今年3月に発売され、すっきりさわやかな味わいで好評をいただいている「綾鷹 にごりほのか」。

これまでのコカ・コーラの調査では、一般的に男性が緑茶に「苦味」「渋み」を求めるのに対し、女性は「旨み」や、「すっきりした口あたり」を好む傾向があることがわかっていました。いっぽうで男女問わず2030代のお客様の緑茶の購入者はわずかに減少しており、緑茶のすそ野を広げることができる製品が求められていました。

もうひとつの「綾鷹」は、どう生まれたのか。その開発に携わった(株)コカ・コーラ東京研究開発センター 製品開発 アジアパシフィックティーグループ 執行(しぎょう)明日香(右)と、日本コカ・コーラ(株)マーケティング&ニュービジネス デザインイノベーショングループ 原田朋子(左)に聞きました。

 

ご担当業務を教えてください。

執行:製品開発部門でお茶製品の処方開発を担当しています。新卒でコカ・コーラシステムに入社後、もう15年以上開発に携わっており、コーヒー以外のカテゴリーはすべて開発経験があります。今は「綾鷹」、「綾鷹 にごりほのか」に加え、台湾などアジア市場向けのお茶製品の開発にも携わっています。「綾鷹」という名前ではありませんが、最近では海外でもにごりのある緑茶が販売されています。

原田:デザインイノベーションというグループで、製品パッケージデザインのディレクションを担当しています。メイン担当は「綾鷹」ですが、サブとして「爽健美茶」「い・ろ・は・す」「ファンタ」「カナダドライ」などのデザインも担当しています。コカ・コーラシステムには2004年に入りました。

 

新製品が世に送り出される過程で、お二人はいつから、どのように関わってゆくのですか?

執行:「こういうコンセプトの製品を出そう」という方針が社内で決まってから、実際の“味”の開発に入るのが、おおよそ1年前です。もちろんその前にはさらに時間をかけてマーケティング調査やコンセプト作りが行われています。そこで決まった条件に基づいて、まず原料や茶葉をひとつひとつ選んでいく作業が始まります。濃いもの、薄いもの、渋いもの、甘いもの…、様々なものを作って、そこからイメージに合うものを絞り込んでゆく作業をブランド担当者と一緒に進め、最終的にフォーミュラ(市販品と同じ処方)が固まるのが製品発売から56ヶ月前、というのが一般的です。

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全国各地の様々な茶葉を取り寄せ、常に新しい味の開発に取り組んでいる執行。

原田:パッケージ開発の場合は、製品発売の10ヶ月ぐらいから企画が始まります。フォーミュラが決まるタイミングとあわせ、最終的に店頭に並ぶのと同じパッケージと味で消費者調査も行いますので、やはり発売の5ヶ月ぐらい前にはパッケージデザインも完成していますね。

 

「綾鷹 にごりほのか」の開発は順調でしたか?それとも“難産”でしたか?

執行:どの製品も難産で、順調にいくことのほうが少ないです(笑) ただ、「綾鷹 にごりほのか」は製品のコンセプトが明確だったので、やりがいのある仕事でした。

「綾鷹」は、消費者の皆様からも本格的な緑茶として認知いただき、おかげさまでセールスも順調です。いっぽうで、本格的であるがゆえに、「私には濃そう」「渋そう」と感じてらっしゃる方がいるのも事実です。また飲用シーンとしても、「綾鷹」はお茶の味そのものを味わったり、食事と一緒に楽しまれたりするケースが多いのですが、お風呂上りやスポーツの後など、もう少しライトに飲める「綾鷹」があったらいいんじゃないか、という声もあり、そうしたニーズに応える新製品の開発が決まったのです。

開発上の課題は、「ゴクゴク飲める、すっきりさわやかな緑茶を作る」のと同時に、「水っぽくなってはいけない」「常温でもおいしく飲めるように」ということでした。そのため、まず茶葉を抜本的に選びなおしました。それから茶葉の生っぽさを消すため、「火入れ」という工程での微妙な火加減にもこだわっています。

また「綾鷹」の特徴でもある抹茶の量を多めにして、飲みごたえや、飲んだあとにのこる“余韻”を強化しています。きれいなグリーンになるよう、見た目の色合いにもこだわり、「私には濃そう」「渋そう」という心理的なバリアを外していただけるように心がけました。

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実際に執行が茶葉の味の鑑定に使っているカッピングテーブル。茶葉の浸出時間によっても味が大きく変わるため、ストップウォッチも欠かせない。

 

「味が薄い」ことと、「すっきりさわやか」って、どう違うんでしょうか?

