2007年のブランド誕生から10年。
それまでのPETボトル緑茶にはなかった「にごり」を加えるなど、
一貫して「急須でいれた緑茶」の味わいを目指してきた「綾鷹」。
その「綾鷹」「綾鷹 にごりほのか」が、大幅にリニューアルしました。
新しい「綾鷹」は、これまでと何が違うのか?
Coca-Cola Journey』は、「綾鷹」ブランドの刷新に関わった
日本コカ・コーラのキーパーソンに話をうかがってきました。

文=小山田裕哉
写真=村上悦子

 

今年3月、「綾鷹」「綾鷹 にごりほのか」がリニューアルしました。旨み成分を豊富に含むブランドの特徴である、“一番茶”を使用した「急須でいれた緑茶の味わい」をより深めただけでなく、主力パッケージである525mlボトルも刷新。PETボトル飲料では珍しい左右非対称の独特の形状は、ひと目見ただけで印象に残ります。

綾鷹」といえば、PETボトル緑茶を代表するブランドの一つとして、10年にわたり多くの消費者に愛されてきた飲料です。それだけ世の中に浸透した製品を、どうしてこれほど大胆にリニューアルしたのか?

リニューアルの背景を探る本記事の前篇では、「綾鷹」ブランドを担当するマーケティング本部 緑茶グループ グループマネージャーの成岡誠さんに、「綾鷹」というブランドはいかにして確立したのか、そして、なぜリニューアルに取り組むことになったのかをうかがいました。

 

■「おいしいお茶=急須でいれたお茶」という原点

成岡さんは日本コカ・コーラに新卒で入社後、2003年にマーケティング本部へ配属されました。「爽健美茶」「ジョージア」「アクエリアス」などを担当した後、2014年からティーカテゴリーの緑茶グループで「綾鷹」ブランドを担当しています。

2007年に誕生した「綾鷹」は、PETボトル緑茶市場の中で当初こそ認知度が低かったものの、2010年秋に転機を迎えます。「選ばれたのは、『綾鷹』でした」というコピーが印象的な広告キャンペーンをきっかけに、急須でいれたような本格的な味わいが好評となり、以来、右肩上がりの成長を遂げてきました。

成岡さんが「綾鷹」の担当になった頃は、こうしたブランドイメージがすでに確立されていました。当時をこう振り返ります。

「そもそも『綾鷹』の開発は、『おいしいお茶とは何か?』を突き詰めて考えるところから始まっています。当時の担当者は『おいしいお茶=急須でいれたお茶』であると考え、それをPETボトル緑茶で再現しようとしました。これが『綾鷹』の出発点です。

急須でいれたお茶には独特のにごりがありますよね。それが緑茶の旨みにつながっているのですが、従来のPETボトル緑茶では不純物とみなされ、取り除かれていました。そこで『にごりは旨み』を合言葉に開発を進め、あえてにごりを残すことで、緑茶本来の旨みと渋みとほどよい苦みが調和した味わいを実現したのです。

しかし、発売当初は他社がにごりを除いた製品を発売している中、にごりがある事実を説明するだけでは製品の良さが消費者に伝わりませんでした。そこで『急須でいれたような旨みはにごりによってこそもたらされる』ことを伝えることにしたのです」

市場製品の中から、急須でいれた緑茶に近いものを選んでもらう「綾鷹チャレンジ」のほか、急須でいれた緑茶そのものと比較してもらう「急須チャレンジ」など、これまでさまざまなキャンペーンを行ってきた「綾鷹」ですが、その根本には、緑茶本来の味わいをPETボトル飲料で楽しんでほしいという思いがあったのです。

マーケティング担当 成岡誠さん

 

■緑茶が伝えているのは「もてなしの心」

成岡さんが「綾鷹」の担当になってからは、すでに確立していたブランドイメージをライトユーザーにも広めるため、「日本人の繊細な味覚に応える緑茶」として広告キャンペーンを展開。京都を代表する老舗料亭の料理人や老舗旅館の女将など、京都の食の専門家の方々を起用することで、「本格・上質」といったイメージに加え、「専門家お墨付きの」味わいの良さもアピールしていきました。

「にごりは旨みと伝えてきたわけですが、本格的なお茶に慣れていない方には、『にごり=飲みづらい』という誤った印象を持たれていました。でも、『急須でいれた緑茶』は、日本人の味覚に合うからこそ長きにわたって食卓に欠かせない飲み物として親しまれてきたはずです。そのように考えて、和食のプロの方々に『綾鷹』について語ってもらうことで、『にごりのある緑茶』が日本人の味覚を追求した結果生まれたものであるということを伝えていくことにしたのです」

そして2014年6月には、新たに、まろやかで飲みやすい「綾鷹 まろやか仕立て」という製品も発売。これは2016年3月に、飲みやすいのに緑茶の旨みが感じられる「綾鷹 にごりほのか」として刷新されました。「綾鷹」が飲みづらいと感じている女性や若者にも、「綾鷹」ブランドを飲用してもらうことにつながり、成岡さんも「期待した以上の反響をいただいた」と振り返るように、同年に発売された世界中のコカ・コーラ社の新製品の中で、もっとも売れた飲料となりました。

 

■ブランドをより成長させるために

現在「綾鷹」は、日本コカ・コーラ社が実施した調査によると、消費者の味覚好感度・ブランド好意度評価でともに1位を記録しています(主要緑茶ブランド内)。それだけ認知され、親しまれている製品を大幅にリニューアルするのは、なぜなのでしょう?

