マシュー・ヘップバーン(インタビューの聞き手)

文=マシュー・ヘップバーン(『コカ・コーラ ジャーニー<英国版・アイルランド版>』編集部)

 

現在、「オウンドメディア」と呼ばれる、企業が主体となって運営するオンラインメディアが花盛り。従来の「ホームページ」的な概念から一歩進んで、自主的にコンテンツをつくることで、企業の目指す価値をダイレクトに消費者に伝えることができると、多くの企業が採り入れています。

今、みなさんがご覧になっているこのサイト『コカ・コーラ ジャーニー』は、ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)の企業サイトの進化形として2012年に米国で開設された、いわばそのパイオニアとも言えるメディアプラットフォーム。現在このメディアプラットフォームは、20の言語によって40を超える国でコンテンツを提供しています(2016年12月時点)。今回は、『コカ・コーラ ジャーニー』の英国版とアイルランド版の編集を担当するマシュー・ヘップバーンが、グローバル版編集長のジェイ・モイエにインタビューを行い、これまでの道のり、そして今後の展開の戦略とビジョンについて聞きました。

 

■行動のきっかけとなるウェブメディアをつくりたかった

──まず、『コカ・コーラ ジャーニー(以下、ジャーニー)』とは、一言で表現すると何でしょうか?

モイエ ザ コカ・コーラ カンパニーの企業サイトが、ダイナミックなデジタルマガジンを中心とする、独自のメディアプラットフォームに進化を遂げたもの、と言えるでしょう。先進的なオンラインメディアに刺激されて誕生したこのメディアプラットフォームを通して、私たちは企業や「コカ・コーラ」ブランドの背景にある魅力的なストーリーをコンテンツ化して発信しています。私たちが何者であり、普段どのような活動をしているのかに加え、活動の背景や活動の動機を伝えることで、単に読者を楽しませるだけでなく、読者を刺激し、啓発するようなメディアプラットフォームでありたいと思っています。最終的に目指しているのは、『ジャーニー』のコンテンツが、それを受け取った読者が何らかのアクションを起こすことのきっかけになることですね。

2012年当初、『ジャーニー』を開設することは大きな賭けでした。私たちがそれに踏み切ることができたのは、真実を伝えるストーリーの価値と優れた文章や映像の力を確信していたからです。加えて、世界規模でリアルタイムに情報を発信することが、企業と消費者の関係性をこれまでとは違った形に進化させる可能性があると信じていたからです。

 

■40を超える国がターゲット

──『ジャーニー』の構成要素と、誕生してから今日までどのように発展してきたのかを教えてください。

モイエ 『ジャーニー』の中心的な要素はウェブページですが、企業ブログやフェイスブック、リンクトイン、インスタグラム、ツイッター、スナップチャットなどのSNSも同時に活用することで発信力を高めています。

*『コカ・コーラ ジャーニー<日本版>』オリジナルコンテンツ例

http://www.cocacola.co.jp/stories/vm_summit01
若手建築家・谷尻誠さんと、AR三兄弟の川田十夢さんに
“夢の自販機”についてのふたり会議を繰り広げてもらった企画

 

http://www.cocacola.co.jp/stories/hfy-1
コカ・コーラ」に象徴される“アメリカンカルチャー”について、
さまざまな角度から藤原ヒロシさんが語り尽くした企画

 

開設当初と比べて最も大きく変化したことは、『ジャーニー』の展開規模です。世界各国でサイトを増やした結果、現在では世界中の40を超える国をターゲットに、20の言語で提供するグローバルなネットワークを確立しています。各国のサイトのデザインや構成はグローバルサイトに倣っていますが、ザ コカ・コーラ カンパニーのコンテンツを現地の言語に翻訳したものだけでなく、各地の編集部が独自に制作したコンテンツも展開しています。米国本社から始まった取り組みがここまで成長してこられたのは、全世界のコカ・コーラ社で働く仲間やパートナー企業が私たちの活動を支えてくれたおかげだと思います。

 

動画:各地のジャーニー編集部からのメッセージ
※英語のみ

 

──『ジャーニー』のコンテンツを制作する際に、特に意識しているのはどのような点ですか?

