■全米のジャーナリストが注目していた偉大なる社長

飲料業界やマーケティングの歴史に詳しい読者であれば、1981年から93年にかけてザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)の社長を務めたドナルド・キーオの名前はご存知でしょう。彼は比類なき指導力を発揮して同社に空前の成長をもたらし、2015年2月24日に88歳の長寿を全うしました。

キーオの訃報を受けて、米国の飲料業界誌『Beverage Digest』のジョン・シシャー編集長は、次のように綴っています。

「もし、あなたが幸運な人生を送ることができたなら、一生のうちに一人か二人の偉大な人物と知り合うことができるでしょう。私にとってドナルド・キーオは、まさにその偉大な人物でした」

他にも無数のジャーナリストが、彼の優れたビジネスセンスと飽くなき知的好奇心、そして周囲の人間に刺激を与え続けた天賦のコミュニケーション力を称えました。

『Coca-Cola Journey』では、そんなキーオの生前のスピーチやインタビュー、著書の中から12の名言を選びました。これらの中に、これからのあなたの仕事と人生の指針となる言葉が見つかるかもしれません。

■運、信念、リーダーシップ……あなたの心に響く言葉はどれ?

「私は、世の中には運というものが存在することを学んできました。そして、運には良い運と悪い運があるということも学びました。さらには、運を受け入れる準備の大切さも学んできました。なぜなら、幸運は、準備ができている人に訪れる傾向があるからです」

「間違いを犯さないことばかり心がけていると、大したことは成し遂げられずに、一生を終えることになるでしょう。一方で、私は説明責任の大切さも学んできました。自分の行動に対して説明責任を果たせない人間に、ビジネスリーダーを任せることはできません。人間ですから、誰だって間違いは犯します。他人に常に完璧であることを求めることはできません。しかし、リーダー的立場にある人間は、間違いを犯した場合には、きちんと説明責任を果たし、間違いを正すために行動することが求められるのです」

「物事が順調に運んでいるときは、リスクを回避したいという強い誘惑にさらされるものです。しかし、その誘惑に抗えないときというのは、失敗がほぼ不可避となるときでもあります」

「ビジネスとは、リーダーの人格の産物であり、人格の延長です。いわば、経営者の引き延ばされた影なのです」

「一部の批評家は、ザ コカ・コーラ カンパニーがマーケティングに失敗したと言うでしょう。シニカルな見方をする人は、すべては当社が仕組んだことだと言うでしょう。真実は、我々はそこまで馬鹿ではないし、そこまで賢くもない、ということです」(1985年に発売した『ニュー・コーク』に対する消費者の抗議運動を受け、元の『コカ・コーラ』に戻すことを発表した記者会見の場で)

「人がどれだけ目的を達成できるかは、どれだけ周囲に助けを求められるかに正比例します」

「長年ビジネスに携わってきて、身にしみて分かった教訓が一つあります。自分の仕事に信念を持っていれば、人ができることに限界などない、ということです」

登壇するドナルド・キーオ


「ビジネス倫理などというものはありません。あるのは倫理だけです。ビジネスにおいて必要な倫理は、人生を通じて必要な倫理と切り離せるようなものではないのです」

「人は、自分が成し遂げたことばかりに目を向けてしまいがちです。そんなときは、“川辺”に立ってみましょう。眺めている川の流れは、一瞬たりとも同じ水ではないことに気がつくはずです。見るべき場所は唯一、未来のある上流です。できる限り上流まで見ようとしなければなりません」

「ザ コカ・コーラ カンパニーの社長としての自分の役割を、私はとてもシンプルに定義しています。会社の商標を守り続けること、そして、強くし続けることです」

「人の脳はスポンジのようなもの。乾きっぱなしにしていると、だんだんぼろぼろになってくるのです。アウトプットを生み出すためには、常に刺激を得て、インプットし続ける必要があります」

「あなたが達成感のある人生、充実感を得られる人生を送りたいと思っているのに、そのために必要な一つの材料が人生のレシピから欠けていたら、何をしても意味がありません。その不可欠な材料とは“熱意”です。あなたがやることに対する熱意。友人や家族に対する熱意。そして生きることに対する熱意です」

[日本版編集部より]

今回、キーオが残した言葉の数々に触れたことは、私たちにとっても新たな発見の連続でした。ここにご紹介した12の名言から分かるのは、彼が常にリスクを取ってでも前を向いてチャレンジをし続けてきたということと、リーダーとしての役割と一人の人間としての役割をきちんと自覚し、行動で表してきたということ。私たち自身、心に響いたキーオの言葉を行動に移していこうとの思いを新たにしているところです。