証言5 ムラカミ・カレンさん

「マウイ島の雨水をひいた水道水は、本当においしかった」

 私の出身は、ハワイのマウイ島にあるワイルクという街です。ハワイの水はとてもフレッシュでおいしいですね。私の家では浄水器を使っていましたが、水道水を直接飲んでいる人も多かったです。水も豊富ですね。マウイ島には大きな山があって、そこに降った雨水が川や用水路を通って家庭に届いています。新鮮なお水だから、すごくおいしいんだと思います。
 大学は、アメリカ本土のコロラド州にあるノーザンコロラド大学に進学しました。そこではあまり水道水を飲みませんでした。ハワイに比べて水の硬度が高いので、私の口には合わなかったのです。山火事も多い場所で、水もそれほど豊富ではなかったです。
 東京でも水道水を飲んでいますが、やっぱりハワイとは少し味が違いますね。私にとってはハワイの水が一番おいしいです。
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「水質」の違いが教えてくれること


 いかがでしょう? 5人の留学生の皆さんの話から、世界各国、それぞれの地域や町によって水の性質や水との付き合い方は異なることが分かったかと思います。一般的にヨーロッパは「硬水」の地域が多いと言われますが、実はその硬度も土地によって異なります。飲料水に限らず、お風呂やシャワー、洗濯などにも、そのような水の性質の違いが影響を与えているようです。
 「水の性質の違い」—。実はそこに、「命の水」が育まれるメカニズムを地球規模で考えるヒントも隠されています。水環境に詳しい吉野輝雄先生(国際基督教大学 名誉教授)は、このように語っています。
 「水の性質がそれぞれの土地で異なるのは、水が存在する自然環境が異なるからです。たとえばヨーロッパの多くの場所では、地下水として長い期間をかけて岩の中を流れてきた水が川の水となるので、岩盤の中にあるカルシウムやマグネシウムが浸み出してくることから硬水になります。一方、日本は雪解け水が多く、川の上流から下流までの距離が短い。そのような川の水を取水しているので、軟水になります。硬度だけでなく、川に生育しているバクテリアの違いも、ヨーロッパと日本との水の特性の違いを生み出します」

「水の個性」は自然環境が維持されてこそ


 吉野先生の話にあるように、私たちが普段接している水は、その土地の自然環境のあり方を反映したものなのです。そして、これからも、土地の水を大切にし、水と付き合い続けるためには、地球規模での環境に思いを馳せることが大事なのだと、吉野先生は指摘します。
 「地球上の水の総量は約1400億km3で、その約97%が海水です。地球の表面の71%を覆う海水が太陽熱によって蒸発して上空で雲になり、そのうち年間約40兆トン(総量の0.03%)が陸地に移動します。地上から蒸発した水蒸気とあわせて約100兆トンが雨雪となって地上に降るのです。この量は太古の昔から変わっていません。まさに「天の恵み」と言っていいでしょう。地上に降った水は、河川水や地下水として海へと流れていきます。この循環の過程が生物の命を支え、人間の生活に必要な水を供給しています。世界各地の水事情の背景には、このグローバルな水循環のシステムが存在するわけなのです」
 私たちの生活に不可欠な「水」は、世界各地で降った雨や雪が山から川を流れて海に流れ込む、地球規模での循環システムによって支えられています。留学生の皆さんが語った生活の実感と、それを支える自然環境を同時に認識することで、広い視野で水について考えることができたのではないでしょうか。
 私たち『Coca-Cola Journey』編集部も、水と水を育む豊かな自然について、これからも考えていきたいと思います。

[世界各国水事情番外編]

 日本コカ・コーラでは、この地球規模での循環システムの解明に向け、京都大学の水循環研究に対し、コカ・コーラ社のPETボトル入りミネラルウォーター製品を研究サンプルとして提供することになりました。日本のコカ・コーラシステムは、専門機関の協力のもと、全国に24カ所あるすべてのボトリング工場について水源域を特定し、水資源の脆弱性を把握するための科学的な調査を行っています。この調査によって得られた情報は、各工場の水源域での水資源涵養活動に活かされます。
 コカ・コーラ社のミネラルウォーター製品に利用される地下水についても、きちんと水源域が科学的に特定されていたことから、今回学術研究サンプルとしての利用が可能になりました。また、PETボトル入りのミネラルウォーター製品は、その形状が取扱いしやすく、製造の際には取水/製造年月日等が適切かつ厳重に管理されていることから研究サンプルとして水源域情報等の十分なデータがそろっており、加えて集積や保管、データ管理が容易な点も、今回水循環の長期変動に関する研究のサンプルに選ばれた理由でした。
 京都大学大学院農学研究科・森林水文学分野教授であり、一般社団法人水文・水資源学会会長を務める谷誠氏は、次のように述べています。「水循環の解明は、地球環境の変動において重要な課題であり、森林や食料などの生物資源の利用の仕方や持続可能な社会のあり方を探るためにも、なくてはならないものとなっています。しかしその把握には、組織的で大がかりな現地観測や採水調査を必要とし、大学の研究室だけで取り組むのは容易ではありませんでした。今回、PETボトル入りのミネラルウォーター製品をサンプルとして利用できることが分かり、コカ・コーラ社という世界企業を研究パートナーに得たことで、広域的かつ継続的な水循環研究を行う環境が整ったことをうれしく思います」