「世界は誰かの仕事でできている。」
このコピーに見覚えのある方は多いことでしょう。
これは、山田孝之さんが何タイプもの“ひたむきに働く男たち”役で出演する
ジョージア」ブランドのキャンペーンタグラインとキーメッセージです。
2014年から始まったこの名作キャンペーンは、
多くの消費者の心をわしづかみにしてきましたが、いったい、なぜ、
これほど多くの支持を得ることができたのでしょうか。
そして、このヒットシリーズは、どのような経緯でつくられたものなのでしょう?
ジョージア」のコミュニケーションを統括する
日本コカ・コーラ社のアンキット・チョータイさんと
クリエイティブを手がける電通浜島達也さんに、
過去のシリーズ作品制作の舞台裏と、10月30日から放映している
山田孝之さんと新井浩文さん共演の新CMの見どころについてお話を聞きました。

文=高島知子
写真=村上悦子

 

■「ジョージア」を“顔”が浮かぶブランドに

──「ジョージア」のキャンペーン「世界は誰かの仕事でできている。」は、新しいCMが放映されるたびにTwitterなどで話題に上り、CM好感度調査の結果からも、消費者の熱い支持を受けていることが分かります。このシリーズは2014年に始まったそうですが、キャンペーンをリニューアルした背景をうかがえますか?

チョータイ 2014年当時、缶コーヒー市場の規模そのものはすでに非常に大きくなっていました。その一方で、成熟した市場になりつつありました。2000年頃までは、それこそ「缶コーヒーといえば『ジョージア』」と言ってもおかしくありませんでしたが、2000年を過ぎた頃から競争が激しくなってきました。それは単純に他の缶コーヒーブランドとの競争だけではなく、サードウェーブコーヒーに代表されるコーヒー専門店が増えたり、コンビニエンスストアで購入できるカウンターコーヒーが急速に普及したりしたことで、消費者の選択肢が増え、コーヒー市場自体の競争も激化していたのです。

そのような環境の中で、「ジョージア」はこれまで数多くのキャンペーンを展開してきましたが、その反面“『ジョージア』の顔”というものが次第に見えにくくなっていたことも課題として浮かび上がってきました。その課題を解決するためには、「ジョージア」の明確なイメージを構築する必要がありました。そこで、浜島さんチームに加わってもらうことにしたのです。

日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 IMC
コンテント エクセレンス シニアマネジャー
アンキット・チョータイさん

 

──具体的に、どんなオリエンテーションをしたのですか?

チョータイ 当時も売り上げ本数No.1缶コーヒーではありましたが、「『ジョージア』ブランドを真のNo.1缶コーヒーブランドにすること」を、キャンペーンのミッションとして提示しました。単にシェアや売り上げがNo.1という意味ではなく、「ジョージア」が誕生当初から応援している“働く人たち”が缶コーヒーを飲みたいと思ったときに、心の中に「ジョージア」の顔がしっかり見えるようなブランドになることが重要でした。そのためには、ただ広告を変えるだけでは難しい。「ジョージア」ブランドの存在価値を見つめなおす必要がありました。

 

■「ジョージア」の存在意義=働く人を応援する

──浜島さんはオリエンを受けて、まず何から考えていったのでしょうか?

浜島 「真のNo.1ブランドにする」というのは、とてもシンプルですが、そこにはものすごく力強い意志があると感じたのをよく覚えています。それに応えるためにも、日本コカ・コーラさんを交えてしっかりとチームをつくって、改めてブランドのコアバリューを見出していこうと思いました。実際に考える上で手がかりにしたのは、アメリカのマーケティング・コンサルタント、サイモン・シネック氏の「Golden Circle」という考え方です。これは企業やブランド、優れたリーダーが周囲を動かすときに使用する考え方のフレームで、「なぜ存在するのか、理念は何なのか」という「WHY」を起点に、「HOW:それをどのように表すか」「WHAT:何をもって解決するか」という順番で、ものごとを考えていきます。

株式会社電通 プロモーション・デザイン局 統合ディレクション室 部長
チーフ・クリエーティブ・ディレクター
浜島達也さん

 

──「ジョージア」の場合、どうなるのでしょうか?