「これまでの『綾鷹』は、『急須でいれたような味わい』というように、味や香りといった部分にフォーカスし、『もの』としての価値を訴求してきました。しかし、ブランドをもっと成長させるためには、まだ手に取っていない方にも訴求するような、感性を刺激する要素を取り入れていきたい。それは何だろうかと議論する中で浮かんできたのが、『もてなしの心』でした。

綾鷹』の開発に協力していただいている上林春松本店の上林秀敏代表も、『お茶というのは文化である』とよくおっしゃっています。味だけでなく、器や空間といったお茶を飲む環境にもこだわることで、お客様をもてなす。急須でいれたお茶の魅力を突き詰めていくと、『究極のおもてなし』ということに行き着くと考えました。それをどうPETボトル緑茶で表現していくのか? それがリニューアルのテーマとなりました」

 

■まずは湯呑みをつくるところから始めた

そこで成岡さんが考えたのが、味わいだけでなく、容器にも一層こだわったリニューアル。急須でいれたお茶をこだわりの茶器で飲むことで、お茶の魅力をさらに感じられるようにするために、PETボトルのデザインも、「もてなしの心」を伝えるのにふさわしいものへと刷新することにしたのです。

「『コカ・コーラ』のコンツアーボトル(グラスボトル)は、“暗闇で触っても『コカ・コーラ』だと分かる”というほど、それ自体がブランドを象徴する資産になっています。それと同じように、新しい『綾鷹』のPETボトルも、ブランドのアイデンティティである本格感・こだわり、『もてなしの心』を象徴し、かつ、独自性の高いものを開発したいという思いがありました。

最初は『綾鷹』らしい『和』の雰囲気を、どのようにPETボトルに落とし込むのかを考えました。竹や磁器の花瓶をデザインの参考にしようとしたこともありましたね。でも、いろいろと試行錯誤をする中で、もっともしっくりきたのが『陶器の湯呑み』でした。

伝統的な湯呑みは手づくりなので、凹凸があって左右非対称で、持ったときに手にぴたっとはまる。人間の手の形状を考え抜いた上での、細かい心配りが反映されたデザインです。これこそ、『もてなしの心』が形になったものだと思いました。それで今回のリニューアルでは、湯呑みに見立てたPETボトルをつくろうと決めたのです」

 

企画化にあたり、成岡さんの緑茶グループでは湯呑みの制作にも取り組みました。「湯呑みらしさ」を感じるポイントはどこにあるのか。実際につくってみることで、イメージをスタッフ間で共有しようとしたのです。

「単に左右非対称のPETボトルをつくりますといっても、これまでにないデザインですから、スタッフにもやりたいことが伝わらない。そこで、コンセプトカーのように『こういうものをつくりたいのです』と形にして説明することで、私たちの意図を分かりやすく伝えようとしたのです。この経験は、リニューアルの広告ビジュアルにも反映されていますね」

 

■これまでにない左右非対称のPETボトルの量産へ

しかし、左右非対称なデザインのPETボトルを生産ラインに載せるのは大変です。工場でスムーズに製造できるのか、自動販売機の中で引っかかったりしないのか、そもそも、PETボトル飲料として見たことのないデザインを消費者は受け入れてくれるのか、多くの問題が浮かび上がってきました。

「開発部門からは、『この形状だと大量生産は難しいのでは』という意見もありました。それでも左右非対称のPETボトルをなんとしても実現したかった。何度も話し合い、細かなところまで調整していった結果、すべての問題をクリアするまでに1年近い時間がかかりました。その甲斐もあって、完成したPETボトルは、持っただけで今までのものとの違いを直感できるほど、特徴的になったと思います」

空間や器といった環境にもこだわることが、日本のお茶の文化の精神を受け継ぐことになるように、新しい「綾鷹」「綾鷹 にごりほのか」も、味わいだけでなく、容器にもこだわり抜くことで「日本のおもてなし文化の一端を担うお茶なのだ」という姿勢を示しているのです。

記事の後篇では、新しいパッケージデザインの秘密に迫ります。

(後篇につづく)

<プロフィール>
なりおか・まこと / 1999年、日本コカ・コーラ入社。2003年よりマーケティング本部にて、「爽健美茶」「ジョージア」「アクエリアス」を担当。2014年からはティーカテゴリーの緑茶グループにて「綾鷹」ブランドを担当。2015年から同グループのグループマネージャーを務める。

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