モイエ 私たちは『ジャーニー』を通じて、「コカ・コーラ」関連のニュースや、ビジネスの舞台裏で起きているドラマを発信することもあれば、マーケティングキャンペーンやスポンサーの活動をサポートすることもあります。いずれの場合でも、“編集部独自の視点で描く”ということを徹底しています。それによって、読者の方々は企業文化を理解してくれ、社員たちは会社に親しみを感じてくれるので、サスティナビリティやイノベーションの取り組みのような、ややもすると堅苦しくなりがちなコンテンツでも、新鮮な形で届けられていると思います。

また、「コカ・コーラ」と直接関係する話題に限らず、ニュース性のある話題もいち早く発信しています。読者としては、ジャーナリスト、コカ・コーラ社社員、消費者、「コカ・コーラ」ファン、提携企業などのステークホルダー、そして時には私たちに批判的な人まで、あらゆる人々を想定しているんですよ。

 

■ただつくるだけじゃダメ。読まれることが大事。「いかに拡散させるか」を重要視している

──これまで掲載してきたコンテンツの中で、最も自慢できるものは何ですか?

モイエ 2016年のヒットコンテンツとしては、1月のグローバルマーケティング戦略「ワンブランド」戦略と「Taste the Feeling」キャンペーンの関連記事、夏のリオデジャネイロオリンピック関連記事などが挙げられます。また、ザ コカ・コーラ カンパニーの四半期決算を、ビジュアルを活用して分かりやすく伝えることも続けています。『ジャーニー』でしか読めないインタビュー記事も充実させていますし、動画や音声コンテンツを拡充してきたことも自慢できますね。

*参考記事(日本語翻訳版)

    ●   コカ・コーラ」新グローバルキャンペーン アヴィーチーAvicii)が手がけた「Taste The Feeling」のテーマソング!!
  その魅力を徹底解剖!「コカ・コーラ」Taste The Feelingキャンペーンがウケている理由 [前篇]
  2016年 リオデジャネイロオリンピック開催直前!「聖火リレー」最新現地レポート

 

──失敗を踏まえて改善してきた点はありますか?

モイエ “失敗”には当たらないとは思いますが……『ジャーニー』の開設から数年経ったころ、自分たちの課題は、コンテンツを制作すること以上に、より多くの読者にコンテンツを発見してもらうことにあると気づきました。毎週10~12本のオリジナルコンテンツを制作していますが、読者への効果的な届け方やSNSなどとの連携方法をもっと考えていくべきではないかと思い当たったんです。今では、コンテンツの読者数、「いいね!」の獲得数、SNSや外部メディア、ニュースレターなどのさまざまな媒体を通じた拡散規模などを指標に、「いかに多くの読者に私たちのコンテンツを届けられたか」ということを重視した運営をしています。

左:『コカ・コーラ ジャーニー<英国版・アイルランド版>』編集部 マシュー・ヘップバーン
右:『コカ・コーラ ジャーニー』編集長 ジェイ・モイエ

 

■企業とも「ストーリー」でつながる時代

──コンテンツを企画化するための情報はどのようにして集めているのですか?

モイエ ザ コカ・コーラ カンパニーのアトランタ本社では、魅力的なストーリーをタイムリーにコンテンツ化できるように、渉外、ブランドPR、ヘリテージ、グローバルマーケティングなど、多くの部門が『ジャーニー』のコンテンツ制作に関わっています。私にとっての2017年の優先課題は、海外の編集部とのコミュニケーションを強化し、アイディアやストーリー、人的資源をよりスムーズに共有できるようにすることです。

──今後、企業やブランドから直接コンテンツを提供されることを期待する消費者は増えていくと思いますか?

モイエ はい、そう思います。私たちは早い時期からこの分野を開拓してきましたが、今では多くの企業やブランドが独自のコンテンツを配信するようになっており、読者の争奪戦も激化しています。私たちはより魅力的なコンテンツの発信と効果的なコミュニケーション戦略によって、膨大な情報があふれるインターネットの世界で、読者のみなさんにいかに私たちのコンテンツを選んでいただくかという課題に取り組んでいるのです。

──『ジャーニー』の未来をどのように思い描いていますか?

モイエ 過去2年の間、サイトだけではなく、各種SNSを通じてさまざまな試みをしてきました。これからも引き続き、多様なチャネルを活用して、コカ・コーラ社発のコンテンツをさらに効果的に伝える方法を模索していきます。

SNSの発達とともに、世界中の人々がコンテンツが内包するストーリーを介して互いに結びつき合う時代が来ています。同時に、ネットワーク上の友人たちに対するのと同じように、自分の好きな企業やブランドともコンテンツを通じて密につながっていたいと期待する人が増えていると考えています。私たちはその期待に応えるべく、動画やGIF画像、ポッドキャスト、インフォグラフィック、写真入りの記事やブログなど、さまざまな形で読者にコンテンツを楽しんでもらう方法を追求しています。試行錯誤しながら学んでいる最中ですが、『ジャーニー』を、もっともっと多くの読者の方に知っていただけるメディアプラットフォームに育てて、「コカ・コーラ」ブランドへの愛と企業への信頼感の向上に貢献していきたいですね。