2017年7月1日付けで
日本コカ・コーラの代表取締役社長に
ホルヘ・ガルドゥニョ氏が就任しました。
さっそく『Coca-Cola Journey』では、ホルヘ新社長へのインタビューを実施。
これまで6ヵ国でコカ・コーラビジネスを経験してきたという経歴や、
日本コカ・コーラのビジョンについて伺いました。

文=山田清機
写真=前康輔

 

■日本人にはパッションがある

──日本には、いつ頃いらしたのですか? また、来日前、日本に対してはどのような印象をお持ちでしたか。

ホルヘ 3月の中旬です。日本で仕事ができることをとても楽しみにしていました。東京は偉大な都市だと思っていましたし、日本全体についても良い印象を持っていました。文化、経済、テクノロジー、いずれの面でもすばらしく、パッションを持って勤勉に働く人々の国だと思っていました。世界中の人々が、日本をそのように見ているのではないでしょうか。

──パッションとは、「情熱的」という意味でしょうか。

ホルヘ そうです、日本人はとても情熱的な民族だと思います。情熱がなければハードに働けませんし、アフターファイブに同僚と食事やお酒を楽しむこともできません。「細部をないがしろにしない」という意味での情熱も持っていますよね。自然環境や他者への配慮も濃やかで、それも日本人のすばらしい点の一つだと思っています。

ホルヘ新社長“所信表明”インタビュー「わたしのキャリアと日本コカ・コーラのこれから」

──アメリカのテキサス大学でMBAを取得した後、母国メキシコに戻って再びMBAを取得されたとお聞きしています。なぜ、就職先にザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)を選ばれたのでしょうか。

ホルヘ 学生のとき、ザ コカ・コーラ カンパニーのインターンとして働いたことがありました。担当したのはメキシコシティ(メキシコの首都)の一部の小さなマーケットではありましたが、実際のビジネスをまったく知らない学生である私に、そのエリアに全社的な戦略をどう落とし込むかということについての計画立案と、その実行を任せてくれたのです。最初の数ヵ月は、勤務時間の半分を、トラックに同乗して顧客に飲料のケースを届ける手伝いをするのに充て、同時に、ショップオーナーや営業マンの話を聞いたり、現地の人と一緒に食事をしてその土地の生活を味わったりすることに費やしました。このように、非常に意義深くて貴重な経験をさせてもらったこともあって、ザ コカ・コーラ カンパニーを就職先に選びました。

 

■日本の「課題」解決につながる製品を提供していきたい

──日本に来られる前はスペイン、ポルトガル、アンドラなどラテン系の国を担当されていたそうですが、日本のマーケットと違いはありますか。

ホルヘ ヨーロッパ地域に着任する前は、私は、タイ、メキシコ、チリ、コロンビアで仕事をしていました。ヨーロッパでも南米でもラテン系の国々は、製品のバリエーションは日本ほど豊富ではなく、「コカ・コーラ」や「ファンタ」などの炭酸飲料が売り上げの3分の2以上を占めていました。一方、日本のマーケットは非常に洗練されていて、消費者がイノベーションに対して求めるレベルがとても高い。製品バリエーションのうち炭酸飲料の占める割合は、4分の1にすぎず、残りはコーヒー、お茶、水などの非炭酸飲料です。しかも、毎年のようにベースとなる製品が入れ替わります。ラテン系の国々とはまったく異なるマーケットだと思います。

──大変な国に来てしまいましたね(笑)。

ホルヘ 目の前の仕事をこなし、単発のアイデアを出すだけでは、日本のマーケットで生き残っていくためには不十分で、競合他社を上回るクオリティの製品を、どこよりも早く出すことを常に念頭に置いていなければなりません。かなりの労力が必要とされるのは確かですが(笑)、それだけに、日本での仕事はとてもクリエイティブなものだと感じています。

ホルヘ新社長“所信表明”インタビュー「わたしのキャリアと日本コカ・コーラのこれから」

──日本は今、人口減少、少子高齢化が社会問題となっています。

ホルヘ 人口構成の変化は世界的な現象ですが、日本では、それが急速に進んでいるのは確かでしょう。私が仕事を始めた25年前は、仕事の大半が10歳代~20歳代を対象としたものでした。しかし今では、マーケットリサーチも新製品の開発も広告宣伝も、幅広い年齢層に向けたものに変化しており、日本コカ・コーラがこうした流れを牽引しているといえるでしょう。私たちは、日本の消費者が抱えるさまざまな「課題」に応えるために、多くのリソースと労力を投入しています。

