[写真右]しもやま・よしみ / 1947年岡山県生まれ。海とアメリカをこよなく愛すジョイマークデザインの代表取締役で、身近な人には「キャプテン」の愛称で親しまれている。15歳のときに上京し、22歳でジョイマークデザイン社を設立。79年にアパレルブランド『ボートハウス』を発表し一大ブームに。「坪単価世界一」とまで言われるほどの売り上げを誇った。その後も『キャプテンサンタ』ほか数々のブランドを世に送り出している。
ジョイマークデザインhttp://www.joymark-design.co.jp/

[写真左]てっど・らいあん / ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)ヘリテージ・コミュニケーションズ担当ディレクター。97年より、コカ・コーラ社の歴代製品や関連アイテムを保管しているアーカイブ庫の担当者を務め、2013年より責任者を務める。「コカ・コーラ」の歴史資料を展示している『The World of Coca-Colaワールド・オブ・コカ・コーラ博物館)』の歴史物担当者であり、アンディ・ウォーホルの展示を含む“ポップカルチャー”ギャラリーの責任者でもある。『Coca-Cola Journey』のグローバルサイトで記事も執筆している。

ボートハウス』や『キャプテンサンタ』など、
数々の人気ファッションブランドを世に送り出した、
ジョイマークデザイン代表の下山好誼さんは、
コカ・コーラ」グッズの世界的コレクターとしても有名です。
その下山さんのオフィスを、
ザ コカ・コーラ カンパニーのアーカイブ庫責任者、
テッド・ライアンが訪問。
思う存分、「コカ・コーラ」グッズ談義に花を咲かしてもらいました。

文=小山田裕哉
写真=下屋敷和文

 

■米国本社にも存在しない“激レア”グッズとは?

下山 テッドさん、ようこそ僕のオフィスへ。

テッド (壁いっぱいのコレクションを見渡して)これはすごい。つい目移りしてしまいます。ちょっと見ただけでも、僕が初めて見るグッズがいくつかありますね。

下山 どちらですか?

テッド このマッチとミラーです。

お宝グッズを肴に語りまくった“濃密”120分……! 日米「コカ・コーラ」コレクター“首脳会議”
「コカ・コーラ」グッズで溢れかえるジョイマークデザインの社長室にて
対談スタート

お宝グッズを肴に語りまくった“濃密”120分……! 日米「コカ・コーラ」コレクター“首脳会議”
テッドが初めて見たというマッチ(左2点)と裏側が手鏡になったグッズ(右)

テッド 昔はボトラー社(製品の製造、販売を担う会社)が自由にグッズをつくることができたので、こうしたノベルティがたくさん配られていました。だから、何がどれくらいつくられていたのか、把握できないものも多いんです。

下山 僕は、グッズ集めは一期一会だと思っているので、「これは!」というものを見つけたらすぐに買ってしまうんですよ。そうしたら、こんなにたくさん集まってしまった(笑)。ところで、今日は、テッドさんにぜひ見せたいグッズがあるんです。

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厚紙でできた組み立て式のノベルティは、
なかなかお目にかかることができないグッドコンディションな一品

テッド これは1929年のノベルティですね。「FREE!」と書いてあるように、10歳代の若者向けに無料で配っていたものです。もっと大きいサイズのものもあって、デパートのウィンドウに飾ってあったんですよ。

下山 アメリカのコレクターから譲ってもらったのですが、これだけキレイな状態で残っているのはすごく珍しいそうです。

テッド これに限らず、もともとノベルティには、保管しておくという発想がありませんでした。だから、本社にも残っていないものが多数あるんです。私が絶対に手に入れたいと思っている1910年代のポスターがあるのですが、なかなか見つかりません。

下山 僕も、1964年の東京オリンピックの際にコカ・コーラ社がつくったガイドブックを探しているんです。もしテッドさんが見つけたら、ぜひ教えてください(笑)。

 

■「コカ・コーラ」のロゴは会計士がつくった!?

テッド こちらはどうやって手に入れたのですか?

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打ち捨てられた空き瓶に自然に貝殻が付着したと思われる
世にも珍しい「コカ・コーラ」ボトル

下山 ニューオーリンズのアンティーク屋さんに飾られていたのを見つけました。地元の貝塚から偶然発見されたものだそうです。最初は「売らない」と言われていたんですが、2日間通い詰めてお願いしたら、50ドルで売ってくれたんです。

テッド 製造年月日が1923年12月25日とありますね。貝殻が付いているだけでも珍しいのに、さらにクリスマスボトルというのが素晴らしい。

下山 こちらはご覧になったことがありますか?

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大型のボトル型ラジオ

テッド これは1933年にカスタマーへの贈り物としてつくられたラジオですね。たとえば、床屋さんに「コカ・コーラ」のクーラーケースを置いてもらったら、そのお礼代わりのノベルティとして、このボトル型のラジオをプレゼントしていたんです。

下山 製造年まで正確に記憶されているんですね。頭にすべて入っているのがすごいです。

テッド ありがとうございます(笑)。それにしても、どうして下山さんは「コカ・コーラ」のコレクターに?

