新商品の発売を告知すればリツイート(*1)数が毎回10万回を超え、
「もも」味発売時の新フレーバー予想投票には
1万件を超える投票が集まるなど、大きな影響力を発揮する
い・ろ・は・す」(@ILOHAS)のTwitterアカウント。
ファンを惹きつけ、ファンを増やす「い・ろ・は・す」のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上のコミュニケーション戦略は、どのように立てられているのでしょうか。
2009年の「い・ろ・は・す」発売時からデジタルマーケティングに関わってきた
マーケティング本部の渡辺幸恵さんに、お話をうかがいました。

文=崎谷実穂
写真=村上悦子

 

■これが「い・ろ・は・す」のTwitter運営方針です

──「い・ろ・は・す」のTwitterアカウントは、いつ頃つくられたのでしょうか。

渡辺 公式Twitterを始めたのは、2013年の12月です。開設時に、Twitterの運営方針を担当チームでとことん話し合いました。その当時の「い・ろ・は・す」のブランドコンセプトは「気持ちいい選択」。Twitterの運営方針も、そのコンセプトに合わせようと決めました。ツイートを見た人が毎日気持ちよく過ごせるような投稿をする。「ポジティブ」「アクティブ」「ユーモア」「気さく」など、「い・ろ・は・す」アカウントを表現する形容詞を決め、やること・やらないことを細かく設定したんです。その方針は、今でも変わっていません。

──「い・ろ・は・す」のアカウントは、「おはす!」や「さんく・す!」など、言葉遣いにも特徴がありますよね。

渡辺 そうした言葉の遣い方も、最初に決めました。「い・ろ・は・す」のブランドの方針が当初からずっとブレていないため、最初に設定したトーン&マナーのままで続けられているんですよね。Twitterの企業アカウントが増えてきた当時は、運営する人、いわゆる「中の人」の個性を出してフォロワーを増やすアカウントが多かったんです。では、コカ・コーラ社も同じようなことをやるべきなのか。コカ・コーラ社としてのコミュニケーションの方針を考えたときに、「中の人」のファンを増やすよりは、「い・ろ・は・す」自体のファンを増やし、お客様とブランドとの結びつきを強めていくほうが良いと考えて、今のようなアカウントになりました。

マーケティング本部 IMC iマーケティング マネジャー 渡辺幸恵さん

 

──現在、「い・ろ・は・す」のアカウントは、フォロワー数が35万人を超えています。これはどのようにして増やしていったのでしょうか。

渡辺 初めのうちは、毎週チームで定例会議をして、どういうツイートの反応が良かったのか、そして、それを踏まえてこれからどういうツイートをしていくべきなのかを話し合っていました。ツイートの良し悪しを評価するにあたって一つの指標にしていたのは、リツイート数。リツイートが多いというのは、シェアする価値があるコンテンツだと思ってもらえたということですからね。今でもリツイート数は大事な指標として、チェックしています。そうして、少しずつ反応が生まれるようなツイートを増やしてきました。

──その地道な努力が、2015年の「い・ろ・は・す もも」発売時のキャンペーンの成功につながったのですね。

渡辺 そもそもの発端は、「い・ろ・は・す とまと」を発売するときに、「次の新フレーバーを考える会議をしています。リプライで新フレーバーを予想し正解すると、抽選で新製品プレゼント!」というツイートをしたことでした。そのツイートのリプライ(*2)数やリツイート数の合計が500件近くに上ったんです。つまり、「次に何の味が出るのか」ということに興味を持っていただけていることが分かった。そこで、「い・ろ・は・す もも」のときは発売前にTwitterの投票機能を使って、「ぶどう」「もも」「なし」「うめ」から一つ選んで投票をしてもらったんです。投票をすると、投票した人をフォローしている人のタイムラインに表示されるというTwitter機能の効果もあってどんどん拡散していき、1万件以上の投票が集まりました。

──その結果、ユーザーの予想第1位は、実は「もも」ではなく「なし」だったと……。

渡辺 そうなんです(笑)。そしてその結果を踏まえて、1年後に「い・ろ・は・す なし」も発売しました。この他にも、「い・ろ・は・す」アカウントでは、新しいフレーバーの発売告知をツイートすると、そのリツイート数が10万以上になるんですよね。これは、コカ・コーラ社の他のブランドと比べても非常に多い数字です。

い・ろ・は・す とまと」発売前のフレーバー予想ツイート。
さまざまな予想が飛び交い、おおいに盛り上がった

 

■売り上げ1,000万本につながった施策とは?

