コカ・コーラ」のコンツアーボトルは、今年100周年を迎えました。
そしてこのボトルは、長きにわたってお客さまにハピネスを届け続けてきました。
Coca-Cola Journey』ではそのことにちなみ、
100年間お客さまにハピネスを届け続けてきた日本企業を取材、
そのビジネスの「成功要因」を探っていくシリーズ企画をお届けすることになりました。
第1回目の取材対象は、2014年に100周年を迎えた「星野リゾート」。
4代目代表の星野佳路氏にインタビューし、
同社が100年以上事業を継続できた理由、
そして、お客さまに極上のハピネスを届け続けるための秘訣を伺いました。

文=志村優衣SPBS
写真=松本昇大

■ファミリービジネスだから続けられた

──日本の企業の平均寿命は30年と言われています。そのような状況にありながらも、星野リゾートが100年続いた要因は何だと思いますか?
星野:ファミリービジネス企業という点が大きいと思います。ファミリービジネス企業は上場企業と違って株主が同族なので、意思決定の際、外部からの声に影響されづらい。だから自分の子どもにどう継がせようかという、次世代までの事業の継続性を考え、長期的な視点で経営をすることができます。それがデメリットになる場合もあるけれど、100年続いた理由の一つではないかと思っています。
──星野代表は1991年に社長に就任されるまで、コーネル大学院に留学されたり、シティバンクで働いたりと、すぐに事業を継いだわけではありませんが、どのようなお考えがあったのでしょう。
星野:コーネルに行ったのは、経営を学びたいと思った時、ホテルスクールで1番有名だと聞いたから。単純な発想です。

星野リゾート代表に聞きました。
「なぜ、100年間お客さまにハピネスを届けることができたのですか?」

実は29歳の時に一度、副社長として星野温泉星野リゾートの前身)に入社した経緯があります。しかし当時の役員たちと経営ビジョンにギャップがあり、結局6ヵ月で会社を辞め、シティバンクに入社しました。
──そこから社長に就任された経緯は?
星野:僕が会社を離れていた89年から91年は、ちょうどバブル経済が崩壊し始めた時期でした。くわえて、リゾート法(*)が適用されて大型施設が数多く開発された時期で、我々のような老舗旅館はこれから先どうなるのか、ものすごく不安でした。
そんな中、経営を外から見ている株主たちのサポートもあって会社に戻り、経営改革を進めることになったのです。

■生き残るホテルと淘汰されるホテルの違い=進化できるかどうか

──当時開発された大型リゾートは、結局ほとんどが立ち行かなくなっています。星野代表の目から見て、生き残れるホテルはどこが違うのでしょうか?
星野:進化できるかどうか、ですね。リゾートは完成がないんです。建物ができて開業して終わり、ではない。運営が始まってから、現場で働く人たちが日々進化させていけることが大事なのです。
──お客さまと接するスタッフが、サービスを改善していくということでしょうか。

星野リゾート代表に聞きました。
「なぜ、100年間お客さまにハピネスを届けることができたのですか?」

星野:そう。そして、地域の魅力を活かすことを事業運営のベースにすることが、進化の近道だと思うのです。リゾートとは、言うなればご当地自慢なので、地元出身の従業員たちは自分たちのプライドにかけてリゾートをより良くしようと努力する。そこがお客さまの増加につながるポイントだと考えています。

星野代表が考える進化とは

──星野リゾートではお客さまの声を収集し、共有する仕組みがあるとうかがいました。それも、「進化」を考えた上で?
星野:進化とは、スタッフそれぞれが社長のように経営判断をするということなのです。正しい経営判断をするためには、情報が必要です。だからお客さまが今のサービスをどう感じているか、どんなクレームが来ているかを知らなければいけない。会社にどれくらい資金があるのかも、知った方が良いと思っています。お客さま満足度の向上のために改善したいことがあっても、資金がないとできないですから。進化していくチームをつくるには、情報公開というのは非常に大事なポイントです。それゆえ星野リゾートは、さまざまな経営情報(売上高、利益など)を積極的に社員へ公開しています。逆に、そこさえオープンにしていれば、あとは各自で判断して、進化しなさいと言うだけだから、僕はすごく楽ですよ(笑)。
*リゾート法…総合保養地域整備法。国民の余暇活動の充実、地域振興などを目的として1987年に制定。リゾート開発を図る民間事業者への減税措置などが採られた。