人間の体の約6割を占める水は、栄養素の輸送や老廃物の排出、体温の維持・調節など、体内のさまざまな機能に関わっており、生命の維持には欠かせません。体内の水分量は一定に保たれていますが、水分が失われ体液が不足すると、口渇や嘔吐、倦怠感などの症状があらわれることがあります。体の働きを正常に保つためにも、水分を適切に摂取することが大切です。※成人男性の場合

<Contents>

1.「水」とは水分子が集まったもの

2.人間の体の約6割を占める水

3.水は栄養素や老廃物を運び、体温調節などに関わる
(1)電解質を溶解する
(2)体温の維持・調節
(3)溶媒となる
(4)血液の流れの円滑化

4.体に入る水と体から出る水

5.体液が不足した状態の「脱水」と、細胞外液が異常に増えた状態の「浮腫」

6.体液に含まれる電解質が細胞の正常な機能を支える


1.「水」とは水分子が集まったもの

「水」は、水素原子(H)2個と酸素原子(O)1個が結びついてできた水分子(H2O)が集まったものです(図1)1)。水分子と水分子はプラスとマイナスの電荷で結びついていますが(水素結合)、その結合力は弱く、集まった水分子は離れたりつながったりと、流動的に動いています。


 図1 水分子の構造1)

2.人間の体の約6割を占める水
水は体の構成成分に占める比率が最も高く2)、成人男性の場合には体重の約60%を占めています1)。そのほかの構成成分は、たんぱく質が約20%、脂質が約15%を占め、ミネラルが約5%、糖質が約1%となっています。成人女性の場合は体脂肪が多いので、水の占める比率は約55%と成人男性よりも少なくなります。また、胎児期では80%以上、新生児・乳児期では70~75%、高齢者では50%と、水の占める比率は年齢によっても大きく変化します1,2)
体内の水のうち、約3分の2が細胞内液として、残りの約3分の1は血液や組織間液などの細胞外液として存在しています(図2)2)


 図2 体内の水分量と分布

3.水は栄養素や老廃物を運び、体温調節などに関わる
体内の水は、(1)電解質を溶解する、(2)体温の維持・調節、(3)溶媒となる、(4)血液の流れの円滑化、という4つの重要な役割を担っています1)

(1)電解質を溶解する
体液のうち、細胞外液には主にナトリウムイオン(Na+)や塩化物イオン(Cl-)など、細胞内液には主にカリウムイオン(K+)などの「電解質」が溶け込んでいます1)。電解質とは、水などの溶媒に溶けたときにプラスの電荷を持つ原子(陽イオン)とマイナスの電荷を持つ原子(陰イオン)に分かれ、溶けた液体に電気を通させる物質のことです。例えば、食塩が水に溶けた場合には陽イオンのナトリウムイオン(Na+)と陰イオンの塩化物イオン(Cl-)に分かれます。
水は誘電率(分子が陽イオンと陰イオンに分離する、分極の度合い)が高く、電解質の溶解性が高いので体内の電解質濃度や浸透圧を調節するのに都合のよい物質だといえます。また、誘電率が高くなるほど、ほかの分子の陽イオンや陰イオンと反応しやすくなります。

(2)体温の維持・調節

水は比熱が大きく、温まりにくくて冷めにくいという性質を持っています1)。人間は体に占める水の割合が大きいので、周囲の温度変化による影響を受けにくく、体温の維持に役立っています。
また、水は蒸発熱が大きく、液体から気体に変わるときに必要な熱量も大きいので、汗が蒸発するときに効率的に熱が奪われ、体温をうまく調節することができるのです。

(3)溶媒となる

水はさまざまな物質を溶かすのにすぐれた溶媒です1)。体内では、細胞内液や細胞外液を構成し、生化学反応が起こりやすいように環境を整えています3)。また、栄養素の輸送や老廃物の排出のための溶媒として機能しています。

(4)血液の流れの円滑化

水は溶液の流動性に関わっている粘性4)が低く、体内の血液の流れを円滑にしています1)

