暑い時期や熱のこもりやすい場所での運動、マラソンなどの長時間の運動で、予想以上に体がバテるという経験をしたことはありませんか? このような運動をはじめる前に、体を上手に冷やすと、運動中の体のコンディションが整い、パフォーマンスの維持に役立つことが分かってきました。


アイススラリーで体を内側から冷やす
アイススラリーとは、とても小さな氷の粒が液体に混ざった、柔らかいシャーベット状の飲料です。これを摂取すると、体の深部の温度が下がることが知られています。アイススラリーによる冷却効果のポイントは、「氷の粒」と「液体」の両方が存在することです。氷の粒は、液体に変わるときに、体内の熱をたくさん吸収します1)。一方、液体には、氷の粒が体の組織と接する面積を広げる役割があります2)。例えば、缶ジュースを早く冷やしたいときは、大きな氷の塊だけ、もしくは水だけではなく、経験的に、小さな氷を加えた水の中で冷やすという方も多いかもしれません。体温を効果的に下げたいときは、アイススラリーを活用するのも方法の一つです。

なぜ運動中の体温コントロールが必要なのか
私たちの体は、いつも同じくらいの体温に保たれています。それは、体でつくられる熱と、血液の循環によって皮膚から体の外へ逃げていく熱が、絶妙なバランスをとっているからです(図1)。運動をすると、体でつくられる熱の量が増えて体温が上昇しますが、皮膚血流を増やすなどの体温調節作用によって、ある程度の体温上昇におさえられています。ところが、このとき体の中では、皮膚血流と筋血流で血液の奪い合いが起こっています。血液は、皮膚にとっては熱を逃がすために必要ですが、筋肉にとっても運動を続けるために必要だからです。また、血液が皮膚へ集中しすぎると心臓への戻りが減ってしまうので、そうならないように、運動中の体では血液配分が適切に調節されています3)。しかし、暑い場所での運動や激しい運動では、より体温が上昇したり、血液配分の調節が上手にできなくなったりして、結果的に、パフォーマンスの低下や、循環器系・神経系の機能不全を引き起こすことがあります2,3)。そのような状態を回避するためにも、運動中は体温が上がりすぎないようにすることが重要です。

図1 運動の強度と体温調節


 

体を冷やすだけじゃない!? アイススラリーの効果
これまでの研究から、アイススラリーを運動前にとると、体の深部の温度が下がり、運動中の体温コントロールに役立つことが分かっています。特に、持久性の運動では、パフォーマンスを維持する効果が冷水よりも高いと報告されています。また、アイススラリーをとることで、脳の温度が下がり、神経系への作用を経てパフォーマンスの改善につながる可能性についても研究が進んでいます1)。アイススラリーの効果やそのメカニズムの詳細は、今後さらに解き明かされていくことでしょう。

運動中に体温が上がりすぎないように、運動前から水分補給を工夫することで、よりよいコンディションで運動を楽しめるだけでなく、パフォーマンスの改善も期待できるかもしれません。

参考文献
1) 鬼塚純玲ほか, トレーニング科学. 2015, 26(3), 139-145.
2) Tan PM et al, Scand J Med Sci Sports. 2015, 25 Suppl 1, 39-51
3) スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック Part4 解説(日本体育協会)
http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guidebook_part4.pdf

監修:和洋女子大学 家政学群 健康栄養学類 助教 永澤 貴昭 先生

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