執行:まさに今回苦労したのはその点です。「急須でいれたような味わいを持ちつつ、ゴクゴク飲めるようにする」というのは、実はとても難しいことなんですね(笑)  濃いお茶を水で薄めるのではなく、お茶としての味わいはしっかり出しながら、のどにひっかかりがないように仕上げる。そのために茶葉の量や抹茶の量、抽出する際のお湯の温度などをすべて再検討し、ベストバランスを探ってゆきます。もちろんこのプロセスには上林春松本店の上林秀敏代表にもご協力いただいており、200種類以上のプロトタイプから、求める味を絞り込んでゆきました。

 

明るい色合いのパッケージデザインも特徴的ですね。

原田:パッケージは、製品のネーミングに大きく左右されます。実は開発がスタートした時点では、複数のネーミングの候補があって、それぞれにあったデザインも複数開発していました。デザインも、初期には200種類以上の案を出しています。

「綾鷹」ならではの緑茶の旨みを活かしながら、「すっきりと飲みやすい」もの、かつ「女性が手に持っていてもおしゃれな感じ」も出したいし、「味わいが伝わるような表現」も必要でした。製品として「どこに行きたいか」ということは明確にあったので、「綾鷹」本体との距離感をきちんと表現するため、パッケージデザインとネーミングを組み合わせて決める必要がありました。

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「綾鷹」とは物性が違うことを表すため「綾鷹 にごりほのか」らしい“にごり”表現を模索。デザインのアイディアを固めていく。

 

「綾鷹 にごりほのか」というネーミングが決まったときは、どう思いましたか?

執行:製品ととてもマッチしているな、と思いました。にごりは「綾鷹」の大切な特徴ですから。

原田:私はすごくよかったな、と思いました。いくつかあった候補の中で、もっとも今回の物性をきちんと伝えられていると思っていたので。これでパッケージデザインも前に進められるな、と。

 

ファンの多い「綾鷹」の世界観を壊さずに、パッケージで差別化を図るのは難しくなかったですか?

原田:「綾鷹」のパッケージでは和紙をイメージさせる柄を用いているので、「綾鷹 にごりほのか」でも同じように和紙の柄を基調としています。微差に見えると思いますが、色は黄味が強いほうがいいのか、青いほうがいいのか、にごりの表現をちりばめたほうがいいのか、茶葉のモチーフを入れたほうがいいのか…様々な検証を行いました。

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「綾鷹」のアセットである「表札」の形状は、和のモチーフを中心に、やわらかさや上質さが伝わる形を検討した。

原田: 「綾鷹 にごりほのか」という文字が入る表札も、最終的には「繭玉(まゆだま)」をモチーフにした楕円形になりましたが、伝統的な和のモチーフを中心に、縁起のよい柄や、着物によく用いられる親しみのある柄など様々な検証をしています。デザインって何かを表現するものなので、この丸も理由がないと出てきません(笑)。なぜそこにその形があるのか、しっかりした理由付けがないと、ブランディングにならないので。

比べていただくとわかりますが、急須モチーフも、重たい印象にしたくなかったので、既存の「綾鷹」よりも少し小さめにしています。色もふくめて、様々なパターンを起こしましたが、最終的には、余分なモチーフを使わないシンプルなデザインになりました。

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最終的にはブルーで統一されたが、検討段階では、「綾鷹」の急須がグリーンのパターンも。

 

店頭に並んでから、反響はありましたか?

執行:おかげさまで狙い通り、女性を中心にご好評いただいています。主要なお茶製品と比べて女性のお客様の比率も高いですし、SNSでも、これまで「綾鷹」を渋いとお感じだったお客様が、『「綾鷹 にごりほのか」を飲みはじめたら、「綾鷹」も好きになってきた』という声を見かけました。ふだんあまり緑茶を飲まない若い世代にとって、“緑茶の入門編”のような位置づけを獲得できているように感じます。私の周囲からも「パッケージがかわいい」という声を、特に女性からもらいました。それから私の娘も「私はこっちの『綾鷹』のほうが好き。渋みが少なくて飲みやすい」と言ってくれましたね。


原田:「かわいい」というのは、私も何度か言われましたね。それと、ローンチする前は「色が薄いから目立たないんじゃないか」という懸念もあったのですが、実際に店頭にならぶと、今、他社の緑茶製品は深いグリーンのものが多いので、逆に「目立つ」と言う声が多かったです。それは狙い通りですね。


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原田の緻密なデザイン戦略の立案に欠かせないパントーンの色見本。仕上がりのチェックもルーペで入念に。

 

「綾鷹」ファンのお客様にメッセージを。

執行:これから暑くなりますが、のどが渇いてお茶をゴクゴク飲みたいとき、それから秋の行楽シーズンには行楽のお供に、ぜひ「綾鷹 にごりほのか」を試していただきたいです。特に、若い方、女性の方に。

原田:ぜひ2つの「綾鷹」を手にとっていただき、飲み比べてみてほしいですね。

 

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