4.体に入る水と体から出る水
私たちは毎日水分を摂取し、尿や汗などとして体外へ排出しています1)。健康な人の場合、体外に排出された分の水を補給することで、体内の水分量が一定に保たれるよう調節されています。
1日に必要な水分量は、年齢や性別、身体活動レベルなどにより個人差もありますが、活動量が少ない成人男性の場合で約2,500mlです(図3)5,6)。このうち、約1,200mlは飲み物から、約1,000mlは食べ物からとり入れています5)。食べ物では、汁物など水分を多く含むものが主な水分補給源と思うかもしれませんが、ごはんやお肉、野菜などの食品にも水分が含まれています(図4)。また、残りの約300mlは、体内で栄養素を代謝する際に産生される代謝水です4)
一方、排出される水分は、尿や便として排出される量が最も多く、1日あたり約1,600mlです5)。そのほかに、呼吸や皮膚からの蒸発で約900mlの水分が排出されています。
通常は摂取する水分量と排出する水分量は一定に保たれていますが、ひどい嘔吐や下痢など、非常に多くの水分を失うこともあります2)。このような場合に適切な水分補給が行われなければ、体内の水分量のバランスが崩れ、脱水が起こることがあります。


図3 1日に必要な水分量


図4 食品・飲料に含まれる水分量

5.体液が不足した状態の「脱水」と、細胞外液が異常に増えた状態の「浮腫」
体内の水分と電解質が失われ、体液が不足した状態を「脱水」といいます1)。脱水は、水と電解質の失われ方の違いによって、3つに分類されます(図5)
水分摂取の制限や大量の発汗で、体内の水分が大幅に減少した場合に起こる脱水を「高張性脱水(水欠乏性脱水)」といい、口の渇きや吐き気、嘔吐が生じることがあります2)。一方、下痢や嘔吐、発汗などで塩分(電解質)を失った場合に起こる脱水を「低張性脱水(Na欠乏性脱水)」といいます1)。体内の水分と電解質の両方を失った際に、水分だけを補給したり、電解質を含まない真水などを大量に飲んだ場合などに起こり、倦怠感や立ちくらみが生じることがあります。2)また、水分と電解質の両方を失うことで起こる脱水のことを、「等張性脱水(混合性脱水)」といいます1)
体内で水分が過剰になっている状態が続くと、細胞外液の水分量が異常に増え、「浮腫」が生じます2)


図5 脱水の分類1)

脱水症状の兆候について詳しくはこちら>
「脱水症状の予防には、こまめな水分補給が大切。」
https://www.cocacola.co.jp/article/hydration-tool_02
脱水症と適切な水分補給について詳しくはこちら>
「脱水症(熱中症)― 正しいメカニズムの理解と適切な水分補給」
https://www.cocacola.co.jp/article/special-considerations_05

6.体液に含まれる電解質が細胞の正常な機能を支える
体内の電解質は、体液の浸透圧の維持や神経伝達、筋肉の収縮と弛緩など、生命維持に不可欠な、重要な役割を担っています2)
電解質は、体を弱アルカリに保つ「酸塩基平衡」にも関わっています。体内では、栄養素の代謝や筋肉運動などにより、体液中に水素イオン(H+)を放出する酸がつくられますが、細胞が正常に機能するためには、体液の濃度(pH)を常に7.35~7.45の弱アルカリ性に維持する必要があります1)。電解質はこの酸を塩基で中和し余分な酸を体外へと排出するなどして、体液中のpHを一定に保ち、細胞の正常な機能を支えています。

水は体のさまざまな役割を担っており、生命の維持に欠かせない存在です。水分と電解質を適切に補給することは、のどの渇きを潤すだけでなく、体の働きを維持し、健康に過ごすために重要なのです。

体内での水分の役割について詳しくはこちら>
「あなたの毎日に必要な水分補給。」
https://www.cocacola.co.jp/article/hydration-tool_01
適切な水分補給について詳しくはこちら>
「水分補給の基礎知識。水分補給の専門家であるAnn Grandjean先生へのインタビュー」
https://www.cocacola.co.jp/article/hydration-tool_03
水分補給が健康維持に欠かせない科学的事実について詳しくはこちら>
「第一線の研究者たちが声明。水分補給が健康維持に欠かせない科学的事実。」
https://www.cocacola.co.jp/article/hydration-tool_05

参考文献
1) 川島由起子, カラー図解 栄養学の基本がわかる事典, 西東社, 2013
2) 木戸康博ほか編, 基礎栄養学 第3版(栄養科学シリーズNEXT), 講談社サイエンティフィク, 2015
3) 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会 報告書(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042639.pdf
4) 灘本知憲, 基礎栄養学, 化学同人, 2010
5) 熱中症環境保健マニュアル2014(環境省)
http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/full.pdf
6) Sawka MN, et al. Nutr Rev. 2005; 63(6 Pt 2): S30-39.

監修:和洋女子大学 家政学群健康栄養学類 准教授 多賀 昌樹 先生