比較するほかの食品より100ml当たり2.5g以上少ないことが必要です6), 10)*2

紛らわしい表示に、「甘さひかえめ」があります。これは、栄養表示を目的としたものではなく味覚に関する表示であるため、栄養表示基準は適用されません6)

*2: 食品表示法では、低減量が基準値以上であることに加え、25%以上の相対差が必要となります12)
 

表2 強調表示・相対表示の基準(含まない旨、低い旨、低減された旨の表示)

「砂糖不使用」と「ノンシュガー」の違いとは?
「砂糖不使用」という表示は、「ノンシュガー」「無糖」とは異なり、糖類が含まれていないことを意味するわけではありません。「砂糖不使用」は、加工の段階で砂糖を使っていないことをあらわすもので、食品本来の成分由来のショ糖が含まれている場合もあります。この場合は、栄養成分表示の砂糖(ショ糖)の欄を確認すれば含有量を知ることができます6), 11)

■まとめ
炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたもので、生活習慣病予防には糖質の摂り過ぎや食物繊維不足を防ぐことが大切であり、摂取量だけでなく、摂取する炭水化物の質に注意する必要があります。栄養成分表示でどれくらいの糖分や食物繊維を含むかを把握することで、糖類が低い商品、含まない商品や食物繊維を多く含む商品など、目的に応じた商品を選択することが可能になります。

参考文献
1) 3大栄養素(日本医師会)
http://www.med.or.jp/forest/health/eat/02.html

2) e-ヘルスネット, 炭水化物/糖質(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html

3) 足立香代子, 栄養学の基本がまるごとわかる事典, 西東社, 2015, p68-73

4) 中村丁次, 見てわかる! 栄養の図解事典, PHP研究所, 2008, p20-23, 82-83, 94

5) 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定委員会」報告書, 炭水化物(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042632.pdf

6) 早わかり栄養表示基準 解説とQ&A, 中央法規出版, 2011, p49-51

7) 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定委員会」報告書, エネルギー(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000083871.pdf

8) 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

9) 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定委員会」報告書, エネルギー産生栄養素バランス(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000083872.pdf

10) 栄養表示制度とは(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin829.pdf

11) 食品衛生の窓(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/hoei/hoei_002/hoei_002.html

12) 栄養成分表示ハンドブック(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hyouji/kyouzai/files/eiyouseibun_handbook.pdf