1983年の発売開始から30年以上にわたり、
10歳代を中心としたアクティブな若者たちに支持されてきた「アクエリアス」。
現在もスポーツ飲料市場での販売高シェアNo.1を誇っています。
そのような状況にあって、
アクエリアス」は、今年4月、さらなるブランド価値の向上を目指し、
ブランドコミュニケーションを全面的に刷新しました。
従来のブランドイメージから大きく方向転換した理由と狙いについて、
日本コカ・コーラ株式会社マーケティング本部の小笠原一郎さんに伺いました。

※ (株)インテージ SRI調べ スポーツ機能性飲料市場 2016年3月-2017年2月計 累計販売金額ベース 全国手売り業態

文=庄司里紗
写真=村上悦子

 

■スポーツだけではない、あらゆる「渇き」を潤す飲料へ

──長年、スポーツ飲料のトップブランドとして親しまれてきた「アクエリアス」は、これまでは、スポーツシーンを描いたTVCMなどによるコミュニケーションが中心でした。今回のリニューアルで大きく変わったポイントは、どのようなところでしょうか?

小笠原 最大の違いは、身体を動かすことによる“フィジカルな渇き”だけでなく、日常で感じるさまざまな“渇き”に注目したということでしょう。これまで「アクエリアス」は「ハードなスポーツの後に飲む清涼飲料」という印象が強く、実際に、購買層も部活動などに取り組む10歳代が中心でした。オリンピック公式スポーツ飲料という位置づけも、「スポーツマン向け」というイメージを強めていた側面があると思います。そのように定着したスポーツ飲料としてのブランドイメージをアップデートし、より幅広い層に訴求していくのが今回のキャンペーンの大きな目的です。

──日常で感じる渇きとは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

小笠原 競技としてのスポーツや、ジョギングやヨガといった健康のために行うフィットネスの際だけでなく、人間は日々の生活の中でも、さまざまな“渇き”を感じているものです。仕事でいえば、大事なプレゼンの前だったり、大きなプロジェクトにチャレンジをするときだったり。さらには、将来の夢に向かって前向きに頑張っているときだったり。もちろん、喜びや感動で心が大きく動かされるような場面でも、潤いを欲しますよね。今回のキャンペーンでは、“カラダの渇き”だけでなく “ココロの渇き”にも注目し、 “渇き”という言葉の持つ意味をより広く捉えた上で、コミュニケーション全体を設計していきました。

 

──なるほど。新しいキーメッセージ「人はとっても渇くから。」も、そのような流れの中で誕生したのですね。4月から全国放映がスタートした新TVCMも、大きな話題になりました。

小笠原 TVCMの音楽には、若い世代を中心に絶大な人気を誇るロックバンドのRADWIMPSを起用しました。使用されている楽曲「サイハテアイニ」は、新しい「アクエリアス」の世界観を表現した、RADWIMPSの書き下ろしの作品です。この楽曲は、5月10日のリリースまでは、「アクエリアス」のTVCMでしか聴くことができないこともあり、非常に大きな反響を得ることができました。また、スマートフォンアプリ「Coke ON」でCoke ONオリジナル60秒CMが視聴できる限定キャンペーンや、RADWIMPS×「アクエリアス」のコラボボトルなどが抽選で当たるキャンペーンも同時展開し、好評をいただいています。

──これまでの「アクエリアス」といえば、注目されるスポーツ選手を積極的に起用し、「トップアスリートが選ぶ水分補給」ということを強調したTVCMの印象が強いのですが、今回は内容も大きく方向転換していますね。

小笠原 新しいTVCMでは、さまざまな「渇きを感じる瞬間」を、その瞬間の感情を象徴する漢字一文字とともに具体的に表現しています。映像にはRADWIMPS野田洋次郎さんをはじめ、多くの「渇きを感じている人々」が登場しますが、トップアスリートはプロサーファーの田岡なつみさんだけです。あえてふつうの人々の日常の渇きを描くことで、消費者に「『アクエリアス』が飲みたくなるシチュエーション」をより身近に感じてもらうのが狙いです。そして、ただ「喉の渇きを潤す飲料」から一歩進んで、「渇きを前に進む力に変える飲料」という新たなブランド価値を創出していきたいと思っています。

 

■市場が変化するから、ブランドも変化する

──パッケージのグラフィックも新しくなりましたね。

小笠原 発売以来、「アクエリアス」に最も期待されてきたのは「水分補給・ミネラル補給」という役割です。その役割を大切にしながら、「アクエリアス」の本来持っている価値が消費者により分かりやすく伝わるよう、中央にウォータードロップ(=水滴)のアイコンを配置しています。

──新たなファン層の獲得に向け、ブランドの再構築を目指すことになった要因には、どのような市場の変化があったのでしょうか?

