スポーツ飲料は、運動で汗をかいたときなどに、手軽に水分補給ができる飲料です。その基本的な成分は、水、電解質、糖ですが、最近ではさまざまな成分が加えられているものもあります。目的やシーンに応じてスポーツ飲料を選ぶことで、より適切に水分補給をすることができます。

<Contents>

1.スポーツ飲料とは

2.基本的な成分とそれぞれの役割
(1) 水分
(2) 電解質
(3) 糖

3.付加的な成分
(1) クエン酸
(2) ビタミン
(3) アミノ酸

4.スポーツ飲料と浸透圧

5.スポーツ飲料の摂取が望ましいとき
(1) 運動中や運動後
(2) 気温や湿度の高い場所での作業時

 

1.スポーツ飲料とは
スポーツ飲料は、運動時や運動前後に体の機能を保ったり、運動パフォーマンスを向上させたりすることを目的に摂取する飲料の総称です1)。市販されているスポーツ飲料の中には、運動時の水分補給に加え、クエン酸やアミノ酸を摂取できるものなどもあり、その種類は多岐にわたります。最近では、運動時に限らず、日常的な水分補給に利用できる飲料としてのイメージも広がってきました。

 

2.基本的な成分とそれぞれの役割
スポーツ飲料の基本的な成分は、水、電解質、糖の3つです。水と一緒に、電解質と糖を摂ることによって、発汗で失った水分と電解質を効率よく補うことができます1,2)

(1) 水分
私たちの体は、成人の場合、体重の約60%が水分で構成されています3)。運動などで体重の約2%の水分(50kgの人では約1L)を失うと、運動能力や運動パフォーマンスが低下してしまいます3,4)。また、体重の2〜5%の水分を失うと、尿の量が減る、体温や心拍数が上がるといった自覚症状が現れ始め、体重の10%を超えて水分を失うと死に至る危険性が高まります5)。激しい運動では1時間に2Lもの汗をかくことがあり、症状を自覚したときには脱水が進んでいることもあるため、自覚症状が現れる前の適切な水分補給が重要です4,5)。スポーツ飲料は、その約95%が水分であり、運動時の水分補給に大いに役立ちます6)

水分について詳しくはこちら>
「そもそも体内の水分とは何か?」
https://www.cocacola.co.jp/article/special-considerations_08

(2) 電解質
電解質は、水などの溶媒の中でイオンになる物質です3)。私たちの体の中では、体液の量やpH、浸透圧を調整したり、神経伝達や筋肉の働きを正常に保ったりするのに欠かせません。スポーツ飲料に含まれる電解質には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあり6)、中でも体の水分量と深い関わりをもつのが “ナトリウム” です。
ナトリウムは、主に食塩(塩化ナトリウム)の形で私たちの体に取り込まれ、その多くは細胞の外側の体液“細胞外液”に含まれます7)。汗をかくなどして、この細胞外液が体の外へ出るときに、水分だけでなくナトリウムも一緒に出てしまうことがあります3)。水分しか補給せず、体に必要なナトリウムが足りなくなると、体調に影響することがあるので、失ったナトリウムを適切に補給することが重要です。

ナトリウムなどのミネラルについて詳しくはこちら>
「ミネラルの強調表示」
https://www.cocacola.co.jp/article/right-viewpoint06

(3) 糖
スポーツ飲料に含まれる糖は、砂糖、果糖、ブドウ糖などです1)。これらは、体内でグルコースという分子に代謝され、エネルギー源として利用されます8)
また、グルコースが小腸の細胞内へ運ばれる際、ナトリウムグルコース共輸送体(SGLT)というタンパク質が働きます3)。このときグルコースは、水、ナトリウムと一緒に吸収されるため、糖を摂ることで水分の体への吸収を早めることができます。これも、スポーツ飲料での糖の重要な役割です。その他に、糖類はスポーツ飲料を甘く飲みやすくする役目も担っています1)

