■地道な手作業と最新技術の両面でアルバムを守る

NEDCCでの修復作業は、台紙がページ順に組まれているかどうか、台紙に抜けがないかどうかの確認から始まりました。そして、アルバムを解体した後は、各写真や台紙の表面から汚れをふき取っていく地道な作業が続きます。劣化した台紙は、現物の保存とデータ化の際に取り扱いやすくするため、最低限の補修作業を行いました。補修作業には薄美濃紙(うすみのがみ)という軽くて丈夫な和紙と、小麦粉デンプンからつくられた糊を用いています。

NEDCCで写真の修復を手掛けるモニク・フィッシャーは、次のように説明します。「各台紙に水性インクで写真のキャプションが書かれていたため、もとの台紙から写真をはがしてしまうのは避けたいと考えました。写真と一緒に撮影場所の情報を保存することが不可欠だと思ったのです。そこで、写真が貼られた状態の台紙を1枚1枚文書保存用の特殊フォルダに挟んだうえで、全体を専用の箱に収めるという修復方法を選択ました」。

100年前の貴重な史料が蘇る! 「コカ・コーラ」広告フォトアルバム修復大作戦

消しゴムで台紙の汚れをふき取る様子

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ろ過水とエタノールにひたした綿棒を用いて写真の表面をきれいにする様子

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台紙を1枚ずつ特殊なフォルダに保存

台紙を入れたフォルダ(製品名:MicroChamber ©/ SilverSafe)は、今回のような写真資料を保存するために特別に開発されたものです。フォルダの外側は、通常の紙に含まれるリグニンや硫黄などの不純物(これらは紙の劣化の要因となります)をあらかじめ取り除いた特別な紙でできており、表面をph8.5の弱アルカリ性に保つための特殊な処理が施されています。一方、フォルダの内側は素のままのコットンペーパーでできており、これにより台紙のphが中性に保たれています。少し専門的な説明になりましたが、この構造によって、退色の原因である活性酸素や酸化ガスから写真を守ることができるのです。

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表紙のためにつくられた特注の保存箱

アルバムの表紙を保管するための箱も、ただの箱ではありません。有害物質や光、急激な温度・湿度の変化といった、表紙を劣化させるものから保護する機能がある特注品です。表紙と台紙はそれぞれ別の箱に入れた上で、同じ場所に保管されることになりました。

 

■高画質・高解像度のデジタルデータに

修復作業に続いて、NEDCCのデジタル画像処理スタジオでデータ化作業が行われました。台紙が1枚ずつ個別のフォルダに入っているので、画像処理の際にも安全に取り扱うことができます。それぞれの台紙を80メガピクセルのミディアムフォーマット・デジタルカメラで撮影し、400ppiという高い解像度でデータ化することができました。

「これだけ高い解像度で保存してあれば、スタッフが写真やキャプションを細かく調査することも容易になるでしょう」と、NEDCCで画像処理サービスを統括するテランス・ダンブロシオは説明します。データ化によって、画像の検索や活用をしやすくなるのはもちろん、オリジナルのアルバムに直接触れる機会が減るので、アルバムの保存性も高まりました。

 

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