文=ジェイ・モイエハンナ・ニーマー

コカ・コーラ」ボトルが100周年を迎えた2015年、ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)主催のアート展「コカ・コーラ ボトルアートツアー」が世界各地を巡回しました。そこで展示された作品の中でも、ひときわ注目を集めていたのが、米国出身のアーティスト、バートン・モリスの100枚にも及ぶ「コカ・コーラ」ボトルのシルクスクリーン作品です。

実は1年前の2016年に、歴代製品やアート作品などを保管するアーカイブ庫の担当者であるジェイ・モイエハンナ・ニーマーが、ロサンゼルス郊外にあるモリスの自宅を訪れ、彼にインタビューを行っています。

さっそく、その内容をご紹介しましょう(以下、カッコ内はモリスのコメント)。

 

■鮮やかで大胆。見ると元気が出るアート

バートン・モリスの自宅の壁は、見た瞬間に元気が出るような鮮やかな色彩の作品であふれています。カラフルな蝶、オリーブを飾ったマティーニのグラス、特大サイズのポップコーン、「コカ・コーラ」ボトルなど、です。これら彼が描いたモチーフ自体は、私たちにとって決して珍しい物ではありません。でも、モリスの手にかかれば、そんなモチーフが遊び心あふれたアート作品に変身し、観る者にポジティブなメッセージを届けてくれるのです。

動画:バートン・モリスのアトリエ
※英語のみ

モリスが生まれ育ったのは、彼が尊敬するポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルと同じ、ペンシルベニア州ピッツバーグです(二人は、共にカーネギーメロン大学出身)。モリスは大学で美術とグラフィックデザインを学びました。「エッチングや線描、古い彫刻に興味を持って、学んでいました。年を追うごとに自分のスタイルがはっきりしてきて、やがて現在描いているような絵画にたどり着いたのです」。

自作の特徴を「大胆で鮮烈なスタイル」と語るモリスは、小さいころから漫画が大好きだったそう。その中で見た鮮やかな色彩やドラマチックな表現手法が、彼の表現の原点になっているのです。

 

■ブレイクのきっかけはTVシリーズ「フレンズ

モリスがアーティストとしてブレイクしたのは1990年代半ばのこと。彼の描いたコーヒーカップの絵が、大ヒットTVシリーズ「フレンズ」に登場するカフェ「セントラルパーク」の壁にかけられていたことがきっかけでした。

 

「『フレンズ』があれほどのヒット番組になるとは想像もしていませんでした。この番組がポップカルチャー史に残る名作となったおかげで、そこに登場する私の作品も、人々の意識に刻み込まれることになったのです。今でも『フレンズ』の再放送中にテレビをつけると、ちょうど私の作品が壁にかかっている場面を目にすることがよくありますよ」

フレンズ」をきっかけに、コーヒーカップの画はすっかりモリスの代表作となりました。「アジアやヨーロッパで展覧会を開くと、必ずと言っていいほど『<フレンズ>のアーティストの方ですよね』と話しかけてくれる人がいます。ドラマのおかげで知名度が上がり、多くのチャンスの扉が開いていったんです」。

 

■「コカ・コーラ」はエネルギーの象徴

人々の日常の、身近に存在するものをモチーフに選んできたモリスが、「コカ・コーラ」を描くようになったのは、ごく自然な流れでした。昔から大の「コカ・コーラ」ファンだったモリスは、何よりもそのデザインに魅力を感じ、惹きつけられてきたと言います。「『コカ・コーラ』の赤と白のシンボルカラーに、ボトルの形。グラフィックデザインもプロダクトデザインも含めた『コカ・コーラ』ボトルそのものに、魅了されていたんです。それはもはや普遍的な芸術と言っていいでしょう。『コカ・コーラ』ボトルを見ただけで、アーティストとしての感性が刺激され、頭の中を何十ものアイディアが駆け抜けます」。

コカ・コーラ」ボトル100周年を記念して、モリスはそれらのアイディアを次々に形にしていきました。2015年に世界各地を巡回したアート展「コカ・コーラ ボトルアートツアー」のために、彼は「コカ・コーラ」ボトルをモチーフとする100枚の異なる作品を完成させたのです。

 

「私はキャンバスや板、紙などに絵の具で描くのが好きで、基本的にアクリル画家として知られています。でもこのプロジェクトでは、アンディ・ウォーホルの作品でも知られるシルクスクリーンという版画技法で制作することにしました。スプレーペイントやアクリル絵の具を使い、繰り返し作品を印刷していったのです」

彼の作品の特徴とも言える、エネルギーを発散しているかのような鋭い放射状の線は、「コカ・コーラ」ボトルに刻まれた溝と呼応し、モリスの「コカ・コーラ」に対する印象をも反映しているようです。「『コカ・コーラ』のことを考えるとき、まず連想するのは『エネルギー』ですね」。

 

■アートは人生を明るくしてくれる

モリスは日常の何気ないものを独自の視点で捉えて表現することで、鑑賞者が思わず足を止め、元気をもらえるような作品に昇華させています。それはまるで、彼の手によって、モチーフそのものに隠された意味が明らかにされていくようです。

 

自分の作品で飾られた家の中を見回して、モリスはこう語ります。「家族が私の作品を楽しんでくれているのは幸運なことだと感じます。アートは特別な感情を呼び覚まし、私たちの人生を明るくしてくれますよね」。

 

もちろん、身近な人たちだけでなく、面識のない人々に対しても、自身の作品に興味を持ってくれることに感謝しているそうです。

「私が作品を通じて伝えたいのは普遍的なことです。観る人にポジティブなエネルギーを届けたいんです。私の作品が人種や宗教、文化の違いを超えて、世界中の子どもも大人も元気づけることができているのを誇りに思います」