 

3.付加的な成分
市販されている多くのスポーツ飲料には、先述した基本的な成分に加え、クエン酸、ビタミン、アミノ酸などの成分も加えられています1)

(1) クエン酸
クエン酸は、柑橘類に多く含まれる有機化合物の一種で、酸味の成分です9)。スポーツ飲料に爽快感を与え、飲みやすくしてくれます1)。私たちの体の中では、エネルギーを作り出すための反応経路(クエン酸回路)で中心的な役割を担っています9)。また、運動直後にブドウ糖と一緒に摂ると、筋肉と肝臓のグリコーゲン再補充が促され、運動の持続や疲労回復に役立つといわれています1, 10)

(2) ビタミン
ビタミンは、糖質、脂質、タンパク質が体内で効率よく代謝されるために欠かせない栄養素です。脂溶性と水溶性を合わせて13種類ありますが11)、多くのスポーツ飲料に入っているのは水溶性のビタミンCです1)。運動時の作用や運動能力への影響ははっきりとわかっていませんが、コラーゲンの合成やストレスへの耐性、抗酸化性があることが知られています。ビタミンCなどの水溶性のビタミンは、ハードな運動での発汗によって失われてしまうため、スポーツ飲料などで補わなければなりません12)。スポーツ飲料の種類によっては、有酸素運動によって消費されるビタミンB群や、抗酸化作用をもつビタミンEやβ−カロテンを含むものもあります。

ビタミンについて詳しくはこちら>
「ビタミンの表示」
https://www.cocacola.co.jp/article/right-viewpoint07


(3) アミノ酸
アミノ酸は、タンパク質を構成する有機化合物です13)。体内では合成できない必須アミノ酸と、脂質や糖質から合成可能な非必須アミノ酸を合わせて20種類あり、一つでも欠けるとタンパク質を作り出すことができません。スポーツ飲料には、筋肉組織の主な成分である分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)や、脂肪の燃焼に関わるアルギニンやカルニチンなどを含むものがあります1)

アミノ酸について詳しくはこちら>
「たんぱく質・アミノ酸とその表示方法」
https://www.cocacola.co.jp/article/right-viewpoint03

 

4.スポーツ飲料と浸透圧
浸透圧とは、異なる濃度の液体を半透膜(小さな分子や水は通すが大きな分子は通さない膜14))で隔てたとき、2種類の液体が同じ濃度になろうとする力です3)。私たちの体の中にも細胞膜や血管壁といった半透膜の性質をもつ生体膜があり、体液の浸透圧を一定に保っています。
スポーツ飲料は、安静時の体液の浸透圧と比べて、その浸透圧が同等あるいは低いかにより、“アイソトニック(等浸透圧)飲料”と“ハイポトニック(低浸透圧)飲料”に分けられます(図1)15,16)。プロスポーツのように非常にハードな運動では運動の前後でアイソトニックとハイポトニックの使い分けが有効となりますが、日常のスポーツではそれほど気にする必要はありません17)
また、糖分濃度が高いスポーツ飲料では、浸透圧も高くなり、アイソトニック飲料としつつも厳密には体液よりも高い浸透圧である場合もあります15)


図1 浸透圧の異なるスポーツ飲料を摂取したときの水分子の流れ
ハイポトニック飲料では、水分子が、浸透圧の低い腸管門脈外から腸管門脈内へ流れ、すばやく吸収される14,16,18)

 

5.スポーツ飲料の摂取が望ましいとき
スポーツ飲料は、運動中や運動後に限らず、気温や湿度の高い場所で作業する際の水分補給にも適しています19)

(1) 運動中や運動後
運動時は、体重の2%以上の水分が失われないことと、摂取する水分量が失われた水分量(発汗量に相当)を超えないことに注意しながら、水分補給をする必要があります4)。具体的にどのくらい飲むとよいかは、運動の種類や気候、体の大きさなど、状況や個人によって異なりますが、喉の渇きに応じて自由に飲むこと(自由飲水)で適量の水分補給ができると考えられています。ただし、自由飲水では水分補給がやや不十分となる傾向もあるため、運動時は体重を測ることで発汗量を管理し、水分補給量の目安にするのも方法の一つです。

