文=ジェイ・モイエ


■狙ったのは、なつかしさと斬新さの融合

歴代の「コカ・コーラ」広告が保管された、ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)のアーカイブ庫。同社のグローバルデザイン担当バイスプレジデントを務めるジェームズ・サマービルは、「広告制作のインスピレーションを得たいときにここを訪れる」と言います。彼はビンテージの広告をめくる手を止めて、1980年代の広告に使われた写真のネガをライトボックス(写真フィルムなどをチェックするのに用いる発光する箱)の上に載せました。光に照らされて浮かび上がったのは、「コカ・コーラ」を手に抱き合うカップルの姿です。

「この写真からは、若い男女の王道の恋愛ストーリーが見て取れます。そして、二人にとっての大切な瞬間は、『コカ・コーラ』の存在によってより特別なものとなっているのです」と、サマービルは語ります。

サマービルが率いるデザインチームは、今年1月から全世界で展開されている「Taste the Feeling」キャンペーンのビジュアルを手がけています。キャンペーン用の写真撮影にあたって、彼らはビンテージの広告で表現されていた魔法のような瞬間を、時代に合ったかたちで再現しようと試みました。「コカ・コーラ」というブランドの歴史と伝統を引き継ぎつつ、未来の方向性をも指し示すような、新しいビジュアルが望まれていたのです。

「見る人の心を掴むような斬新さと、昔の記憶を呼び起こすようななつかしさを併せ持った作品を、『コカ・コーラ』のためにつくりたいと思いました」とサマービルは言います。

動画:ジェームズ・サマービル、「Taste the Feeling」キャンペーンビジュアルのコンセプトを語る
(※英語のみとなります。)


■ファッションフォトグラファーだから写せた奇跡的な瞬間

最高に魅力的でエッジの利いたキャンペーンビジュアルをつくるべく、ニューヨークからガイ・アロチGuy Aroch)、ブエノスアイレスからナチョ・リッチNacho Ricci)という二人の著名なファッションフォトグラファーがチームに合流しました。

サマービルは二人を起用した理由を次のように語ります。「ファッションフォトグラファーは、単なる商品プロモーションやライフスタイル提案のための写真ではなく、見る人が想像を膨らませることのできるような作品づくりの方法を会得しています。彼らのこのような強みを『コカ・コーラ』のキャンペーンビジュアルの制作に活かしてもらうことは、興味深い試みになると考えました」。
その魅力を徹底解剖!
「コカ・コーラ」Taste the Feelingキャンペーンがウケている理由
[前篇]


コカ・コーラ社のデザイン部門は制作上の最低限のルールとビジュアルトーンの方向性を定める一方で、二人のフォトグラファーがそれぞれの経験知とスタイルを作品に自由に活かせるように計らいました。サマービルがチームに求めたのは、なつかしさと新しさ、親しみやすさと新鮮さ、そして、親密さと巧妙さを融合させることでした。

サマービルが『ノーマン・ロックウェルとインスタグラムやスナップチャットをミックスしたたようなビジュアルをつくりたいんだ』と言ったとき、頭の中にひらめきの電球が点いた気がしました。この言葉によって、サマービルと企画の方向性を共有できていることがわかったのです」とアロチは言います。

キャンペーン用の写真は、ストーリー性を維持し、ロックウェルの名作絵画を想起させる構成要素を備えつつも、インスタグラムの画像のように日常の一部を自然に切り取ったかのような印象を与える必要がありました。

「撮影にあたっては、自分たちの直感を信じました。人物の動きや表情、シチュエーションから伝わってくることに耳を澄ませ、筋書きを考えすぎることなく、現場で偶然生まれる魅力的な瞬間を捉えるようにしました。過度の演出や加工を経て完成したかのような作品にはしたくなかったのです」とサマービルは振り返ります。
その魅力を徹底解剖!
「コカ・コーラ」Taste the Feelingキャンペーンがウケている理由
[前篇]


キャンペーンビジュアルの制作過程では、いくつかの原則が貫かれています。第一の原則は、「コカ・コーラ」ボトルがすべての写真の中で主役となっていること。二番目は、「コカ・コーラ」ボトルの存在感を引き立てるため、現代的な色彩・質感・感情表現を演出に用いることでした。

「写真の中に『コカ・コーラ』ボトルが写っていなければ、思い起こされるストーリーはまったく別のものになってしまうでしょう。『コカ・コーラ』の存在によって、ストーリーの豊かさは決定的に左右されるのです」とサマービルは説明します。
その魅力を徹底解剖!
「コカ・コーラ」Taste the Feelingキャンペーンがウケている理由
[前篇]


もう一つ重要なことは、登場人物が日常生活の中のとても大切な瞬間に「コカ・コーラ」を飲んでいる姿を表現することでした。そのような場面で、彼らは意図して「コカ・コーラ」を選び、それを飲むことを楽しみ、大切な瞬間をさらに特別なものにしているのです。

「『コカ・コーラ』には、飲み方のルールブックは存在しません。飲む人が写真の中で正面を向いていても、フレームの外にいても、ピントが部分的にしか合っていなくても、あるいはボトルを思い切りさかさまにしていても、ストローを使っていても構わないのです。どんなシチュエーションや飲み方であっても、そこには常に『コカ・コーラ』に対する愛があることを伝えたいと思ったのです」とサマービルは語ります。

Slide show:スライドショー:「Taste the Feeling」ビジュアルを一挙公開!


>後篇は来週4月14日(木)公開です! お楽しみに!