クリスマスの楽しみ方。ピーター・バラカンさんの場合

最後にお話を聞いたのは、今回登場した方々のなかで日本在住歴がもっとも長いピーター・バラカンさん。
彼が日本で仕事を始めたのは、1974年のことでした。その頃はまだ、日本でもクリスマスを祝う文化が定着していなかったといいます。それはイギリス出身のバラカンさんにとって、少し寂しいことでもありました。
「当時勤務していた会社の人が気を遣って、クリスマスランチをやっている珍しいレストランに連れて行ってくれたんです。そうしたら、薄く切ったターキーが2枚だけマッシュポテト添えで出てきてね。『これが日本のクリスマスか』って思いましたよ(笑)。それが今みたいにショーアップされるようになったのは、バブル経済(1980年代)の頃からですよね」
How to enjoy Christmas in Japan
日本通の外国人4人に聞きました!
「日本のクリスマスの楽しみ方、教えてください」
ピーター・バラカンさん

「それが今では、東京で暮らしていればいろんな国のクリスマスディナーが食べられ、自宅で料理をする分にも食材が手に入らなくて困るなんてこともない。前はクリスマスプディングなんて、イギリスにいる母から『日本に送ろうか?』なんて言われていたくらい手に入らなかった。そういう意味では、時代は変わりました。でも相変わらず、『これは本当のクリスマスとは違うんだけどなあ……』という違和感は抱き続けていますね」

どこも店は開いてないから家で過ごすんです

今でこそイギリスでもクリスマスに働く人はいますが、バラカンさんが子供の頃は、クリスマスといえば鉄道やバスなど公共交通機関ですら止まっていたほどの国民的休日だったとか。
「店がどこも空いていないから、そもそも行くところなんてないんですよ。それぞれの家庭で料理をつくって、お酒を飲みながらゆっくりと食事をする。それが伝統的なクリスマスの過ごし方なんです。だから多くの日本在住の外国人の方と同じように、クリスマスには僕も友人を呼んでホームパーティーをしますよ」

クリスマスだからこそ、音楽を楽しみたい

ラジオDJとしてお馴染みのバラカンさんは、この季節になるとクリスマスソングを選曲することが多くなります。ただ、どこでも耳にするコマーシャルソングではなく、世界中の音楽に詳しいバラカンさんだからこその選曲を電波にのせて届けています。
「一番好きなクリスマスアルバムは、フィル・スペクターの『A Christmas Gift to You From Phil Spector』ですね。レコード・プロデューサーの彼が1963年に発表したクリスマスの曲だけを集めた傑作です。有名な『White Christmas』も彼らしい都会的な編曲になっていて、今聴いても古さを感じない。あとはジェイムズ・ブラウンJ.B)の『Funky Christmas』。しっかりクリスマスソングなんだけど、歌詞がJ.Bらしく皮肉が効いていて、聴けば聴くほど面白い。特に好きな曲はこのアルバムに収録された『Santa Claus Go Straight to the Ghetto』。翻訳すると、『サンタクロースは金持ちの家じゃなく、ゲットー(貧困地域)に直行しろ!』という意味。アフリカン・アメリカンのヒーローだったJ.Bらしいクリスマスソングです」

スキー場のクリスマスが面白いかも

最後にバカランさんに聞いてみました。もしも外国の友人が日本で一緒にクリスマスを過ごそうと言ってきたらどこに連れて行きますか? と。
「基本はホームパーティーなんですけど、強いてあげるならスキーかな? 欧州ではスキー=お金持ちの遊びという認識なんだけど、日本では庶民が楽しんでいるし、費用もリーズナブル。だから、スキー場でなら、日本ならではのクリスマスになるかもしれない」
以上、ここまで、5人の日本通の外国人のみなさんに話を伺ってきました。バラカンさんのお話にもあったように、日本で現在のようなクリスマスが定着したのはここ30年ほどのことです。まだまだ日本では新しい文化なだけに、外国人から見ればちょっと変だったり、間違った解釈をしている部分が多いのは事実。そもそも、海外ではクリスマス・イブ(12月24日)を祝う習慣はなく、大切なのは25日ですから。
しかし、それを日本独自の文化として考えれば、こんなユニークな1日もないはずです。読者の方は外国人に、日本のクリスマスのどんなところをオススメしますか?
How to enjoy Christmas in Japan
日本通の外国人4人に聞きました!
「日本のクリスマスの楽しみ方、教えてください」

<プロフィール>
ピーター・バラカン/1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科を卒業後、74年に来日。音楽出版社勤務を経て、現在はフリーのブロードキャスターとしてテレビやラジオに数多くのレギュラー番組を持つ。著書に『ラジオのこちら側で』(岩波新書)、『ピーター・バラカンのわが青春のサウンドトラック』(光文社知恵の森新書)など。