モノだけでなく情報も消費されているという事実

“食を消費する”とは、どういうことなのでしょう? 私たちは日々、多種多様な食べ物や飲み物を口にしています。いわゆる“食のモノ消費”です。生産者や製造者がつくったモノ、シェフやパティシエがつくったモノを食べています。

もう一つ、“食を消費する”には別の見方があります。「フードファディズム」という言葉をご存知でしょうか? 健康への関心が高い消費者が、ある特定の食材・素材・成分などのメリットないしリスクに触れた情報に過敏に反応して、いいも悪いも、飲食料品が健康に与える影響を過大にとらえる傾向を指します。こちらは、“食の情報消費”と言えるでしょう。とりわけ情報がおもしろおかしく描かれればなおさらのこと、SNSの世の中にとっては“おいしい話”。あっという間に、世の中の話題をさらいます。

いまや誰だって情報の発信者になれる時代です。その中でも、資格者である管理栄養士、保健師、薬剤師の方々が発信する情報は、別格扱いされることでしょう。しかし、専門職の正しい情報も、消費者のフードファディズムのフィルターによって正しく消費されない可能性があります。ここで決して間違っていけないのは、専門職がこのフードファディズムの扇動者(独裁的なファシスト)となってしまうことです。

2015年春に、食品機能性表示制度が施行され、加工品だけでなく生鮮品にも健康表示が可能となりました。いよいよ本格的な“食のモノ消費+情報消費”の時代に突入です。消費者の食の安全・安心への関心は、一層高まることが予測されます。今まで以上に、生産者、製造者には正確性と信頼度が求められます。

そこで、注目されるのがEBN(Evidence Based Nutrition)という概念です。科学的根拠に基づいた栄養摂取、食事管理という考え方です。エビデンスには質の違いがあることを啓発し、それを測る“ものさし”を提示することになります。

エビデンスという概念自体、日本ではそれほど長い歴史がある言葉ではありません。もともとは医療の世界で、医師個人の経験則が上位であった医療を科学的手法によって体系化して、客観的かつ再現性の高い医療(特に治療法)として役立てようという世の中の動きに乗じて現れてきた考え方です。EBM(Evidence Based Medicine, 科学的根拠に基づいた医療)が先にあり、それに続いてEBNの時代が訪れるというわけです。

その中心的な役割と責任を担う管理栄養士はじめ、保健師、薬剤師の皆さんが、EBNの概念を理解し、情報の収集・提供に携わることの重要性は言うまでもありません。たとえば、消費者にはなかなか理解しづらい食品添加物については、品質保持のための添加物、味や香りづけのためのもの、製造加工の過程において必要なもの、特定成分の補填強化のためのものなど、消費者の“食のモノ消費+情報消費”に正しく応える正しい情報収集・提供が求められます。

消費者と企業と、そして世の中の共通価値となるEBNの普及啓発に、「飲料アカデミー」が寄与することを期待しています。

西根英一(EBN推進委員会委員、担当:マーケティングコミュニケーション)