日本で暮らす私たちにとって、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの清涼飲料売り場に多種多様な製品が並んでいるのは当たり前のこと。しかし海外では、この私たちの当たり前は、当たり前ではないようです。
では、海外から日本に来た人たちの眼には、私たちの当たり前(日本の消費者の行動特性や嗜好性、飲料市場の特徴など)はどのように映っているのでしょう。

ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)の『コカ・コーラ ジャーニー』編集部が、日本のマーケティング統括責任者カリル・ヨウンスと製品開発を統括するスタン・マーを直撃取材。世界から見た日本の清涼飲料市場の特徴を解き明かします。

文=『コカ・コーラ ジャーニー<米国版>』編集部

 

■製品の種類の多さは世界一

ジョージア」「綾鷹」「爽健美茶」「い・ろ・は・す」……すべてコカ・コーラ社が日本の消費者向けに開発したオリジナルブランド。アメリカの消費者にはまだ馴染みが薄いものの、日本国内のベストセラーであるばかりでなく、海外での展開も広がりつつあり、直近5年間で10億ドルブランド(*1)の仲間入りを果たしています。

200以上の国と地域で事業を展開しているコカ・コーラ社ですが、その中でも日本のコカ・コーラシステム(*2)は、“規模と性質”において大変重要な役割を担っています。コカ・コーラ社の売り上げ全体に占める日本の売り上げの比率は非常に高く、製品開発においてもその独創性は際立った存在なのです。たとえば、前述したような日本オリジナルの製品、あるいは世界共通ブランド(ファンタなど)の新フレーバーや派生製品を含め、昨年だけで約100種類もの新製品が市場に投入されています。

では、日本独自の製品は、いったいどのような方針で開発されているのでしょうか? 日本のマーケティング部門の統括責任者に聞いてみたところ、日本特有の消費者ニーズを的確に把握し、戦略的に製品を提供してきた開発者とマーケターの活躍ぶりが浮かび上がってきました。

「日本の消費者はトレンドに対する感度が非常に高く、新しいものをすぐに試してみる傾向があります」とカリル・ヨウンスは語ります。さらに、「日本の消費者が『買いたい』と思うものは、トレンドを踏まえつつも、どこか他と違うと感じる、差別化された製品のようです」と見解を述べてくれました。

日本市場には多くの競合企業が存在し、必然的に、その競争は苛烈になります。目の肥えた消費者は、1度ヒットした製品であっても、次に手に取るときには何らかの形で“イノベート(カイゼン)”されていないかと、当然のように期待しています。このような消費者の傾向を理解し、味、健康機能、宣伝手法など、さまざまな要素を考慮して、いかに製品ラインナップを進化させ続けるかが、激しい競争を勝ち抜くカギとなるのです。

「日本人には、何事においても、より“完璧”を求める精神が根付いているように思います。その精神は、個人レベルの自己研鑽から農業や工業への取り組み方に至るまで、社会のありとあらゆる側面に及んでいます。当然、私たちの製品に対しても同じことが求められます。さらなる高みを目指して進化を続けない製品は、日本では受け入れられません」(ヨウンス

日本のイノベーション(『カイゼン』)の文化に対応するために、徹底した製品開発が急務となっています。消費者市場として米国、中国に続き3番目の規模を誇る日本で、コカ・コーラ社は徹底した市場調査に基づく製品開発を行ってきました。その結果、日本のコカ・コーラ社は、すべての飲料カテゴリーで消費者の関心を惹きつけ続けることができ、結果としてコカ・コーラ社は日本の飲料市場で、常にトップランナーであり続けられたのです。

年間で新製品100種投入!コカ・コーラ社社員、「日本の清涼飲料市場の特殊性と日本コカ・コーラの勝因」を解説する

インタビューを受けるカリル・ヨウンス(写真右)

 

■日本市場の特殊性

コカ・コーラ社といえば炭酸飲料が頭に浮かぶ消費者は多いことと思います。ところが、日本におけるコカ・コーラ社の2016年度の製品の総販売数量中、炭酸飲料が占める割合は25%に過ぎません。この数字は、毎日多種多様な製品の中から複数の飲料を選択している消費者のニーズに対応し、幅広い製品を展開してきた結果とも言えるでしょう。日本の消費者が最も好む飲料は「お茶」に限りません。日本ではコーヒーやジュースも人気が高く、コカ・コーラ社のシンボルである「コカ・コーラ」ブランドの製品バリエーションを遥かに超える、数多くのカテゴリーや味わいが開発されているのです。

「日本の消費者の消費性向を鑑みれば、これは驚くには値しません。日本の飲料市場で幅広い選択肢を消費者に提供することは、賢明な手段というより必要要件です」と、ヨウンスも話します。欧米の消費者に比べると、日本の消費者は、シチュエーションやライフスタイルに合わせて異なる飲料を選ぶ傾向があります。だから、1日のあらゆる時間帯及びシチュエーションに合わせた製品開発が必要になるのです。

「たとえば、緑茶は寿司や刺身などの和食になくてはならない飲料です。それが中華料理などの脂っこい食事の際にはウーロン茶を選択し、朝食には栄養バランスとカロリーに配慮して野菜ジュースを選択する、といった具合に、食事によっても飲料は変わります」(ヨウンス

