1960年代当時につくられた品質の良い普遍的なデザインを現代に再認識させる、
という意図の下に生まれたプロジェクト「60VISION(ロクマルビジョン)」。
同プロジェクトから生まれた石塚硝子のブランド「アデリア60」の
立ち上げ10周年を迎える今年、
「アデリア60ルックコーラグラス」の新色が発表された。
それは、コカ・コーラのシンボルである
「コンツアーボトル」のカラーに由来する“ジョージアグリーン”。
同製品誕生の経緯を、ナガオカケンメイが語った。

文=星野一樹
写真=村上悦子


60年代デザインの魅力と、「60VISION」の誕生

「アデリア60ルックコーラグラス」の誕生には、僕自身の仕事と「60VISION」というプロジェクトの両方が大きく関わっています。「アデリア60ルックコーラグラス」の意義を分かっていただくためにも、まずは、この二つを説明します。

 僕が主宰する「D&DEPARTMENT PROJECT」は、「時代や流行に左右されることなく永く使い続けられるロングライフデザインを提供する」をコンセプトに、家具や家電、生活雑貨などを中心にした幅広いアイテムを全国で展開しています。この「D&DEPARTMENT PROJECT」は、2000年にデザインリサイクルストアとしてスタートしました。地方のリサイクルショップなどで、誰にも見向きもされず、ゴミ同然に扱われていた家具や生活雑貨を発掘して販売したりしたわけですが、日々たくさんの製品に接していく中で、あることに気がつきます。それは、1960年代に製造されていた製品には、シンプルで品質が良く、普遍的なものが多い、ということです。

ナガオカケンメイが語る
「アデリア60ルックコーラグラス
“ジョージアグリーン”誕生の理由」

 考えて見れば、60年代の日本は高度成長期のまっただ中でした。マーケティングという概念がまだ浸透していなかった時代で、消費者の意向を伺うよりも、つくり手たちが自分たちがつくりたい、提案したい「世界に通用するスタンダード」となるものを、情熱を持ってつくっていました。柳宗理やイサムノグチなどの世界的デザイナーが活動するようになったのもこの時期。だから、当時の製品は僕たちの心を打つものが多いのかも知れません。

 でも、世の中は次第に、大量生産・大量消費の時代へと向かいます。製品の価格競争が起こり、コスト削減のためにデザインは二の次にされ、品質が良くてシンプルな製品は、そのような商品の中に埋もれ、多くが廃番になっていってしまいました。「この時代に生まれた品質の良い普遍的なデザインを現代に再び認識させたい」。「D&DEPARTMENT PROJECT」を主宰していく中で、その想いは僕の中で日に日に大きくなっていきます。その結果生まれたのが「60VISION」だったのです。

 「60VISION」というプロジェクトの目的は、ただひとつ。製品を製造する企業とプロジェクトチームをつくり、永く使える良質な製品を復刻し、販売網を開拓し、マーケットに定着させて永続的に販売していく、ということです。これまで、カリモクやノリタケなど、現在までに12社の老舗企業とコラボレーションしてきました。そして、石塚硝子60VISION」に参加したことが、「アデリア60ルックコーラグラス」の誕生につながるのです。

ナガオカケンメイが語る
「アデリア60ルックコーラグラス
“ジョージアグリーン”誕生の理由」

 「60VISION」と石塚硝子の出会い

 石塚硝子が「60VISION」に参加し、「アデリア60」(『アデリア』は石塚硝子のガラス食器ブランド)を立ち上げたのには理由があります。それは、「美しく、永く使うことができるグラスをつくりたい」という自社のアイデンティティを再認識したいという想いがあったからだと聞いています

 もちろん「アデリア60」が立ち上がるにあたり、たくさんの障壁がありました。たとえば、コストのことがります。ガラス製品をオートメーションで製造する場合、金型を一からつくる必要があり、大きなお金がかかります。また、ある程度の数を量産して単価を下げない限り、適正価格で販売できません。ただ、量産してしまうと、在庫リスクが高くなってしまいます。試行錯誤をした結果、最終的に、人の手で溶かしたガラスを金型に入れてプレスしていく「半人工」の方法で製造をスタートさせることができました。

 こうして製造がスタートしたルックコーラグラスは「アデリア60」というブランドをより輝かせることになりました。当初はクリアガラスのみの展開でしたが、同時にホワイトやレッドなど色数を増やしていくうちに人気商品となったのです。最終的には、生産数を増やすために工場のラインを見直すほどで、現在までに19色を展開してきました。

ナガオカケンメイが語る
「アデリア60ルックコーラグラス
“ジョージアグリーン”誕生の理由」

3年越しで実現したコカ・コーラとのコラボレーション

 今から3年くらい前のことです。石塚硝子の担当者と、これからの「アデリア60」の展開や目標について定期的に話していました。その中で、「せっかくコカ・コーラを飲むためのグラス=コーラグラスという名前を付けているのだから、いつか本家のコカ・コーラとコラボレーションできたらいいね」という話もしていたんです。

 時が流れて、いつの間にかそのような話しを忘れかけていたとき、担当者から突然僕のところに連絡がありました。大体僕に連絡がくるときは「製造をやめることになった」とか悪い話であることが多い(笑)。また悪い話でなければいいな、と思って話を聞いてみると、何と、コカ・コーラとアデリア60のコラボレーションが実現することになった、と言うじゃありませんか。しかもコラボレーションの内容が凄い。何度も使われてその役目を終えたコンツアーボトルを100%原料に使用する完全なるリサイクルプロダクトをつくるというのです。

 本当に、感動しました。半分夢物語で話していたことが本当に実現してしまったという感動もあります。けれど、それ以上に、その話をずっと覚えていて実現に向けて動いてくれた石塚硝子の担当者の姿勢に、感動しました。これは僕の中では大きな事件でしたし、その分思い入れの深い製品になったことは間違いありません。

ナガオカケンメイが語る
「アデリア60ルックコーラグラス
“ジョージアグリーン”誕生の理由」

 この「アデリア60ルックコーラグラス“ジョージアグリーン”」の発売を記念し、展覧会「Long life design of Coca-Cola」を企画しました。コカ・コーラをデザインの視点で注目してもらうためのもので、81日からの東京展を皮切りに、「D&DEPRTMENT」の全国7店舗を巡回していきます。これまでデザインのことをあまり意識せずにコカ・コーラを飲んでいた方たちにも、ぜひ見ていただきたいと思っています。

  次回は、同製品とコカ・コーラのロングライフブランドとしての魅力を、デザインの視点から紹介したいと思います。

 「Long life design of Coca-Cola」の詳細はこちら
http://www.d-department.com/event/event.shtml?id=2164023002143949


◆プロフィール
ながおか • けんめい デザイン活動家・京都造形芸術大学教授・武蔵野美術大学客員教授。
すでに世の中に生まれたロングライフデザインから、これからのデザインの在り方を探る活動のベースとして、47の都道府県にデザインの道の駅「D&DEPRTMENT」をつくり、地域と対話し、「らしさ」の整理、提案、運用をおこなっている。2012年より東京渋谷ヒカリエ「8/」にて47都道府県の「らしさ」を常設展示する日本初の地域デザインMUSEUMd47MUSEUM」を発案、運営。
主著に『D&DEPRTMENTに学んだ人が集まる伝える店の作り方」(美術出版社)、『ナガオカケンメイとニッポン」(集英社) など。www.d-department.com