コカ・コーラ社
「理想の企業像」を探して
各企業を訪問していく特別企画。
第1回目は日本航空を訪問。
客室乗務員兼広報担当の串田さんに顧客満足度を高めるための
おもてなしの秘訣を教えていただきました。

文=山田清機
写真=下屋敷和文


ファーストクラスのおもてなし

小松 私たち日本コカ・コーラのお客様相談室は、お電話やメールを下さったお客様にハッピーになっていただきたい、そしてコカ・コーラ社製品のファンになっていただきたいという思いを込めて“Bridge to your Hearts”(私達はお客様の心と製品を結ぶ虹の架け橋になります)をスローガンに掲げています。
 そこで本日は、日本一のおもてなし企業であるJALさんに、CS(顧客満足度)を高めるおもてなしの秘訣を教えていただきたいと思ってやって参りました。
 串田さんは、子供の頃からCAに憧れていらっしゃったそうですね。

串田 私は中学生の頃から英語が好きで、将来は英語を使う仕事につきたいと思っていたのですが、たまたま家族旅行で乗った飛行機の客室乗務員の方にとても優しくしていただいたことがきっかけで、この仕事を目指すことになりました。

小松 ファーストクラスのご担当をなさっていたとか。

串田 最初はエコノミーとビジネスクラスを担当しておりました。その後、ひとり立ちし多くの実践を積んだ後、2012年の12月からファーストクラスをメインで担当させていただきました。

小松 一生に一度でいいから乗ってみたいと思っているのですが(笑)、ファーストクラスのおもてなしってどのようなものなのでしょう。

串田 国際線のファーストクラスは基本的に長距離フライトに設定されます。国際線のファーストクラスはビジネスクラスのようにお食事の時間などは一律ではなく、ご搭乗の際にお客様一人ひとりの「お過ごしプラン」を伺って、お客様のペースに合わせたおもてなしをご提供しております。

小松 私たちの場合、電話とメールで年間約7万件のお客様の声を伺うわけですが、一人ひとりのお話をよく聞くことが仕事の基本という点では、共通性がありますね。特に製品に関してご指摘をいただいた場合、頭は冷静にして状況を正確に把握していきながら、同時に、感情の面ではお客様の気持ちに寄り添っていく必要があります。これは、結構難しいことなのですが、CAの方は接客に関してどのような訓練をなさるのでしょう。

串田 訓練を通して特に私ども客室乗務員が意識しておりますことは、一人ひとりのお客様がいったい何を求めておられるのか、常にお客様の視点に立って考えるということです。
 もちろん、お客様のご要望に100%お応えできないケースもありますが、そんな時は客室乗務員全員で情報を共有し、少しでもご要望に近いサービスをご提供するよう努めております。たとえマイナスなことがあっても、フライト終了までにはそれを必ずプラスに持っていけるよう客室乗務員全員でフォローアップするように常におもてなしの心を持って、接しております。

お客様の気持ちを汲み取る、ということ

小松 もう10年以上前のことになりますが、私には苦い思い出があるんです。あるお客様と電話でお話ししていて、とてもうまくコミュニケーションが取れていたのに、私の不用意な一言でお客様が気分を害されてしまったことがあったのです。

串田 どのようなひと言ですか。

小松 「ご連絡のために携帯電話の番号をお教えください」と言ってしまったんです。当時、携帯電話の普及率はまだまだ低かったのに、自分が持っていたのでお客様もお持ちだと勝手に思い込んでしまった。お客様はお持ちでないことを責められたようにお感じになられたようです。

What’s an ideal company image?  
コカ・コーラ社社員
日本航空に「最上級のおもてなし」を学ぶ

串田 私にも同じような失敗があります。関空から上海へのフライトでしたが、悪天候で機体が揺れ機内販売の時間が足りなくなってしまったことがあったのです。前方の座席のお客様にはご案内ができましたが、後方のお客様にはご案内できないままサービスを終了せざるを得ませんでした。私は心の中で、後方のお客様にも何らかの形でご案内をすべきではなかったと思っていたのですが、行動につなげることができませんでした。すると案の定、「機内販売で買いたいものがあったのに」とお叱りの言葉を頂戴してしまったのです。時間不足を言い訳に、お客様のご要望にお応えできなかった結果でした。

小松 おもてなしの大敵は「お客様視点の欠落」ということかもしれませんね。

串田 おっしゃる通りですね。本当のおもてなしをするためには、独りよがりな思い込みをせずに、お客様の雰囲気や話し方から本心を察していくこと、そしてそれを行動に起こすことがとても大切だと思います。