日本の清涼飲料市場の中での中心的な存在は茶系飲料。茶系飲料と一口に言っても、その中には緑茶、ウーロン茶、紅茶、ブレンド茶、トクホ製品などがあり、それぞれが明確にセグメントされています。日本ではそれぞれの製品が、ニーズやシチュエーションに応じて飲み分けられているのです。日本のコカ・コーラ社は、これらすべてのカテゴリーでブランドを展開しており、その代表的な製品が緑茶の「綾鷹」ブランドになります。

「欧米の消費者と比べ、日本の消費者は、お茶の味わいだけでなく、お茶が心や体にもたらす効能についてもより深く理解しています」(ヨウンス

年間で新製品100種投入!コカ・コーラ社社員、「日本の清涼飲料市場の特殊性と日本コカ・コーラの勝因」を解説する

また、コーヒー飲料も日本市場では大きな位置を占めています。たとえば、いまや容器入りコーヒー国内シェアNo.1ブランドとなった「ジョージア」も日本の消費者向けに開発されたブランドであり、独自の進化を遂げてきています。

容器入りコーヒーは、東京を中心にした急速な都市再開発が進み、公共交通機関の拡充と自動販売機の設置数が増えた1960年代に、爆発的に広まりました。朝早くから都心に通勤する男性にとって、容器入りコーヒーは文字通り“ホットな”製品。自動販売機が増えたおかげで消費者は好みに応じて、冷たいものも熱々のものも購入することができるようになりました。そのような背景が後押しをし、微糖のミルク入りコーヒーの『ジョージア』は、働く男性の朝食や休憩時のお供として定着していったのです」(ヨウンス

その後も、「ジョージア」ブランドは進化を続け、今では無糖、微糖、ミルク入りなど、大きく分けて4種類のスタイルやフレーバーで展開されています。

「日本の容器入りコーヒーの市場が50年にわたり遂げてきた進化は、非常に興味深いものがあります。190mlサイズの缶入りのコーヒーとして誕生した製品が、バリエーション豊かな一大カテゴリーへと進化してきたわけですから」とスタン・マーは語りました。

年間で新製品100種投入!コカ・コーラ社社員、「日本の清涼飲料市場の特殊性と日本コカ・コーラの勝因」を解説する

 

■少子高齢化に「トクホ飲料」が効く!?

茶系飲料、コーヒー飲料以外にも、いま、日本で急成長中の飲料カテゴリーがあります。それは、機能性や、健康価値を付加した製品=特定保健用食品(トクホ飲料)です。日本は現在世界で最も高齢化が進んでいる国であり、2015年の国勢調査では、総人口に占める65歳以上人口の割合が、26.7%にも上ることが明らかになっています。2010年からわずか5年間で3.7%上昇していることからも、急速に高齢化が進んでいることが分かります。老人福祉施設の入居者は169万人にまで膨れ上がっており、前回2012年に実施された国勢調査と比べても40%も増加しています。

「脂肪を減らす、血糖値を抑える、腸内環境を整えるなど、元気な体で年齢を重ねていくために役立つ飲料が、いま、求められています。高齢化社会に直面する中で、機能が付加または強化された飲料の人気が確実に高まってきています」(ヨウンス

そのような背景の中で開発されたトクホ飲料の一つが、「脂肪の吸収を抑える」「糖の吸収をおだやかにする」という、1本で二つの働きを備えた「からだすこやか茶W」というブレンド茶です。今年の3月には、「コカ・コーラ」ブランド初のトクホ製品「コカ・コーラ プラス」も導入されます。「コカ・コーラ プラス」には、食事から摂取した脂肪の吸収を抑え、食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする関与成分(特定の保健の目的に資する栄養成分)の難消化性デキストリン(食物繊維)が配合されています。そのほかにも日本では、1,000mgのビタミンCなどを配合した製品を、「アクエリアス」ブランドから発売しています。

年間で新製品100種投入!コカ・コーラ社社員、「日本の清涼飲料市場の特殊性と日本コカ・コーラの勝因」を解説する

以上、全世界のコカ・コーラ社の飲料市場における日本市場の位置づけと特色を、海外の目で分析し、記してきました。茶系飲料やコーヒー飲料、トクホ飲料が市場の中心にあること。どんなにおいしい製品であっても、消費者を惹きつけ続けるには絶え間ない“カイゼン”と差別化が求められること。さらには、生活シーンに合わせて清涼飲料を選択していること……これらはすべて、日本の消費者の当たり前であっても世界の消費者の当たり前ではない、ということが明らかになりました。

これからも日本のコカ・コーラ社は国内市場のトップランナーであり続けるために、日々製品の開発やイノベーションにチャレンジしていきます。2017年は、いったいどのような製品が登場するのか、日本の皆さん、これからも、日本での製品展開を楽しみにしていてください!

*1 10億ドルブランド:ザ コカ・コーラ カンパニーの製品ポートフォリオにおいて、売上高が10億ドルを超えるブランド。2017年2月時点で、全世界で21の10億ドルブランドが存在する。
*2 コカ・コーラシステム日本コカ・コーラと、全国のボトリング会社および関連会社で構成されるシステムのこと。