下山 22歳のときニューヨークに出張したのですが、そこで飲んだ「コカ・コーラ」の缶のデザインが素晴らしくて。思わず洗って持って帰ってきたのがコレクターになるきっかけです。僕はグラフィックデザイン科の出身なので、ロゴのデザインに惹かれたんですよ。

テッド おっしゃる通り、素晴らしいロゴです。実は会計士が描いたものだということはご存知ですか?

下山 えっ!? そうだったんですか?

テッド これは「Spencerian Script(スペンサリアン体)」といわれるフォントで、タイプライターが広まる前の19世紀後半に、会計士がよく使っていた書体なんです。「コカ・コーラ」の名付け親であり、このロゴをつくったフランク・M・ロビンソンが会計士だったことから、このフォントが使われたといわれています。

下山 随分とグッズを集めてきましたが、それは初めて聞きました。

テッド 下山さんはこれまでに、何点くらいの「コカ・コーラ」グッズを集められたんですか?

下山 およそ2万5,000点ですね。

テッド オーマイゴッド。

 

■グッズには「アメリカへの憧れ」がつまっている

テッド アトランタのワールド・オブ・コカ・コーラ博物館から、ぜひお見せしたいものをいくつか持ってきたんですが、世界有数のコレクターである下山さんがお持ちでないものがあるかどうか……。

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コカ・コーラ」のオリジナルボトルは、 模造品対策として1916年に開発された。
こちらは、オリジナルボトルのパテント申請用のイラスト

下山 「コカ・コーラ」のオリジナルボトルのパテント(特許)申請用のイラストですね。持っています(笑)。

テッド やはりそうですか(笑)。ただ、こちらはさすがにお持ちではないと思います。

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1930年代の「コカ・コーラ」のセールスマンが、町の小売店へ営業に行く際に使っていたツール(※)。
ビジネスユースのアイテムはとても珍しい

テッド ((※)を一緒に見ながら)こちらのツールでは、店頭プロモーション用のノベルティの使い方を、イラストと写真で説明しています。

下山 掲載されているポスターやグッズの中には持っているものもありますが、こういうツールは初めて見ました。

テッド 当時は広告ポスターに有名なハリウッド女優を起用していました。ほら、ここにジーン・ハーロウ(1930年代のスター女優、代表作に『地獄の天使』<1930年>など)がいます。『類猿人ターザン』(1932年)に出演したジョニー・ワイズミュラーの姿もありますね。

お宝グッズを肴に語りまくった“濃密”120分……! 日米「コカ・コーラ」コレクター“首脳会議”
営業ツールの中身。
左ページに広告のサンプル画像とサイズが記載され、
右ページには店頭での掲示例が写真で示されている

下山 以前、ワールド・オブ・コカ・コーラ博物館に招待していただいた際に、こういうポスターのオリジナルを拝見しました。すっかり感動して、何周もしましたよ。

テッド 博物館では目玉の展示物として、歴代の「コカ・コーラ」広告に使われた油絵のオリジナルアート2,000点を展示しています。パリや中国で巡回展をしたこともあります。いつか日本でも披露したいですね。

下山 そういう展示は、ビジネスとしてやっているのですか?

テッド 私たちの仕事はあくまでも「コカ・コーラ」の歴史を多くの方に知っていただくことです。だから儲けることよりも、どうしたら、よりたくさんの人に素晴らしい作品の数々を見ていただけるかということを考えています。

下山 僕も自分のコレクションの展示をデパートでやったりしましたが、まったく同じ気持ちです。僕が若い頃に感じたアメリカへの憧れが、「コカ・コーラ」にはつまっている。それを多くの人と共有したいだけなんです。

お宝グッズを肴に語りまくった“濃密”120分……! 日米「コカ・コーラ」コレクター“首脳会議”
下山さんがこれまでに収集してきたグッズは、
神奈川県とハワイにある別荘にも保管されている

テッド 2年前にポーランドで展示会をしたときのテーマは「アメリカンドリーム」でした。冷戦時代のポーランドは鉄のカーテンに覆われていて、東側の人々は米国への憧れをずっと抱いていたそうなんです。具体的には、マルボロ、チューイングガム、ディズニー、そして「コカ・コーラ」でした。展示会では、そんなポーランドの人々が、憧れながらも触れることはできなかった時代のグッズを展示したのです。みなさん、すごく感動してくれました。

下山 その気持ちはよく分かります。いや、本当に今日はお会いできてうれしいです。こうして話している間にも、テッドさんの視線はずっと部屋の中のグッズに注がれている。僕と似たもの同士だということがよく分かりました(笑)。

テッド バレていましたか(笑)。アトランタに来た際には、ぜひご連絡ください。ワールド・オブ・コカ・コーラ博物館をご案内しますよ。

お宝グッズを肴に語りまくった“濃密”120分……! 日米「コカ・コーラ」コレクター“首脳会議”
これまでに多くの「コカ・コーラ」グッズコレクターと出会ってきたテッドも
下山さんの情熱と収集力には驚いていた