■日に日に元気になる息子の姿に想うこと

 とはいえ簡単なことではない。搾乳は昼夜関係なく3時間おきにしなければならない。それを凍らせる作業もある。目の前の課題はいくつもあったが、裕子さんは何としても颯樹くんを元気にしてあげたかった。そんな時にちょうど、東大病院の産科の看護師が東大ハウスの存在を教えてくれた。

「産科を退院したその足で夫とハウスを見学したのです。どの部屋も木の温もりと清潔感があってすぐに気に入りました。さらにボランティアのスタッフさんたちがとても親切でホスピタリティーに溢れていて、利用料金が1日1,000円というのが信じられないほどでした。施設の明るい雰囲気と、滞在に必要なものが何でも揃っていることに安心感を覚え、こちらを利用することにしました」

今日も“第二のわが家”は、病気の子どもをもつ家族たちをサポートする……
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が救う小さな命

東大ハウス」利用者の松平裕子さん
温かなスタッフに囲まれ、笑顔が絶えない


今日も“第二のわが家”は、病気の子どもをもつ家族たちをサポートする……
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が救う小さな命

東大ハウス」のマネージャーの弘中信治さん
アパレル業界から「東大ハウス」へ転身した


今日も“第二のわが家”は、病気の子どもをもつ家族たちをサポートする……
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が救う小さな命

東大ハウス」ボランティアの
松崎佳子さん(左)と飯野リセットさん(右)。
東大ハウス」には、近隣住民や東大生など
200人以上のボランティアが登録されているという


 東大ハウスから颯樹くんの入院する部屋までは、歩いて5分ほどの距離。凍らせた母乳を持っていけたのはもちろん、昼と夕方の面会時間内にいつでも会いに行けた。

「ハウスの自分の部屋で搾乳すると、冷蔵庫で凍らせるために共同キッチンのある4階に上がっていくのです。そこで初めて会う方に『お子さんNICUにいるの?』と言われて、なんで分かるのかと吃驚しました。みなさん“NICU卒業生”のお母さんたちだったのです。『夜の搾乳は眠いよね。お昼もよく寝た方が良いよ』『がんばらなくて大丈夫』『子どもはいるだけで100点』と、何かある度に声をかけてもらって緊張がほぐれました。東大ハウスのママ友は、同じ悩みを肌で分かり合える同士。この場所でなければ、なかなか出会えなかったと思います」

 先輩ママに助けられながら必死に毎日過ごすうち、颯樹くんの体調はだんだんと良くなってきた。最初は胃にチューブを入れて5ミリリットルの母乳を消化するのがやっとだったのが、心臓の手術を経て哺乳瓶から50ミリリットルまで飲めるようになった。

「呼吸が整いミルクを口から飲めるようになった颯樹を見た時は、こんなに成長してくれたのか、と感慨深いものがありました。赤ちゃんとの日々は発見の連続です。これから先何が起こるかは分かりませんが、たくさんの方に支えてもらった大事な体です。だから私は、今の颯樹とその時その時を精一杯楽しもう、と思っています」