──10万超えはすごいですね! 一番新しい「い・ろ・は・す スパークリングぶどう」の先行体験告知のツイートも、10万3,000件リツイートされていました。

渡辺 新しいフレーバーに対して高い期待感を抱いていただいているので、新発売のツイートをするとそれだけで拡散してもらえるんです。

い・ろ・は・す なし」の発売前には、1万名に「なし」と「もも」の飲み比べセットが当たるリツイートキャンペーンをしました。それも、11万6千リツイートされ、応募フォームへの入力も10万件近くありました。発売後は、「Twitterステッカー」を期間限定で配布したのですが、そのステッカーが使われたツイートは、約8万件にのぼります。こうした施策の結果、「い・ろ・は・す なし」は「い・ろ・は・す」史上最速で、売り上げ本数が1,000万本を突破したんです。現在は、未発売フレーバーの「い・ろ・は・す シャインマスカット」が当たるプレゼントキャンペーンを期間限定でやっています(2017年6月30日まで)。

──Twitterステッカーというのは、Twitterの投稿画像に貼れるスタンプのようなものなんですね。

Twitterステッカーは2016年6月に導入された機能。
同じステッカーが含まれる画像を逆引き検索できる
ハッシュタグのような機能も備えている

 

渡辺 企画時点では、なしや水滴といった画像のスタンプはいいけれど、「い・ろ・は・す」のボトルをかたどったいかにも広告的なステッカーは使ってもらえないんじゃないかと思っていたんです。でも、実際には、予想に反して製品のステッカーをよく使ってもらえていて、「い・ろ・は・す」というブランドが愛されていることを実感しました。もともと、新製品発売後の1週間は、「『い・ろ・は・す』の◯◯味飲んだよ」など、購入、飲用したことをツイートする方が増えるということは過去の結果から分かっていました。そういったツイートを、より促進しようと考えた企画でした。

──「い・ろ・は・す」ではTwitterステッカーのような、SNSの新しい機能も積極的にキャンペーンに取り入れていますよね。

渡辺 はい。現在の「い・ろ・は・す」のコンセプトは、「Playful Innovation / プレイフル イノベーション」「Enjoyable Eco / エンジョイアブル エコ」「Accessible Cool / アクセシブル クール」の3つです。日本語で言えば、遊び心を持って新しいことをし、楽しくエコに取り組み、おしゃれで今っぽいけれど親しみやすい、そんなブランドを目指しています。このコンセプトの通り、SNSでも新しいことにいち早く取り組もうとしていて、Twitterの投票機能を日本で初めて使ったのも、実は「い・ろ・は・す もも」のキャンペーンなんです。2015年8月1日の「水の日」には、日本最大規模のインスタミート(Instagramユーザーが集まるイベント)を開催し、水の美しさを表現する写真をみんなで撮影しました。

い・ろ・は・す」は、今年で発売8年目を迎える。
4月にはフレーバーウォーターシリーズのパッケージが刷新された

 

──企業のInstagramを用いたマーケティングは、最近でこそ盛んに行われていますが、2年前にすでに取り組んでいたとは早い。ブランドとしての姿勢と、デジタルテクノロジーやSNSを使った施策の方向性が合致しているからこそ、キャンペーンが成功するんですね。

渡辺 先進的なデジタルマーケティングを行うブランド=「い・ろ・は・す」ということを全社的に後押ししてくれる環境が整っていたんです。TVCMなど既存のマスメディアを利用したコミュニケーションももちろん大事なのですが、デジタルメディアの可能性も最初から信じていました。だから、ホームランを狙ったつもりの施策が二塁打くらいで終わってしまっても(笑)、「デジタル分野で新しい挑戦をし続けることに意味がある」と考え、次につなげることができたんです。6月12日からは、「い・ろ・は・す」の全国6ヵ所の水源を舞台にしたVR(バーチャルリアリティ)映像をブランドサイトで順次公開し、VR映像の体験キットをプレゼントするキャンペーンも実施予定です。

近年、飲料メーカー各社もデジタルマーケティングをどんどん行うようになってきて、話題づくりが難しくなってきていると感じています。ちょっと気を緩めると、先を行っているつもりでいたのに、実は後れを取っていたということになりかねない。現状に満足せず、常に、新しいことに挑戦していきたいと思います。

 

*1 リツイート:ツイートを再投稿すること。他のユーザーのツイートをリツイートすることで、自身のフォロワーに共有することができる。
*2 リプライ:Twitter上で特定のユーザーに宛てて送られるメッセージのこと。ツイートの先頭に「@(ユーザー名)」という形で宛名を記述する。

わたなべ・ゆきえ / 2003年に日本コカ・コーラ入社。マーケティング本部 IMC iマーケティングにて「い・ろ・は・す」や「コカ・コーラ ゼロ」のデジタルマーケティングを担当。現在はお茶部門のデジタルマーケティングを担当している。

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