浜島 まず、「WHY」については、「『ジョージア』はなぜ、人々に支持されてきたのか」ということを徹底的に考えました。それはつまり「『ジョージア』の存在価値」を見つけることでもありました。私たちは、日々話し合いを進め、その結果、「ジョージア」のコアバリューは「働く人を応援すること」にあると分かったのです。

次に「HOW」です。これまでは「厳選された希少な最高級の豆」という機能的な価値を重視していましたが、ここに情緒的な価値も加えよう、と。それが「頑張る汗を賛美し、一人ひとりを見つめ、側にいる」という姿勢です。働く人の頑張る汗を賛美する缶コーヒーとして「おいしいだけじゃない、もっと働く人に寄り添う姿勢を整える」という方針が固まり、それを表現したのが「世界は誰かの仕事でできている。」というタグラインと、いろいろな職業の人がずらっと並ぶキービジュアルなのです。その上で、30秒CMはどんなふうになるか、こんな新商品ならどういうコピーが書けるか、とバリエーションを検証していきました。

 

■骨太の企画だから応用が利く

──このタグラインを初めて聞いたとき、心にスッと入ってきて素直に共感できました。でも、すぐにこの言葉にたどり着いたわけでは……。

浜島 ないですね。1回目のプレゼンテーションで出した案はもう少し日常的な枠組みの中で表現したもので、「世界」という視点はなかったんです。でも、日本コカ・コーラさんとのディスカッションを経て、働く人へのリスペクトをさらに掘り下げたことで、より広がりが生まれました。「仮に僕らが途中で交替しても、このタグラインは10年は続けてください」とお話しました(笑)。

チョータイ 先ほど浜島さんが「バリエーションの検証」と言われましたが、この最初の段階で「WHY」「HOW」を突き詰めて生まれたブランドの価値だったからこそ、数年にわたってさまざまな角度から、「働く人」やその「頑張り」を、消費者が共感できる「ジョージア」ならではの世界観で描けたと思います。

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──リリースするタイミングによって伝えたい内容が変わったとしても、すべて山田孝之さん演じる「働く人」を主人公に据えることで、シリーズとしての共通性をカバーできているんですね。山田さんのキャスティングは、どうやって決まったのですか?

浜島 登場するいろいろな職業の人がちゃんと本物に見えることが大事でしたから、演技力に定評があって、当時人気が上り調子だった山田さんを候補に挙げました。スケールの大きいキャンペーンなので、それ自体を引っ張っていただければと思ったのです。実際、現場での演技は想像以上に素晴らしいものでしたね。

 

■知らない誰かに「おつかれ!」と言えるのは「ジョージア」だけ

──2017年からは新井浩文さんが加わり、「おつかれ、俺たち。」というコピーが新たに打ち出されました。これにはどういう意図があるのですか?

チョータイ このキャンペーンには、「ジョージア」を代表するSOT(ステイ・オン・タブ)缶の「ジョージア エメラルドマウンテンブレンド」を盛り上げるという意図がありました。キャップの開け閉めができる「ボトル缶」市場が年々伸びていますが、まだまだ市場としても大きいSOT缶ならではの価値、SOT缶を選ぶ意味、を伝達するということがこのキャンペーンでのミッションでした。

──そのSOT缶の価値、とは?

チョータイ ボトル缶は開け閉めができるため、飲みたいときに飲める、デスクでも、移動中であっても飲めるという強い機能的な価値があります 。一方SOT缶には、機能面よりSOT缶ならではの情緒的な価値があると思いました。たとえば、上司が部下を労うときに買うコーヒーはSOT缶だったりしますし、同僚とのちょっとした休息のときに飲むのもSOT缶が多かったりします。ボトル缶はいつでもどこでも飲めるため、どちらかという一人で飲むイメージがありましたが、SOT缶はもう少し“人とのつながり”や“絆”を感じられる製品だと考えました。そこで、SOT缶を働く仲間たちとの絆や共感の象徴として描くという方向で、浜島さんに企画を検討いただくことにしたのです。

浜島 僕、道を歩いているときに働く人を見かけると、その人の右側に「世界は誰かの仕事でできている。」というタグラインが浮かぶんですよ。トラックの運転席の窓から足を出して昼寝している人を見たりすると「頑張ってくれているんだな」と思う。だったら、同じ「ジョージア」を飲んでいる者同士、お互いに「あいつも頑張ってるな」という同族意識を感じるんじゃないかという仮説から、見えない絆を顕在化する「ジョージア トライブ(種族)」というアイデアができました。

 

