文=ジェイ・モイエ



■ITコミュニケーションの時代だからこそ、人の温もりが伝わるストーリーを

斬新さと親しみやすさを併せ持ったビジュアルで、世界中の人々の共感を呼んでいる「Taste the Feeling」キャンペーン。そのアートディレクターに起用されたのは、アルゼンチンの広告代理店SANTOでクリエイティブディレクターを務めるマキシミリアノ・アンセルモです。

キャンペーンビジュアルのコンセプトについて、彼は次のように語っています。「いつの時代も変わらず、人の心を動かす鍵は“ストーリー”です。SNSなどを使ったITコミュニケーションが生活の中心となっている今日でも、人の温もりが伝わるストーリーは私たち一人ひとりを結びつけ、それぞれの想像力を刺激し、お互いを理解し合うきっかけとなっています。『コカ・コーラ』は昔から優れたストーリーテラーでしたが、私たちはこの作品を通してもう一度、みなさんとストーリーを共有しているのです」。

撮影を成功させるためには、ロケーション、キャスト、衣装といった要素を細部まで吟味することが不可欠でした。キャストには一流のファッションモデルと街中でスカウトされた一般人がともに起用されていますが、共通しているのは親しみやすい美しさと少し粗削りでワイルドな魅力を備えていることです。「このようなキャスト編成によって、刺激的でありながら共感しやすい雰囲気に作品が仕上がりました。彼らの斬新な感性や気取らないファッションセンスは、作品に色濃く反映されているのです」とサマービルは言います。

その魅力を徹底解剖!
「コカ・コーラ」Taste the Feelingキャンペーンがウケている理由[後篇]

「人々の日常の素晴らしい瞬間を切り取って作品に仕上げるには、あらゆる条件がそろわなければなりません。間違ったキャストや安っぽい舞台装置を使ってしまうと、『コカ・コーラ』ボトルの魅力も伝わらなくなってしまいますから」とアロチは言います。

リッチはカリフォルニアで、アロチはニューヨークでロケを行いました。「ただし、撮影に選んだのは特別な場所ではありません。たとえばニューヨークロケで使ったビルの屋上は、都会で暮らす10歳代の若者が夏にちょっとした日光浴でもするような、なんてことのない場所です。写真の背景にはレトロなダイナーや古びた屋上など味のある場所を選び、『コカ・コーラ』と人物の輝きを際立たせています。さらに、ざらついた質感と滑らかな質感を写真の中で大胆に対比させたことで、素朴でありながらもブランドの魅力に強い光をあてる効果が得られたと思います」とサマービルは言います。

その魅力を徹底解剖!
「コカ・コーラ」Taste the Feelingキャンペーンがウケている理由[後篇]

リッチは次のように付け加えます。「現代の若者はカッコ良さに対して独特の強いこだわりを持っています。すべてを完璧に仕上げるような1990年代の広告スタイルでは、今の若年層の共感を得ることができません。このキャンペーンは、彼らのリアルな感覚を取り入れた『コカ・コーラ』ブランドの新たな姿勢を示しています」。



■完璧につくり込まないという“カッコ良さ”

今回のキャンペーンでは、コカ・コーラ社サマービルラファエル・アブルー(同社グローバルデザイン担当ディレクター)が共同でクリエイティブディレクターを務めています。二人は撮影現場でアートディレクターのアンセルモ、フォトグラファーのアロチリッチと共に行動しました。彼らはすぐに意気投合し、撮影についての話し合いも現場のメンバー内で完結させることができました。

「このようなプロジェクトは広告代理店が一手に引き受けることが多いのですが、今回は広告代理店を介在させずにコカ・コーラ社のデザインチームが直接制作しています。そうすることで、革新的な思考と着実な実行力を持つチームをつくることができたのです」とサマービルは説明します。

広告代理店が介在せずにコカ・コーラ社とクリエイターとの距離が縮まったことで、現場での素早い意思決定が可能となりました。アロチは次のように語っています。「これは非常に優れた、そしてとても楽しいやり方でした。すべての条件が整い、ダイナミックな真のコラボレーションが生まれたと思います。サマービルアンセルモアブルーの3人は私たちが望むやり方をオープンに受け入れる一方、撮影をあるべき方向に導いてくれました。そのおかげで、現場にいいリズムが生まれたのだと思います」。

その魅力を徹底解剖!
「コカ・コーラ」Taste the Feelingキャンペーンがウケている理由[後篇]

写真の多くは、同じ日に同じロケーションで撮影されています。一つの場所で二つのチームを交替させながら撮影を行い、リアルタイムで意見交換をしました。ニューヨークの撮影には、ファッションフォトグラファーのアナ・パルマが合流しました。若者のライフスタイルを多彩に表現するアロチに対し、パルマは「コカ・コーラ」ボトルに大胆にフォーカスしたショットで、対照的なスタイルの写真に仕上げています。

撮影は、その場所に居合わせた一般の人やものを即興で採り入れながら進められました。「私たちが特に気に入った写真のいくつかは、きっちりと事前にコンテがつくりこまれていたものではなく、現場での思いつきから生まれたものです。自分たちが向かっているクリエイティブの方向性を完璧に把握しながら驚異的なスピードで撮影を進めたからこそ、存分に冒険できたのです」とサマービルは言います。

「質問している暇があったら走りだそう、というのが私たちの好きなやり方です」とアロチは付け加えます。