スポーツ時の適切な水分補給について詳しくはこちら>
「脱水症(熱中症)― 正しいメカニズムの理解と適切な水分補給」
https://www.cocacola.co.jp/article/special-considerations_05

(2) 気温や湿度の高い場所での作業時
気温や湿度の高い場所での作業などでたくさん汗をかいたときに、水分のみを補給すると、発汗前の体液量に戻る前に体液の濃度が正常化して、飲水欲求が止まることがあります5)。発汗で失われた体液量が十分に取り戻せていないにも関わらず、喉の渇きがなくなったことでそのまま作業を続けてしまい、気づかないうちに脱水が進んでしまうということもありえます。このような事態を防ぐためには、ナトリウムを含むスポーツ飲料の摂取が有用です。
厚生労働省は、暑さ指数であるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)20)が基準値を超える場合、40~80mg/100mLのナトリウムを含むスポーツ飲料などを、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度飲むことを勧めています5)。テレビCMや店頭POP、ポスターなどで「熱中症対策」と表示のあるスポーツ飲料には、少なくとも飲料100mLあたり40~80mgのナトリウムが含まれているため、選ぶ際の参考にすることができます21)

冬の脱水について詳しくはこちら>
「冬の脱水 ― 冬ならではのリスクと予防・改善策」
https://www.cocacola.co.jp/article/special-considerations_06

スポーツ飲料は、付加的成分の組成や量の違いから、その種類は多岐にわたります。含まれる成分やその役割を正しく読み取ることで、目的に合ったスポーツ飲料を選択することが大切です。

参考文献
1)玉木雅子, 玉木啓一, 人間総合科学会誌, 2005;1(1): 56-62.
2)奥恒行, 臨床スポーツ医学,1996;13(8):904-906.
3)川島由起子監修, 栄養学の基本がわかる事典, 西東社, 2013
4)スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(日本体育協会)
http://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guidebook_part4.pdf
5)職場における熱中症予防対策マニュアル(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/0906-1.html
6)日本食品標準成分表2015年版(七訂)(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/02/16/1365343_1-0216r9.pdf
7)e‐ヘルスネット ナトリウム(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-024.html
8)e‐ヘルスネット ブドウ糖(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-030.html
9)「健康食品」の安全性・有効性情報 クエン酸(国立健康・栄養研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail25lite.html
10)樋口満, 新版コンディショニングのスポーツ栄養学, 市村出版, 2007
11)「健康食品」の安全性・有効性情報 ビタミンについて(国立健康・栄養研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail178.html
12)湯浅真弥, 図解入門業界研究最新スポーツビジネスの動向がよ〜くわかる本, 秀和システム, 2017
13)e‐ヘルスネット アミノ酸(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html
14)椎名隆・佐藤雅彦・角山雄一, スタートアップ生化学(第2版): わかる“生命”のしくみ, 化学同人, 2009
15)宮川達ほか,体育科学系紀要,2011;34:17-25.
16)川瀬義矩, 水を科学する, 東京電機大学出版局, 2011
17)加藤秀夫ほか編, スポーツ・運動栄養学 第2版 (栄養科学シリーズNEXT) , 講談社サイエンティフィク, 2015
18)国際スポーツ医科学研究所監修, 新版 図解 スポーツコンディショニングの基礎理論, 西東社, 2014
19)熱中症診療ガイドライン2015(日本救急医学会)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf
20)熱中症予防情報サイト(環境省)
http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
21)「熱中症対策」表示ガイドライン(全国清涼飲料工業会)
http://www.j-sda.or.jp/images_j/pdf/necchusho_guideline_2016_0616.pdf