文=テッド・ライアンザ コカ・コーラ カンパニー ヘリテージコミュニケーション部門)

広告は、社会を映す鏡。そこで表現されていることは、しばしばその時代、その時代の社会の状況を色濃く反映しています。私はよく、「『コカ・コーラ』の広告を教材に使って、アメリカの20世紀史の講義ができますよ」と話していますが、決して冗談ではありません。

今回は、コカ・コーラ社が20世紀後半から21世紀にかけて発表した広告の中から、特に、社会的なメッセージが強く打ち出されているものをご紹介します。誰もが自分らしく生きられる、平和で寛容な世界へ……。不透明さの増す時代だからこそ、コカ・コーラ社の変わらない願いが込められた作品の数々を、あらためて振り返る意義があるのではないかと感じています。

 

■「ボーイズ・オン・ア・ベンチ」:人種を超えた友情が当たり前の社会へ

ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)が1969年から展開した広告キャンペーンでは、「It’s the real thing」(それは本物だ)のスローガンと共に、「コカ・コーラ」を楽しむ人々のリアルな生活が描かれました。印象的な写真が数多くある中で、特に注目を集めたのが、「ボーイズ・オン・ア・ベンチ」と呼ばれる1枚。そこには、アフリカ系アメリカ人と白人の少年たちが一緒に公園のベンチに座り、「コカ・コーラ」を飲みながら笑い合う光景が写っていました。

この写真が伝えようとしていることを理解するためには、当時のアメリカの社会情勢を知る必要があります。写真中央の二人の少年の間に見える銀色の手すりは、実は白人と黒人の座る場所を隔てる目的で設けられたもの。当時はこのような公的な場においても、人種差別政策の痕跡がまだ根強く残っていて、その撤廃に向けた激しい抗議運動が全米で展開されていました。1968年には、公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺され、白人と黒人の間の緊張は極めて高い状態にあったのです。

一方、「コカ・コーラ」の広告の中では、肌の色の違いなど存在しないかのように、少年たちが共に「コカ・コーラ」を楽しむ様子が、ごく自然な光景として描かれています。そのような光景が必ずしも当たり前ではなかったからこそ、この写真は、人種差別という深刻な社会問題に対するザ コカ・コーラ カンパニーの姿勢を、世間に知らしめる役割を果たしたのです。

 

■「ヒルトップ」:不安が蔓延する時代に響いた希望のメッセージ

2年後の1971年、ザ コカ・コーラ カンパニーは CM「Hilltop」を放映しました。イタリアにある丘の上にさまざまな人種や国籍の若者が集まり、オリジナルCMソング「I’d Like to Buy the World a Coke」を合唱するこのCMは、広告史上に残る名作としてよく知られています。

動画: 1971年のCM「Hilltop」

 

このCMが放映された当時、世界情勢は決して平穏と呼べるものではありませんでした。ベトナム戦争は泥沼化し、社会には不安感が蔓延、世代間の対立や大学紛争が世界中に広がっていたのです。楽観主義とさわやかさの象徴であり、人々をつなぐ役割をも果たす「コカ・コーラ」という製品だからこそ、平和な世界の実現を願うこのCMのメッセージは、視聴者の心に力強く響いたのでしょう。

 

■「ミーン・ジョー」:対照的な二人の心温まる交流

1979年にザ コカ・コーラ カンパニーは、アメリカンフットボールのスター選手ジョー・グリーンをCMに起用しました。攻撃的な戦法と大柄でいかつい風貌から「ミーン(意地悪な、おっかない)・ジョー」と呼ばれたグリーン選手と、小柄な少年の心温まる交流が話題になったCMでした。ストーリーは、このような内容です。よろめきながらフィールドを立ち去るグリーンを小柄な少年が追いかけ、手に持った「コカ・コーラ」を渡そうとします。グリーンは、初めは戸惑いつつも、「コカ・コーラ」ボトルを受け取って一息に飲み干すと、満面の笑みを浮かべます。一方の少年は、相手にしてもらえなかったのだと勘違いして、とぼとぼとその場を立ち去ります。グリーンはそんな少年を呼び止め、「そら、受け取れ!」とジャージーを投げてよこす──。

