健康や栄養面を考えて食品を選ぶ際は、その食品に含まれる栄養成分の種類や含有量、各栄養成分の機能についての表示を確認することが大切です。今回は、表示が義務付けられている栄養成分のひとつである「たんぱく質」と、その構成成分で任意で表示される「アミノ酸」の働きと表示方法について解説します。


■表示のルールが異なる「たんぱく質」と「アミノ酸」
日頃から体を鍛えていたり、筋肉の維持に気を遣っていたりする場合には、意識してたんぱく質を摂取している人も多いでしょう。健康増進法第3条に基づく栄養表示基準では、熱量(エネルギー)と脂質、炭水化物、ナトリウムと共に、たんぱく質の含有量を必ず表示することが定められています。

たんぱく質を構成しているのはアミノ酸ですが、アミノ酸は表示を義務づけられておらず、表示しなくても問題はありません。しかし、販売者の責任において、科学的根拠にもとづいたうえで任意で表示することができます1)

■たんぱく質とは
たんぱく質の働き
たんぱく質は、筋肉や臓器など体を構成する主成分となる重要な栄養成分です2)
食事としてたんぱく質を摂取すると、体内でまずペプチドというアミノ酸の重合体に分解され、さらにアミノ酸に分解されて運ばれ、利用されます。アミノ酸は、各部位に必要なたんぱく質へと体内で再構成されます。
たんぱく質は体の維持に欠かせない栄養成分でもあり、厚生労働省の食事摂取基準では、18歳以上の男性は1日60g、女性は50g摂取することが推奨されています3)

■アミノ酸とは
アミノ酸の働き
たんぱく質の「部品」ともいえるアミノ酸は、自然界には何百種類も存在していますが、人間のたんぱく質の構成成分はそのなかのわずか20種類です。20種類のアミノ酸には、体内で合成できる非必須アミノ酸と、体内で合成できない必須アミノ酸があります。必須アミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンの9種類で、これらは体内で合成されないため食事から摂る必要があります。
20種類のアミノ酸は、たんぱく質の構成成分である点は共通していますが、それぞれ異なる働きや機能を持っています。例えば、アスパラギン酸は、体内の窒素代謝やエネルギー代謝に関わり、疲労回復などに効果が期待できます4)。必須アミノ酸の中で、BCAA(分岐鎖アミノ酸)と総称されるイソロイシンやロイシン、バリンは、筋肉で代謝されるアミノ酸なので、筋肉のエネルギー代謝に深く関わっています5-7)
必須アミノ酸の摂取量が不足すると、そのほかのアミノ酸を十分に摂取していても、たんぱく質を効率よく作ることはできず、摂取したアミノ酸が無駄になってしまう場合があります。肉や魚などは必須アミノ酸のバランスがよく良質なたんぱく質が豊富に含まれていますが、穀類のように特定のアミノ酸の含有量が少ない食品を摂る場合は、ほかの食品で不足するアミノ酸を補うなど、バランスよく摂取することが大切です8)

アミノ酸と運動との関係
アミノ酸は、運動時の筋肉疲労を低減する働きや筋肉を作る働きがあるので、さまざまな実験結果などから、BCAAやアルギニンなどを適切に配合したアミノ酸の摂取で、持久力の強化、筋肉疲労の回復、運動能力の増強などの効果が期待されます2)
アミノ酸は、良質のたんぱく質を含む食品から摂取できますが、運動前後に水分の補給を兼ねてアミノ酸を含む飲料を摂れば、たんぱく質として摂取するより速やかにかつ効率よく摂取することができます9)

■「たんぱく質」と「アミノ酸」の表示法
たんぱく質を含む主要な栄養成分の表示法
たんぱく質は、体のエネルギー源となる重要な栄養成分です。そのためたんぱく質は、ともに三大栄養成分と位置づけられている脂質、炭水化物と同様に、栄養表示基準で表示が義務づけられています。三大栄養成分のほかに、適正な体重の維持に関わる熱量、高血圧に影響があるナトリウムも必ず表示する必要があり、健康維持・増進のために栄養表示基準が定められていることがわかります。これらの5つの主要な栄養成分のほか、その他の栄養成分としてミネラルやビタミンなども表示することができます。
栄養成分の表示にあたっては、その表示順も定められています。1)熱量、2)たんぱく質、3)脂質、4)炭水化物、5)ナトリウムの順で、ミネラルやビタミンなどを表示する場合はそのあとに記載されます(図)10),11)
栄養成分表示を見れば、その食品から摂取できる栄養素の量がわかるので、推奨される1日の摂取量のうちどの程度を占めるか把握するのに役立つでしょう。

アミノ酸の表示法
一方、アミノ酸はたんぱく質の構成成分ではあるものの、栄養表示基準ではたんぱく質と扱いが異なり、表示する必要はありません。任意で表示することはできますが、熱量やたんぱく質などとは線で区切るなど、表示しなければならない栄養成分とは区別できるように記載しています(図)。しかし、アミノ酸には前述したようなさまざまな機能があり、アミノ酸含有量の記載があれば、どのアミノ酸がどの程度摂取できるのかが把握できます。アミノ酸それぞれの機能や働きを知り、表示を確認することで、自分の目的に応じたアミノ酸を摂取することができます。

図 栄養成分表示の例

■まとめ
たんぱく質を構成するアミノ酸は、栄養表示基準では科学的根拠に基づいて任意で表示されます。アミノ酸のなかでも必須アミノ酸は体内で合成されないため、食品から摂らなければなりません。アミノ酸の機能や特徴を知り、栄養成分表示を確認することで、目的に応じた摂取が可能となります。

参考文献
1) 早わかり栄養表示基準 解説とQ&A, 中央法規出版, p64-65

2) 味の素株式会社編:アミノ酸ハンドブック, 工業調査会, p20, p80

3) 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

4) 健康食品の素材情報データベース, アスパラギン酸(国立栄養・科学研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail598.html

5) 健康食品の素材情報データベース, イソロイシン(国立栄養・科学研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail602.html

6) 健康食品の素材情報データベース, ロイシン(国立栄養・科学研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail633.html

7) 健康食品の素材情報データベース, バリン(国立栄養・科学研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail625.html

8) 中村丁次監修, 栄養の基本がわかる図解事典, 成美堂出版, p72-73

9) 八田 秀雄, 乳酸と運動生理・生化学―エネルギー代謝の仕組み, 市村出版, p52

10) 栄養表示制度とは(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin829.pdf

11) おしえてラベルくん 健康増進法に基づく食品表示ガイド(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin881.pdf