1930年の第1回大会からコカ・コーラ社が支援しているFIFAワールドカップTM2014年、同ワールドカップのブラジル大会が開催されます。本大会に向けて上り調子にあるザックジャパンに、私たちの期待は高まる一方ですが、日本代表が今大会で好結果を残すのはもちろん、これから先ワールドカップの常勝国となり、欧州や南米の強豪国と肩を並べて行くためにはどのようにしたらいいのでしょうか。そして、サッカーが文化として根付いていくためには、何が必要でしょうか。FIFA ワールドカップに過去2回出場、常に日本サッカーを牽引してきた中山雅史さんに、いま、日本サッカーを強くするために必要なこと、を聞きました。

文=山口博之(BACH
写真=前 康輔


「サッカーは仕事です。だから、手を抜けない」 

──引退から約1年が過ぎてサッカーの見方は変わってきましたか? 

中山 現役から離れても、やっぱりサッカーはいいなと改めて思っています。日本代表戦もJリーグも、高校サッカーも観に行きましたが、緑の芝生のピッチで走って、ボールを蹴れるのがすごく羨ましかった。プロというレベルではなくても、またピッチに自分が立って、ボールを蹴りたいんですよ。 

──やはりサッカーが好きな心は変わらないんですね。選手目線でサッカーを観る感覚は抜けてきました? 

中山 どうでしょう。何が正しい解説者の姿か、僕自身もまだつかめていません。雑誌やテレビでは、取材者やアナウンサーに聞かれたことに素直に答えていますけど、それが正しいのかどうかもわかっていない。自分が感じたままを、グラウンドに立っていた経験から伝えるしかないと思っています。コーチングの勉強をしていく中で、サッカーを伝えるのに必要な視点も増えていくかもしれません。でも、勉強したからといってサッカー観は変わらないだろうなぁとも思っています。 

──サッカーの楽しみ方は、観る側になったとはいえ変わらないと。 

中山 もちろん。基本、やりたい思いがありますから(笑)。それは普通に楽しくできればというレベルですけど、欲が出れば、その先ということもあり得ますよ(笑)。 

──Jリーグもしくは海外リーグと日本代表。サッカー日本代表選手は、リーグの試合と代表戦が活動の両輪です。ただ、代表はほぼ名誉職に近く、Jリーガーは純粋な仕事の場です。中山さんにとって仕事としてのサッカー、職業人としての心持ちとは、どのようなものだったのでしょうか。 

中山 サッカー=自分を表現する場という意識でやっていたと思います。そしてそれが、自分の仕事だと捉えていました。仕事である以上は、全力を尽くして試合の最後の11秒まで力を注がなくてはいけません。そうでなければ観に来くれた人たちに失礼です。そう自覚していました。

 代表の試合は国を背負って戦うわけで、すごいプレッシャーも責任も感じました。ただ、そんな状況下で戦えることなんて、他の仕事だったら考えられません。応援してくれる人たちの気持ちを感じることで、本当の意味での“代表”として戦える。その幸せは、なかなか味わえるものではないと思います。

Coca-Cola Journey独占インタビュー
中山雅史
「いま、日本サッカーに必要なこと」

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中山雅史
「いま、日本サッカーに必要なこと」

──中山さん自身はサッカーを仕事として捉えていたんですね。 

中山 そう、捉えていました。というか、それが当たり前で、そうである以上全力を尽くすのも当たり前だろうと。好きなサッカーをしてお金をもらえて、応援してくれる人たちがいる。応援の期待に応えたいという気持ちを身体で表現して、結果は別にしても、精一杯のことをグラウンド上で表現するのはプロサッカー選手として当たり前ですよね。周りから「すごくがんばってくれて」とか「気迫を感じます」とか言われるとすごく嬉しいのですが、プロサッカー選手は本来そうあるべきで、当たり前のことをしているだけでしょ、とも思うんです。アマチュアではアマチュアの戦い方もあるのかもしれませんが、大切なのは精一杯自分を表現すること。評価は観た人たちがしてくれること。「俺、やったよ」「これだけやれたよ」と思っていても、観た人たちから「そんなことないだろ。もっとやれただろ」と言われたなら、反論したい気持ちも湧くとは思いますが、観た人たちからお金をもらっている以上は、その評価をしっかり受け止めなくちゃいけないんです。その人たちあってのサッカー選手なんですから。自分もやり切った、観客たちも満足した、という二つの感覚が合致した時に、本当にいい試合ができたということになる。それがダメだった時は批判や意見を受け止め、何がダメだったかを吟味して、反省点を次に活かす。そうやって自分を成長させていけるかどうか、絶えずそのようなことの繰り返しなんだと思います。

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