小松 一方私は、お客様の身になって考えることを基本に据えつつも、できることとできないことはきちんとお伝えするべきだと思っています。全てのご要望に、はいはいと簡単にお返事してしまうことは、お客様をリスペクトしていることにならないと思うのですが、いかがでしょうか。

串田 たしかに、できることとできないことは厳然とありますが、私の場合は、ともかく熱心にお客様のお話をお聞きすることを基本にしています。おもてなしに唯一の正解はないと思いますが、より正解に近づくためには、お客様のご要望を理解し、お気持ちに寄り添うことで、自分がお客様の立場だったらどう思うだろうと精一杯考え抜く以外にありません。その結果、「ありがとう」のひと言を頂戴できたら、そのおもてなしで正解だったのかな、と思いますね。

家族だと思って心を開く

小松 JALさんでは、お客様の声のフィードバックはどうなさっているのですか。

串田 フライト終了直後に、客室乗務員と整備部門が引き継ぎをいたしますので、たとえば「お手洗いの扉の開閉音が気になる」といったお声を頂戴したら、次のフライトで同じご指摘が出ないよう、整備部門の人間にその場で改善してもらいます。機材ではなくサービスなどに関するご意見があった場合は、まずは客室乗務員全員で情報共有し、必要に応じて関係部門に伝達するようにしています。

小松 わが社の場合は、お客様相談室に寄せられた声をイントラネットで全社員が共有できるようになっておりまして、各ブランドの担当者や品質管理部門など常にお客様の声をチェックしながら製品の改善を行っています。たとえば2リットル入りの水やお茶は、「2リットルのペットボトルは重いのでお子さんや女性には持ちにくい」というお客様の声から生まれた、軽量で持ちやすく、注ぎやすい形状のペットボトルなんですよ。

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コカ・コーラ社社員
日本航空に「最上級のおもてなし」を学ぶ

串田 すばらしいシステムですね。私どもJALにも小松さんが働かれている部署のように、お客様サポート室というお客さまのご意見をお伺いする部署がございまして、そちらへお寄せいただいたお声は各現場へフィードバックされ改善につなげております。また、客室乗務員に特化したお声はいつでも閲覧できるようなシステムもあり、日々念頭に置き、業務にあたっております。

小松 最後に、どうしても伺ってみたかったことがあります。JALさんのCAの方って、いつも素敵な笑顔をされていますよね。私たちも、たとえ顔は見えなくても、常に笑顔の応対を目指しているのですが、“常に笑顔”ってなかなか難しいですよね。

串田 常に笑顔の秘訣は、お客様がご搭乗になった瞬間に、ぱっと心を開いてしまうことです。心を開いて、その日ご搭乗のお客様は全員家族だと思ってしまう。そうすると、不思議なことに自然と笑顔になれるんです。

小松 JALさんは、これからどのようなおもてなしを目指していかれるのでしょうか。

串田 やはり、外国の航空会社にはない、日本の航空会社ならではの濃やかなおもてなしだと思います。特に日本人のお客様の場合、心で思っていらっしゃることをなかなか口にされない傾向が強いので、こちらから積極的にお気持ちを汲み取る、察するという姿勢が大切だと思います。お客様の声にならない声を聞き漏らさない。そう心掛けることが、日本の航空会社らしい「和のおもてなし」に繋がっていくのではないかと考えております。

小松 私たちの仕事にとって、とても参考になるお話でした。ありがとうございました。

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コカ・コーラ社社員
日本航空に「最上級のおもてなし」を学ぶ

◆  プロフィール
串田桃子(右)/2008年、JALグループ内でリゾート路線を担当していたJALウェイズに入社。1年目から高度な英語力が求められる国際線に乗務。
2010年、JALウェイズJALが経営統合。2012年12月から翌年3月まで国際線でファーストクラスを担当。4月より広報部で社内報の作成に携わる傍ら客室乗務員としてフライトも兼務。「JALの顔」として、さまざまなメディアの取材に対応している。

小松雅子(左)/1979年大学卒業後CCJCに入社。当初は人事で社員の心と体の健康管理を担当していたが、出産を機に財務に異動。しかし、数字よりも人間と向き合う仕事をしたいという思いが強く、98年にお客様相談室へ転じた。お客様相談室の管理、運営を行う傍ら、コカ・コーラシステム全体のお客様対応力の向上のためのマニュアル作成なども行う。2児の母。