小笠原 まず、スポーツ飲料の国内市場がここ数年、縮小傾向にあるという点です。記録的な猛暑の年などを除くと、スポーツ飲料の売り上げは年々落ちていっているのが現状です。背景には、少子高齢化によりメインターゲットだった若年世代の人口が減っているという、人口構成の変化があると思います。

もう一つは、お茶やフレーバーウォーターなど、スポーツ飲料に代わる多様な製品が各社から発売され、消費者の水分補給における選択肢が広がった点です。とくに、近年増加しているフィットネスユーザーは、後味に甘みが残る「アクエリアス」よりも、無糖の水やお茶を選ぶ傾向にありました。このような市場環境の変化に合わせ、「アクエリアス」も、従来の「スポーツ時の水分補給に最適な飲料」というポジションから、さらに成長する必要があったのです。

 

──しかし、長年のイメージ戦略を変更することには、社内でもさまざまな意見があったのでは?

小笠原 たしかに、当初は「これまでの路線を踏襲すべきだ」という声も上がりました。実は私自身、約10年前に「アクエリアス」を担当していたことがあり、今回のリニューアルには葛藤がなかったわけではありません。当時の「アクエリアス」は、スポーツ飲料としての優位性を全面的に打ち出し、水泳の北島康介さんや元サッカー日本代表の中田英寿さんなどを起用した大々的なプロモーションを展開していましたから。しかし、現実に市場環境に沿わなくなっている以上、同じやり方を続けていて良いわけがない。メンバーもそのことは重々理解していましたから、最終的には現路線でいくことに全員が納得し、今はチーム一丸となってリニューアルに取り組んでいます。

──そういった市場の変化に対応し、新たなラインナップとして「アクエリアス クリアウォーター」、そして「アクエリアス 経口補水液」も発売されましたね。

小笠原 すでにお伝えしたとおり、健康意識の高まりによって、より甘みを抑えた低カロリーの飲料が好まれる傾向が強まってきています。そこで、従来の「水分・ミネラル補給」の機能はそのままに、飲み口をよりすっきりさせた新製品「アクエリアス クリアウォーター」を発売しました。グレープフルーツ果汁を配合し、後味に甘みが残らない軽やかなテイストを実現しています。また「アクエリアス 経口補水液」は、水分補給に対する幅広いニーズに対応するための選択肢として、おいしさにこだわり、発売いたしました。

──「アクエリアス クリアウォーター」はパッケージもピンクやレッド、オレンジを使ったヘルシーなカラーで、女性にも親しみやすい印象です。

小笠原 「アクエリアス クリアウォーター」は、20歳~30歳代のアクティブな男女をターゲットにした製品なのですが、パッケージデザインは、特に女性が手に取りやすいものを、と考えいます。ブルーを基調とした「アクエリアス」や「アクエリアス ゼロ」は現状、男性ユーザーがマジョリティですが、「アクエリアス クリアウォーター」によって、従来のラインナップだけではリーチできないヘルシー志向の女性たちにも「アクエリアス」ブランドを訴求できると考えています。ランニングやジムでのトレーニング、ヨガなどを楽しんでいる方の水分補給にオススメです。

──まさに、あらゆる世代、性別、ニーズに向けて「アクエリアス」の新たな価値を届けているわけですね。進化し続ける「アクエリアス」の、今後のコミュニケーション戦略について教えてください。

小笠原 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、今後ますますスポーツやフィットネスに親しむ人たちの数の増加が予想されます。そうなれば、スポーツ飲料に対するニーズも、もっと高まっていくはずです。「アクエリアス」としては、従来のファンはもちろんですが、そういったアクティブな大人の方々にも選んでいただけるよう、コミュニケーション戦略の多面化・高度化にチャレンジしていきたいですね。変化する市場の中にあっても、「アクエリアス」が応援するのは常に「前向きに頑張っている人たち」です。いつの時代も、そんな人々の渇きを癒し、前に進む力に変える存在でありたいと思っています。

おがさわら・いちろう/ 1972年、兵庫県生まれ。大学卒業後、日本コカ・コーラに入社。以来、主にマーケティング領域で数々の製品のブランド戦略に携わる。これまでに担当したブランドは「コカ・コーラ」「ファンタ」「ジョージア」「アクエリアス」「リアルゴールド」など多岐にわたる。2017年3月より再び「アクエリアス」の担当となり、マーケティング戦略を牽引している。

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