「鶴ヶ城」に映し出された想い


川島 最近は、どんな「劇的」をつくられたのですか?
森内 東日本大震災の被災地の一つである福島県を応援する「fukushimaさくらプロジェクト(*)」の一環として、会津若松市にある鶴ヶ城を舞台に「鶴ヶ城プロジェクションマッピングはるか2014『庄助の春こい絵巻』」というイベントを制作しました。影絵作家である藤城清治氏が書き下ろした地元ゆかりのキャラクターたちが、大友良英さんSachiko Mさんによるオリジナル楽曲とともに踊り出す仕掛けです。

[短期集中連載]
ブランドの未来、ビジネスの未来
第5回 「東京駅100年の計と未来」を伝えた
プロジェクションマッピング

影絵作家・藤城清治氏の書き下ろしキャラクターが
城壁に映し出され、音楽に合わせて踊った
会津若松市の鶴ヶ城のプロジェクションマッピング。
©fukushimaさくらプロジェクト/NHKエンタープライズ


川島 お城の城壁に映像が映し出されるとは、幻想的でダイナミックですね。
森内 長い歴史の中でみなさんが大切にされてきたお城ですから老若男女の幅広い方々に集ってもらいたいと考えました。
川島 歴史的建造物を使ったイベントというと、高齢者やファミリー層が観光的に訪れるイメージもありますが。
森内 これまでのお城ファンはもちろんのこと、20歳代、30歳代の若い人たちにたくさん来てもらえたのが嬉しかったです。今まであまり鶴ヶ城を訪れたことがない方々が、イベントに足を運び楽しんでくれました。
川島 最後の質問です。プロジェクションマッピングは、海外で大掛かりなものはたくさんありますが、森内さんの仕事には、日本人ならではの繊細さや豊かな情感があふれています。たとえば、もっと海外で仕事したいみたいなこと、考えていらっしゃらないのですか?
森内 無いわけではありません。ただ一方で、こういう仕事は、やはり地元に関わりの深い人が携わったほうがいいと思うのです。その国の教育を受けてその国で育った人が、わが事として表現していく。日常を劇場にするためには、表現者自身が、その場の日常を体感していることが必須だと思うのです。
川島 なるほど。地に足が着いた納得の行くお話です。まだまだ日本には「劇的」を必要としている場が多くありそうです。今後のご活躍、楽しみにしています。ありがとうございました。



 森内さんの第一印象は、「想像していたよりも静かで、穏やかな佇まいの方」だった。新しいことを大掛かりにやった方なので、エネルギーにあふれた熱血漢を勝手に想像していたのだけど……。ただ、お話を聞いていくと、紡ぎ出される言葉に静かな熱意がこもっていた。
 伝わってくるのは、美しい作品をつくることを目的とするのではなく、それを見た人の心を大きく動かすことが目的だということ。すなわち“一瞬で空間を劇的に変える”ことにある。
 デザインとは、見た目の色やかたちではなく、意図を的確に伝えることだと普段から考えていただけに、森内さんの作品の意義に、大きな拍手を送りたくなった。
 しかも森内さんは、歴史的建造物を使ってダイナミックに仕事をしている。誰も挑んだことがない規模でやったからこそ、多くの人の気持ちを動かし、世に影響力を与えた。その途上は容易でなかっただろうと想像もつく。未開の仕事を引き受け、外部チームをまとめて仕事をつくっていく。その試練の先に、大胆で繊細、豪快で緻密という相反するものを備えた、高度な仕事が結実したのだ。
“静かな高熱”とも言えるこの力が、森内さんのつくる仕事に込められているのだと腑に落ちた。

*    「fukushimaさくらプロジェクト」とは、多くの企業の参加(協賛)により、新しい桜「はるか」を増やし、福島県から国内外に届けることを核に、福島、東北を応援する機運を醸成する広報活動等を行うプロジェクトである。

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プロジェクションマッピング

もりうち・だいすけ/武蔵野美術大学卒業後、NHK入局。『紅白歌合戦』などを中心にステージセットやCGのデザインに携わる。2010年よりNHKエンタープライズへ出向。現在は社内プロジェクト<劇的>のプロデューサーとして「TOKYO STATION VISION」などプロジェクションマッピングを中心とした映像事業の開発を担当。CEDEC AWARDS 2013 優秀賞、2013年度グッドデザイン賞受賞。
*各プロジェクションマッピングの詳細はこちら。
http://www.nhk-ep.co.jp/gekiteki/


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