■ 南アは、日本の非炭酸飲料の製品群をはじめとする製品開発力などのイノベーションを学ぶべし!

Ramonaさんは2016年8月に来日した。取材時は来日から2ヵ月しかたっていなかったものの、すでに日本の古代文化と素晴らしい食文化に魅了されていた。

「みんな本当に親切です。道に迷い、日本語が分からなくて困っていると、自分の行き先をわざわざ変更して私の行きたいところに連れて行ってくれます。常に自分の行動が他人に与える影響を考えるという姿勢は素晴らしいと思います。

日本人は内気な人が多いので、私は気さくな感じを心がけ、自分から話しかけるようにしています。とはいえ、日本のおもてなしの心には本当に感動しました。チームのみなさんは、私を歓迎してくれて、チームになじめるよう色々なことをしてくれました。それだけでなく、日本の有名な場所やイベントへも案内してくれました。

日本と南アフリカは、似ている面もあれば、全く違う面もあります。全く日本の慣習に触れたことのない外国人の目から見ると、最初は堅苦しく時間の無駄だと思えるような慣行もあります。こうした慣行はただの優柔不断さがもたらした当たり障りのない妥協のように見えるかもしれません。ですが、しばらくすると、計画どおりに実行すれば、そうしたやり方は優れた成果をもたらすことが分かりました。

文化や、その文化が生まれた背景を学んでみて、とても面白いと感じました。『本音と建前』『飲みニケ―ション』『根回し』といった考え方のほか、特に気に入っているのが『カイゼン(*生産性の向上と無駄の低減のために改善を積み重ねていくこと。仕事にもプライベートにも応用できる)』です」

Ramonaさんは日本の歴史と文化が大好き。
こちらは、鎌倉を旅行したときの1コマ

麻布十番祭りの様子。早々に日本コカ・コーラ社員とも打ち解けたRamonaさん

 

日本の生活環境がすっかり気に入ったRamonaさんは、生活者として日本に順応する一方で、マーケッターとしては、コカ・コーラ社製品を販売する「日本市場」から次のような気づきを得ていた。

「南アフリカの清涼飲料市場におけるコカ・コーラ社の炭酸飲料のシェアは83%にのぼり、誰もが『コカ・コーラ』を飲んでいます。しかし日本の市場では、非炭酸飲料が優勢です。『コカ・コーラ』は現在、南アフリカで圧倒的な市場シェアを誇っていますが、将来的なシェアの成長には限界があります。日本では1985年に30%だった非炭酸飲料のシェアが、現在では72%になっています。私たちもこうしたケーススタディを自国市場に活かしていくことができるはずです」

南アフリカのスーパーマケットの飲料売り場

 

Ramonaさんは、日本で流通大手の2つのプロジェクトに参加している。「アイスコールド コカ・コーラ」(*)プロジェクトと、市場展開戦略に沿った2つの限定製品の開発と製品化に関するプロジェクトで、チームメンバーがプロジェクトに参加しやすい環境を整えてくれた。日本の清涼飲料市場を知れば知るほど、次々と新製品を生み出す日本のイノベーション力には驚かされたと語っている(日本では1年間に1,000種類の新しい清涼飲料が発売されるが、残るのは2種類か3種類)。

それら次々と開発される清涼飲料の中にあって、彼女が興味を持ったのは、トクホ(特定保健用食品)やホットの飲料だ。

「南アフリカは近年、肥満や生活習慣病が社会問題化しています。それだけに日本の非炭酸飲料の製品開発に関する知見から、私たちが学べることは多いはず。今はトクホもホット飲料も、南アフリカにはないカテゴリーです。しかし、そこにこそ市場を広げるチャンスがある。アフリカの清涼飲料市場のリーディングカンパニーとして、南アフリカコカ・コーラが誰よりも先に取り組むべきだと思うのです」
さらにRamonaさんは、日本の自動販売機ビジネスから学ぶものは大きいと考えている。

