文=マイケル・アグリッピーナ


世界を魅了した金髪の女性

1930年代のある日、21歳のアリス・ジーン・アンダーソンがニューヨークの駅で列車を降りると、見慣れた顔が彼女のことを見下ろしていました。

「巨大なビルボードには、青い水着を着た私の姿が描かれていました。それが目の前で光り輝いていたんです! 私は目の前で起こっていることが信じられなくて、そこに立ちつくしてしまいました」

現在98歳のアンダーソンは、コカ・コーラ社による電話インタビューの中でこのように話してくれました。

このときの体験は、やがてアンダーソンにとって、ごく日常的なことになりました。というのも、1930年代から50年代にかけて彼女のまばゆいばかりの姿は、「コカ・コーラ」のビルボード、ポスター、バスの広告、そしてさまざまな関連商品を飾り、世界中に知られるようになっていったからです。


キャリアのスタートは、ダンサー!

アンダーソンのスターへの道のりは、1世紀近く前に始まっていました。彼女は3歳のとき、母親に連れられて通いだしたダンス教室ですぐに際立った才覚を示し、本格的なダンスの訓練を受けるための奨学金を手にしました。

10歳代のころには、ダンスでキャリアを築くべくニューヨークに移り、ブルックリンのフォックス・シアターで週に20以上ものショーに出演しました。この劇場で、彼女はコンサートピアニストとオーケストラのリーダーを兼任していた将来の夫にも巡り合いました。

アンダーソンは18歳のとき、世界的に有名なダンスカンパニー「ロケッツ」(当時のグループ名は「ロキシエッツ」)のニューヨークデビュー公演に参加しました。向上心あふれるアーティストの彼女は、ほどなくブロードウェイでもデビューを果たします。

その間ずっと、アンダーソンは航空会社、シャンプー、歯磨き粉など、さまざまなブランドの広告モデルとしても活動していました。そして「コカ・コーラ」の広告の仕事を始めるや、たちまち国内人気NO.1のモデルとなったのは言うまでもありません。

98歳の現在も輝きは健在。
20世紀を代表する「コカ・コーラ」広告モデルの素顔

長年にわたり、アンダーソンと組んで「コカ・コーラ」の広告イラストを担当したのはハッドン・サンドブロム(赤い衣装に白いヒゲ姿という、現代のサンタクロースのイメージをつくり上げたことで知られる画家です)。彼が広告イラストを制作する際には、まずアンダーソンがカメラの前で何時間もかけてポーズをとり、サンドブロムはその写真を元にイラストを仕上げました。こうして描かれた彼女の姿は、「コカ・コーラ」のビルボードやトレイを飾り、世界中に広まっていきました。「コカ・コーラ」アイテムのコレクターの中には、今でも彼女を探し出してサインを求めてくる人がいるそうです。


広告モデルから絵描きへの転身

サンドブロムとの仕事は、アンダーソンがアーティストとしてもう一つの道を拓くきっかけにもなりました。今日までずっと続けている絵画との出会いをもたらしたのです。広告モデルをしていた当時、2児の母となっていたアンダーソンですが、挑戦心に満ちた彼女はシカゴ美術館附属美術大学でパステルと油彩画のクラスを受講し、本格的に絵の勉強に乗り出したのでした。

アンダーソンは現在、フロリダ州アパラチコーラに住んでおり、冗談交じりに「『コカ・コーラ』から『アパラチコーラ』に移ったの」と語ります。絵を勉強した彼女が描いた作品はフロリダ州中の著名なギャラリーに展示されており、アンダーソン自身も「On the Waterfront」というギャラリーを所有しています。

アンダーソンは98歳となった現在も、毎週木曜日には親しい友人たちと一緒に絵筆をとり、アートに囲まれて暮らしています。また、今すぐコマーシャルにも出られそうなくらい素敵な笑顔をふりまき、何かあるとすぐに歌いだす彼女は、現在もエンタテイナーのままです。娘のリン・ウィルソンは、そんな彼女のことを「98歳の若さ」と表現します。

「母は今でも健康で、活力にあふれていて、『コカ・コーラ』を飲んでいますよ」

ウィルソンは最後にこう、語ってくれました。


動画:アンダーソンウィルソンからのメッセージ(2012年撮影)