「ものまね番組の歌まね」ならぬ「単行本のものまね文章」が大ウケして、
2017年のベストセラーになった
もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)。
その著者であり、ジャーニーライター(*)でもある神田桂一さんが、
こんどは、コカ・コーラ社製品の説明文にチャレンジ!
村上春樹風町田康風又吉直樹風に仕立て上げました。
抱腹絶倒の特別企画です。

*さまざまなジャンルで活躍するライターや作家、編集者たちによって結成されたチーム。『Coca-Cola Journey』では、同チームのメンバーが自ら企画を考え、自ら記事を執筆する企画も定期的に掲載しています。

文=神田桂一
イラスト=小幡彩貴

 

■「コカ・コーラ」の説明を村上春樹が書いたら

 ジョン・S・ペンバートンなる人物の名に心当たりのある方はまずいるまい。
 かつてそのような人物が存在し、そして死んだ、とそれだけのことだ。
 もっとも「コカ・コーラ」が1886年に、薬剤師であった彼によって、ジョージア州アトランタで、この汚れ多き地上にもたらされたというのはひとつの歴史的事実である。それはまた、ジークムント・フロイトが精神医学の発展の第一歩として、ウィーンに医院を開業した年でもあった。
コカ・コーラ」研究書『グッド・テイスト』の序文はこのように語っている。
コカ・コーラ」は、誕生以降120年以上にわたり、国境や文化を越えて──そんなものがあればの話だが──世界中の人々に愛されており、その規模は200以上の国や地域に及ぶ。「コカ・コーラ」という名前は、発売当時経理を担当していたロビンソン氏が、リズミカルで覚えやすい名前がいいと考えてつけたものだが、それをとやかくいう権利は僕にはないし、ましてやジョニーウォーカーが言う権利なんかもちろんない。僕らが「コカ・コーラ」から得るものは、ある種の永劫的のどごし(のどごしの上に、、、、)、ただそれだけだ。

 

■「ジョージア エメラルドマウンテンブレンド」の説明を町田康が書いたら

 妻が小生の財布を持って家を出ていってからもう1週間経つ。家の箪笥の隙間やテレビの裏などを調査しくさりまくったが、もうどこにも小銭は落ちていない。ポケットをじゃらじゃら音を鳴らしながら裏返すと、小銭が出てきた。537円。あかんではないか。コーヒーでも買って落ち着こう。
 家を出ると目の前に自動販売機がある。私は、エメラルド色に光っている缶コーヒーをなけなしの130円で買った。缶には何やら書かれている。「1975年に発売を開始して以来、幅広い層の皆様に愛され続けている『ジョージア』は、コーヒーのNo.1ブランドです」。あぱぱ。何やら何気なく買った缶コーヒーがNo.1らしいではないか。やったぜやまちゃん。やまちゃんて誰やねん。とにかく運が向いてきた。妻が帰ってくるのも時間の問題ではないか。私はこの缶コーヒーが妙に気に入り、家に戻るとインターネットというもので、この缶コーヒーのことを調べた。すると私が買ったものは、ロングセラーになっている『ジョージア エメラルドマウンテンブレンド』というもので、ブランド名は、「コカ・コーラ」発祥の地である米国ジョージア州にちなんでつけられたものであるということがわかった。缶コーヒーと「コカ・コーラ」になんの関係性があるのであろうか。私の頭は混乱した。月亭可朝月亭八方は師弟関係である。これはわかる。では、ジュースとコーヒーは師弟関係が成り立つのであろうか。私は、考えることを諦めて、月亭方正の落語を観に行くことにしたのである。

 

■「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー」の説明を又吉直樹が書いたら

神谷 「おい、徳永。舞台まであと何分ある? あと10分か。コンビニ行って『紅茶花伝』のPETボトル買ってきてくれへんか。アイスな!」
徳永 「はい! 先輩わかりました!」
神谷 「間違ったらあかんぞ。『紅茶花伝』やからな! 1992年2月に発売された、紅茶本来の味わいが楽しめる、大人のための上質で本格的な紅茶、それが『紅茶花伝』やからな!」
徳永 「先輩、『紅茶花伝』の回し者ですか?」
神谷 「ちゃうわ! コカ・コーラ社の回し者や! 余計あかんがな!」
徳永 「とにかく行ってきます。(しばらくして)買ってきました!」
神谷 「えらい早いな! サンキュー。この甘さ。これがちょうどええねん」
徳永 「僕も大好きです。『紅茶花伝』。世阿弥が書いた能の書物である風姿花伝をもじってネーミングされたんですよね。上質で高貴なイメージがぴったりです」
神谷 「おい、お前こそ『紅茶花伝』の回し者やろ?」
徳永 「いやいや、それはないですよ。僕の家に『紅茶花伝』、コカ・コーラ社から死ぬほど送られてきましたけど」
神谷 「今日の舞台、『紅茶花伝』の話しかしたくないな、僕は」
徳永 「奇遇ですね、僕もなんですよ」


場内アナウンス「今日のスパークス、ネタは『紅茶花伝』それではどうぞ!」

 

<著者プロフィール>
かんだ・けいいち / フリーライター・編集者。1978年大阪生まれ。関西学院大学法学部を5年かかって卒業。一般企業勤務から、週刊誌『FLASH』の記者に。その後、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに転職し、『マンスリーよしもとPLUS』の編集に携わる。その後、ドワンゴに移り、「ニコニコニュース」編集部に所属、編集記者を経てフリー。初めての共著『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』が11万5千部のベストセラーに。