■細部へのこだわりが“共感”を生む

──それを表現したのが「おつかれ、俺たち。」のCMなんですね。

浜島 実はこれも、チョータイさんたちと密にやり取りをしていく中でたどり着いた案なんです。“知らない者同士”という糸口が見つかったら、何となく他人に対して不寛容な今の風潮の中で「おつかれ!」と言えるのは「ジョージア」しかないし、こういうメッセージが効くだろうと思えました。

チョータイ 浜島さんチームとの会話では、「本当にいいと思う?」といった率直な意見もけっこう言い合っています。そういう関係性も、クリエイティブをつくる上で大事だと思いますね。今回の「おつかれ、俺たち。」にたどり着いたのも、浜島さんのチームと何度かやりとりした結果でしたね。「街中を歩いていて他人の仕事している姿を見かけたときに、『あの人の仕事楽しそうだな』『いつも大変そうだな』と思う瞬間ってありますよね」という会話をしたのを覚えています。結果、それが今回のアイデアの源になっています。

 

──そのチームワークは、キャンペーンを支える一つの要因ですね。「世界は誰かの仕事でできている。」は2014年時点から人気を集め、アンケート調査でも「自分たちのことを分かっている」といった声が聞かれています。このシリーズが支持されている理由を、どのようにお考えですか?

チョータイ 「世界は誰かの仕事でできている。」シリーズは、働く人の頑張りや、その人の仕事に対しての矜持に光を当て、そのストーリーを素直かつリアルに描いています。決して奇をてらったことはしていません、これまでCMで伝えてきた、「おつかれ、誰だかしらねぇけど」「この国を、支えるひとを支えたい。」などのタグラインも、言葉として難しいものではありません。しかし、非常にシンプルな言葉ではありますが、その仕事ならではの頑張りや働く人の矜持を描いた映像にこのような言葉が加わると、一気にストーリーが力強くなり、消費者をグッと引き付けるのではと思っています。

ちなみに、これまでいろんな職業を描いてきましたが、たとえば鳶職の撮影なら本職の鳶職の方に撮影現場に来てもらって、衣装のチェックはもちろん、道具の持ち方や細かい所作まで監修、指導してもらっています 。見え方の話ではありますが、それくらいリアルさの再現にこだわっています。

──そうなんですね! 浜島さんは、「ジョージア」のコミュニケーションでどういう部分を大事にされていますか?

浜島 今、チョータイさんも話したように、やはりストーリーとメッセージに魅力がないと、人は振り向いてくれません。「ジョージア」の「働く」というテーマはすごく太いので、いろいろな描き方ができますが、その中で僕は、まだ描かれていない価値をどんどん発見していきたいと思います。「おつかれ、俺たち。」のCMで描いているのも、状況としては、見ず知らずの二人がただ「ジョージア」を飲んでいるだけのシーン。でも、飲み終わった二人はなんだか温かい気持ちになっている。「ジョージア」が働く者同士の絆になっている、という価値の発見です。そういう価値を豊かに表現できる、世の中に出るに足るストーリーになっているか、いつも繰り返し“検品”しています。

──お二人ともありがとうございました。最後に、最新のウィンターキャンペーンについてうかがえますか?

チョータイ 今回の「ジョージア」ウィンターキャンペーンのメッセージは「日本の冬をアツくする」です。CMは、「ライバル」をテーマにさまざまな職業の中に存在するライバル関係を描きます。同じ職場でも、違う職場や職業でも、負けられない存在がいます。でも、そんなライバルがいるからこそ自分も熱くなれる。そういう人たちを、冬の温かい「ジョージア」が支えるストーリーになっています。今回もさまざまな職業のプロに監修してもらい、「そんなところまで!?」という部分にまでこだわってつくっていますので(笑)、ぜひ、注目ください!

[写真左]アンキット・チョータイ / 日本コカ・コーラ株式会社に入社後、炭酸カテゴリーのコミュニケーションを担当。現在は「ジョージア」ブランドのコミュニケーション担当を務める。

[写真右]はまじま・たつや / 1993年、株式会社電通に入社。アートディデクターとして、SonyTOYOTAEPSONなどを担当。2004年に株式会社ドリル設立にアート・ディレクターとして参加。2010年に電通に復帰。カンヌライオンズ、プロモ&アクティベーション ブロンズ、ACC賞 シルバー/ブロンズ、広告電通賞 優秀賞などを受賞。東京藝術大学非常勤講師。

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