*「アイスコールド コカ・コーラ」:チャネル限定、エリア限定で展開された、「マイナス4℃」という、液体が凍りつく一歩手前までギリギリに冷やし た「コカ・コーラ」のこと。

日本コカ・コーラ社員との記念撮影。日本コカ・コーラオフィスにて

■社員交換制度利用者だから学べた「大切なこと」

Ramonaさんは、新しいビジネスの着想を得て、「日本という美しい国とその文化に対する深い称賛の気持ち」を抱いたと話している。一方、高木さんも南アフリカから大きな影響を受けたと語り、南アフリカを「自分にとって特別な場所」と語っている。

コカ・コーラ社が圧倒的なシェアを持つマーケットで仕事ができたことによる、ブランド担当者としての多くの学びがありました。さらに自分にとっては、コカ・コーラ社の地域社会に対する働きかけが、人々の生活を実際に変えていく様子を目の当たりにしたことで、企業の社会貢献に対する考え方が変わったことも大きな収穫ですね。

アフリカでは、コカ・コーラ社が『ラストマイル・プロジェクト』という活動を行っています。これは地域の隅々にまで『コカ・コーラ』を行き渡らせる物流網を構築するノウハウを利用して、医療インフラが整っていない地域の人々に医薬品を届けるプロジェクトです。

南アフリカで生活している中で肌で感じた、貧困や社会的な問題。これらの問題を、遠い世界の話ではなく、自分の住む社会におけるリアルな課題としてみんなで向き合い、ビジネスとつなげながら課題を解決していました。私たちの仕事が、少しずつでも社会のハッピーに貢献できていることを誇りに思いましたし、日本でも、世界の国々が抱えている課題を“自分ゴト”として、みんなで向き合う企業・コミュニティーを目指せたらいいなと思っています」

 

さまざまな異国文化を学び、ビジネスの気づきも得た高木さんとRamonaさん。この取材の最後に「人間が成長するために、最も必要なことは何か?」と2人に問うたところ、意外なほどシンプルな答えが返ってきた。それは、「外へ飛び出すこと、異文化と触れあうことを恐れないこと」(高木さん)だと言う。

コカ・コーラ社はグローバルカンパニーであることもあり、業務で使うシステムは各国共通で、英語が話せさえすれば、どこの国でもすぐに仕事ができるようになっています。だから、どこでどう働くかは自分の選択次第。私はもともと、海外で働くなんて考えたことがありませんでしたが、世界中に親友になれる素晴らしい人たちがいるということ、世界は新しい驚きに満ちているということを実感した今は、自分を成長させるためにも、どんどんコンフォートゾーンから出ていこうと考えています」

Ramonaさんが続けて語る。

「南アフリカでは、キャリア目標、専門領域、自身の強みを一致させることが原則でした。異文化の中に身を置き、経験を積むことで、視野が広がります。異文化に溶け込むには、さまざまな考え方があることを考慮し、感覚を研ぎ澄ませて物事を多面的に捉える必要があります。これは、同じ意見を持ち同じ行動をとることを推奨するということではなく、状況に応じた適切な判断の下、立ち振る舞うということです。そうすれば、どちらの文化にも適応できます。ですから、みなさんにも異文化の研修やプログラムに参加されることをお勧めします。

私が尊敬している人物の言葉で、『私は1人だが1万人を代表している(I came as I but as 10,000)』というものがあります。私も、今回、多くの人々の代表としてこうした機会に恵まれたことに感謝しています。この経験を通じて、私という存在は、母、妻、従業員、コミュニティーのリーダー、ヨガのインストラクターといった多面的な役割から形成されているということを改めて確信しました」

井の中の蛙にならずに外部の人にも胸襟を開くこと。それが、人間の器を大きくさせる近道。人生の真理は、昔も今も、日本も南アフリカも、変わらないようだ。

 

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