■ プリズムのような彩りを実現

モルガン以外にも、「コカ・コーラ」ボトルを素材に使ってシャンデリアを制作しているアーティストはいます。たとえば英国のサラ・ターナーは、プラスチックのボトルから遊び心溢れる照明や立体作品をつくり出してします。ターナーは2012年のロンドンオリンピックでコカ・コーラ社が設置したホスピタリティー・センターの照明など、コカ・コーラ社の依頼に応じて多くの作品を制作しています。

また、サウスカロライナ州にあるデザイン会社、ロシャンボーは「コカ・コーラ」ボトルのリサイクル品でつくったガラスのビーズを用いたランプを制作しています。

しかし、ロックバンド「イエス」のドラマー、アラン・ホワイトのために色とりどりのシャンデリアを制作したことがあるのはモルガンだけでしょう。その作品のために、モルガンは自らガラスを回転ドラムで加工しました。「まるで宝石のように見える、手持ちの一番良いガラスをすべて使いました。作品に取り組んでいるときは宝石職人のような気分です。ガラスがそれほど貴重なものに思えるんです」と彼は語ります。

浜辺で見つかるシーグラスの大半は茶色、白、緑といったボトルに多く使われる色で、宝石のような色鮮やかなガラスは、めったに手に入りません。そのため、モルガンは古道具屋で時代遅れとなった皿やコップ、花瓶などを見つけてきて、琥珀色、コバルトブルーといった珍しい色合いも含むプリズムのような彩りを実現しています。

古道具屋で調達したガラスは、砂と水の入った業務用の攪拌機にかけられ、欠片が滑らかになるまで磨かれます。モルガンによると、攪拌機の問題点は大きな音です。「金属のドラムの中で9キロのガラス片と砂と水が回転しているわけですから」。


■ 世の環境ブームが芸術家をつくる

コカ・コーラ」ボトルからつくったシャンデリアは、完成するとすぐに売れていく人気ぶりです。その秘密は、8オンスの「コカ・コーラ」ボトルが醸し出す懐かしい雰囲気だとモルガンは考えています。そして、「古い思い出を呼び起こすのでしょうね」と彼は言います。

「コカ・コーラ」ボトルをシャンデリアに変える
「アップサイクル」アートの魅力
Let There Be Light: Upcycled Chandeliers Give Coke Bottles New Life
ラス・モルガン

環境にやさしいライフスタイルや製品の爆発的な流行のおかげで、それまでやや地味な存在だった「アップサイクル」のアーティストは、芸術界で一躍脚光を浴びることになりました。そしてモルガンの作品は、「アップサイクル」ならではの魅力に溢れています。「大金持ちから貧乏人まで、リサイクル素材でできたものを心から買いたがっている人はたくさんいますよ」とモルガンは言います。

モルガンにとって「アップサイクル」の人気に火がついたタイミングもラッキーでした。活況を呈するシアトルのアート業界でも、近年の不景気で仕事を続けられなくなるアーティストは少なくなかったからです。

一方でモルガンは、リサイクル素材を使っているからといって、自分が筋金入りの環境保護主義者だとはまったく考えていません。「アップサイクル」はむしろ、素材を買うお金に事欠く古物好きの貧乏アーティストが手を出しやすい分野なのだとか。

そんなモルガンですが、2011年には彼の作品がキンプトン・ホテルのアースデイ展示の目玉となりました。キンプトン・ホテルからの依頼を受けたモルガンを含む3人のシアトルのアーティストが、ホテルの倉庫や地下室から見つけてきた素材で展示作品を制作したのです。

見方によっては、ガラクタの山も宝石さながらの芸術作品の宝庫となるということを、今回の事例は教えてくれます。「まだまだ活用されていない素材がそこらじゅうに溢れていますよ」とモルガンは語っています。