いい水とは何か、いい川とは何か──。
それらの問いに向き合い続けるために始まった事業がある。
その事業とは、 北海道コカ・コーラボトリングなどが進める「北海道e-水(イーミズ)プロジェクト」。水の環境保全活動を支援するために始まったものだ。
一滴の水がやがて大きな河となるように、
一つのゴミを拾う、一本の缶コーヒーを飲むといった小さな行動が、
水環境を再生させようとしている。

環境月間である6月に合わせた、
Coca-Cola Journey』特別コンテンツの第2弾です。

文=香川誠
写真=村上悦子

 

■子どもの頃に見ていた夕張川を取り戻したい

「明日だぞ──」
 水槽の中を泳ぐサケ・マスの稚魚に餌をやりながら、思いを込めるようにつぶやく。明日は、この4ヵ月間手塩にかけて育てた“子どもたち”の旅立ちの日だ。しかし、育ての親である彼の役割はそこで終わりではない。大海を旅したサケ・マスがふるさとの夕張川に戻ってくるその日のために、この川の“いい水”を守っていかなくてはならない。

 

放流するサケの稚魚は体長6、7cm程度(写真上)
稚魚に餌をやる高橋慎さん
栗山町ふるさといきものの里ふれあいプラザにて(写真下)

 北海道夕張郡栗山町で環境保全活動を続ける夕張川自然再生協議会会長の高橋慎(まこと)さんは、協議会発足前の10年ほど前から、「かつての夕張川を取り戻したい」と、地元の団体とともにサケ・マスの放流を行っている。

「私が子どもの頃の夕張川は『黒い川』でした。産炭地である上流で石炭を洗った水を流していたためです。それでも、汚れていない自然のままの支流では、カニやエビを見つけることもありました」(高橋さん

 石炭から石油へのエネルギー転換が起こると、上流の炭鉱は次々に閉山し、夕張川の水質も徐々に回復していった。しかし、高橋さんは、それで川の姿が元に戻ったとは思わなかった。この数十年で、川は人の手によって大きく様変わりしていたのだ。

「水流をコントロールするため設置しているコンクリートブロックが、人間にとっては意味のあるものでも、魚にとっては障害物になっていることがあります。魚は山の栄養を海に運び、海の栄養を山に運んでくれますが、そこで魚道が分断されると魚が川を遡上できずに生態系が崩れてしまいます。実際に、栗山町ではサケ・マスの姿が見られなくなってしまった。川は多くの地域にまたがっているので、私たちの地域だけで活動をしてもこの循環を守ることはできません。上流地域から下流地域まで、各環境団体や国、道、市町村がそれぞれの枠を越えて連携して初めて、一つの川を守ることができるのです」(高橋さん

 他団体や自治体との連携を強めたいと考えていたときに浮かんだのが、「北海道e-水(イーミズ)プロジェクト」への応募だった。

 

■「ジョージア」を飲むことが環境保全につながる

 およそ2,000もの河川があり、ラムサール条約(*)に登録された湿地が13ヵ所もある北海道は、まさに「水の王国」だ。道内各地には、まだ人の手が加えられていない自然の水辺が多く残されている。しかし人々の暮らしに近い地域では、水質の低下、魚道の分断、外来生物による生態系への悪影響、ごみの不法投棄などの問題がある。

 前出の北海道e-水プロジェクトは、そんな北海道の水環境を守るために生まれた、北海道と公益財団法人北海道環境財団、北海道コカ・コーラボトリングの三者による協働プロジェクトだ。河川環境の保全活動、水質調査、植樹活動、学習会などに取り組む団体を支援しているほか、環境フォーラムの開催などの啓発活動も行っている。

 北海道コカ・コーラボトリングの小野浩嗣さんは、その発足経緯について次のように説明する。

「北海道の環境保全に役立ててもらおうと、2008年からの2年間、缶コーヒー『ジョージア サントスプレミアム』北海道限定デザインの売り上げの一部を北海道に寄付していました。当時はそこまでで終わっていましたが、ただ寄付をするだけでなく自分たちも参加できる何か具体的な取り組みにつなげられないかと北海道の環境政策課に相談したところ、環境保全活動に取り組む団体を支援する北海道環境財団を紹介してもらいました。それがきっかけで三者による北海道e-水プロジェクトが発足したのです」

北海道コカ・コーラボトリング広報・CSR推進部の小野浩嗣さん(写真上)
取材を行った「雨煙別小学校 コカ・コーラ環境ハウス」(写真下)

 北海道コカ・コーラボトリングが『ジョージア サントスプレミアム』の売り上げ金の一部を北海道環境財団に寄付し、財団が事業窓口となって支援団体の募集などを行う。北海道はホームページなどを通じて実際に行われた環境保全活動を広く紹介する。三者がそれぞれの役割を担い、互いに連携しながら進められているのがこの北海道e-水プロジェクトだ。その累計寄付額は、2016年に1億円を突破した。

「企業としては、製品を売ることも、地域の環境保全に貢献することも大切です。『ジョージア サントスプレミアム』の売り上げの一部が寄付されていることをまだ知らない人も多いので、この製品を1本飲むことが環境保全活動の支援につながっているということをもっと広めていきたいですね」(小野さん

北海道の環境を守るあなたの1本、「ジョージア サントスプレミアム」北海道限定デザイン。
パッケージの絵柄は「大沼」「釧路湿原」「大雪山」「十勝平野」の4種類

 これまでに支援した団体は延べ83団体。北海道環境財団の協働推進課長・内山到さんは、これまでの取り組みをこう総括する。

「プロジェクトが毎年継続していることで、一過性ではない取り組み、一つの団体では対応できない取り組みを実現させることができました。いくつかの団体がまとまるには何か大きなプロジェクトが必要なので、その役に立てたのではないか思います」

 一つの団体でできることは限られているが、団体同士が連携することにより、毎年のように新たな取り組みが始まっているという。

* ラムサール条約:正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。渡り鳥などの水鳥の生息地として重要な湿地の保護を目的に、1971年にイランのラムサールで採択された国際条約。

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