──具体的にはどんな戦略をお考えですか。

ホルヘ 今年の3月末に、「コカ・コーラ プラス」(トクホ/特定保健用食品)を発売しましたが、この製品こそまさに「コカ・コーラ」が変わりつつあることを証明するものだと思っています。数年前であれば、「コカ・コーラ」が脂肪の吸収を抑える製品を発売するなんて、想像もできないことでした。しかし、大きなリスクをとり、起業家精神を発揮して日本の消費者の「課題」に応えようとした結果、おかげさまで「コカ・コーラ プラス」は大成功を収めることができました。

──長年かけて築き上げ、守ってきた「コカ・コーラ」ブランドのイメージが変わってしまうという懸念はなかったのですか。

ホルヘ それについては、社内でも長い間、議論を続けてきました。要するに日本の消費者は“おいしさ”と“健康”という、一見相反する二つのことを求めているわけですが、私たちは「コカ・コーラ プラス」でどちらか一方だけではなく、両方の実現が可能であることを証明できたと思います。当社には、経験豊富な人材、これまで培ってきたノウハウ、果敢にチャレンジする積極性がありますから、今後も消費者のみなさまの期待にお応えする新製品を提供していけると考えています。

 

■持続可能な世界で、持続可能なビジネスを

──日本コカ・コーラはこれまで、環境問題にも熱心に取り組まれてきました。

ホルヘ 環境問題への取り組みについては何時間でもお話しすることができますが、取材の時間が限られているので一つだけお伝えしたいと思います(笑)。それは、「水」についてです。ザ コカ・コーラ カンパニーは、世界の持続可能性を支援することにコミットしており、2007年には「2020年までに『ウォーター・ニュートラリティー』を実現する」と宣言しました。これは、「Reduce(水使用量の削減)」「Recycle(使用した水の再利用)」「Replenish(水源の保全)」という3つの取り組みによって、生産に使用した水と同量の水を自然環境に返すという宣言です。2016年の実績をもって100%を達成しましたが、まだまだできることがあります。今後も水のサスティナビリティー(持続可能性)を高めるべく、日々取り組みを強化していきたいと思っています。

──なぜ、そこまで環境問題に力を注ぐのですか。

ホルヘ 「持続可能な世界」でなければ、私たちが展開しているビジネスは成り立たないからです。日本コカ・コーラは「ウォーター・ニュートラリティー」の他にも、「ピークシフト自販機(*1)」の開発・設置拡大や、「サスティナブル・パッケージ(持続可能な容器)(*2)」の実現といった先進的な取り組みを展開しており、環境問題の分野で世界を牽引しています。

──現在の日本は、やや元気がない状態だと言われることも多いのですが、最後に、そんな日本の人々に向けたメッセージをお願いします。

ホルヘ ザ コカ・コーラ カンパニーの最も重要なDNAは、「どこまでも楽観的であること」です。「変わることのない前向きさ」と言ってもいいかもしれません。一所懸命に働いて目標を達成するのはもちろんすばらしいことですが、常に忘れてはならないのは人生を謳歌すること、お互いを祝福し合うことです。日本のみなさまにもたくさんの祝福されるべき瞬間が訪れることを、私は確信しております。

*1 ピークシフト自販機:夜間に収容製品を集中冷却し、日中は冷却用の電力を停止することで、夏場の電力消費量の大幅削減を実現した自動販売機。
*2 サスティナブル・パッケージ(持続可能な容器):環境にやさしく、人にとっても使いやすい容器のこと。日本コカ・コーラでは、革新的な技術を追求し続け、必要最低限の自然資源でのパッケージ製造を目指しており、また、飲用後のパッケージ素材を製造過程に戻して再利用するシステムの構築にも取り組んでいる。

 

ホルヘ新社長“所信表明”インタビュー「わたしのキャリアと日本コカ・コーラのこれから」

ホルヘ・ガルドゥニョ / 1992年ザ コカ・コーラ カンパニー入社、メキシコのコマーシャル部門にてキャリアを開始。その後、フランチャイズオペレーション、マーケティング、カスタマー営業などの職務を通じて幅広くコカ・コーラビジネスの経験を積み、コロンビア、タイ、ラオス、チリにおける統括責任者を歴任。2015年以降は、スペイン、ポルトガル、アンドラの統括責任者を務める。17年7月1日付けで、日本コカ・コーラ代表取締役社長に就任。