動画:ジョー・グリーン、CM「ミーン・ジョー」の舞台裏を語る

グリーンの強面とやさしさのギャップが視聴者の心をわしづかみにしたわけですが、その核となっているのは、立場や人種などが異なる者同士の緊張関係が解ける瞬間ではないでしょうか。アフリカ系アメリカ人のスポーツ選手とひ弱そうな白人少年という対照的な二人が向き合うストーリーは、肌の色の違いを超えて心を通じ合わせることの素晴らしさを伝え、見る者を温かい気持ちにさせるのです。

 

■「ビデオゲーム」:主人公のアクションが起こす幸せの連鎖

平和、平等、多様性…… 「コカ・コーラ」広告が伝えてきた社会へのメッセージ

2007年のCM「ビデオゲーム」は、なんともユーモラスな方法で、コカ・コーラ社らしいメッセージを伝えました。実は、アニメのキャラクターが活躍するこのCMは、プレイヤーがギャング団の一員となり、犯罪を犯していく人気ゲームソフト「Grand Theft Auto」のパロディ。主人公の男性が街中を歩きながらさまざまなハプニングを巻き起こしていきます。ただし、CMの彼は人を助けたり喜ばせたりする“良いハプニング”を起こしているという点が実際のゲームとは異なっているポイント。泥棒にひったくられたバッグを奪い返して被害者の女性に渡したり、呼び止めた車の運転手と「コカ・コーラ」のコンツアーボトルで乾杯したり。このCMは、一人ひとりが人のために行動をしていくことが、世界を良くする可能性があるということを、さりげなく伝えているのです。

 

■「スモール・ワールド・マシン」:対立する国の人々をつないだ自動販売機

2013年、ザ コカ・コーラ カンパニーは、インドとパキスタンの人々がそれぞれの国でリアルタイムに体験を共有する機会を提供しました。そのツールとして使用されたのは、最新の3Dタッチスクリーン技術を取り入れた自動販売機。この自動販売機は「スモール・ワールド・マシン」と名づけられ、パキスタンのラホールとインドのニューデリーにある大型ショッピングモールに1台ずつ設置され、両国民のコミュニケーションの仲介者的役割を果たしました。両国の人々は、自動販売機のスクリーン越しにハイタッチをしたり、一緒にピースマークを描いたり、踊ったり。そして最後には、「コカ・コーラ」を味わうひとときを分かち合ったのです。

動画:「スモール・ワールド・マシン」

ラホールとニューデリーは、物理的には500キロほどしか離れていませんが、数十年に渡る政治的対立のために、心理的な距離はそれよりもはるかに大きなものとなっています。ザ コカ・コーラ カンパニーは、そうした心理的な距離を忘れて楽しみを分かち合う、貴重なひとときを提供したのです。

 

■「プール・ボーイ」:多様な愛の形

最後に、2017年夏の「Taste the Feeling」キャンペーンから、軽いタッチのCMをご紹介しましょう。真夏のある日、兄と妹が窓の外を眺めると、家のプールの掃除をしにやって来た素敵な青年の姿が目に入ります。キンキンに冷えた「コカ・コーラ」を手渡して彼のハートを射止めようと考えた二人は、我先にと冷蔵庫へ向かい、「コカ・コーラ」を手に外へ駆け出します。しかし、時すでに遅し。そこで彼らが目にしたものは……?驚きの結末は、ぜひ下の映像でご確認ください。

動画:CM「プール・ボーイ」

親しみやすく情熱的なストーリーの中に、多様な価値観(ダイバーシティ)の重要性をさりげなく盛り込んだ今年の作品も、これまでの「コカ・コーラ」広告のDNAを引き継いでいます。ザ コカ・コーラ カンパニーは過去131年にわたり一貫して、楽観的価値観やコミュニティーとの共生、多様性を大切にする姿勢を伝える広告づくりを続けてきたのです。

以上、コカ・コーラ社の名作を6本ご紹介しました。
コカ・コーラ社はこれからも、
人々の記憶に残る作品を作り続けていきます。楽しみにしていてください。