「胸のうちの『侍魂』を表現したかった」


──今回の曲はサンバ隊の勇壮なパーカッションから始まり、サビでは親しみやすいメロディになって、聴く人を鼓舞しますね。
 サビでコカ・コーラのサウンドロゴであるファイブトーンを使っているんですけど、よく耳にするのはメジャー・コードのファイブトーンだと思うんです。でも、逆転の発想でマイナー・コードに乗せてみようって。そうすると、心の中の熱い思いとか精神的な強さとか、そういう雰囲気が出るんですね。それをスパイスにしたかった。日本人が胸のうちに秘めた侍魂みたいなものを表現できると思ったんです。


──2014 FIFAワールドカップTM ブラジル大会が開催中なので、サッカーの話もうかがいたいと思いますが、ナオトさんがサッカーを始めたのはいつ頃のことですか?
 物ごころ付いた時から、3つ上の兄貴たちに混ざって近所でサッカーをしていたんです。それで小学4年の時に学校のクラブに入って、柏レイソルのジュニアユースに入った後は選手権を目指し、大学時代もずっとサッカーをやっていました。いまでも生涯現役を掲げてやっている感じです。日本代表の最後のサプライズ召集も準備はしていました。


──まあ、今回は惜しくも(笑)。
 そうですね、今年は結果を出せていなかったので(笑)。ただ、サッカー人生が終わったわけではないので、次を目指して頑張りたいです。




アラファトPLO議長の前で歌った時に感じたこと


──もちろんサッカーそのものの楽しさや喜びは大きいと思いますが、それ以外にサッカーから得たものはありますか?
 ふたつあって、まずひとつは、旅をしていると毎日世界中で誰かがボールを蹴っている。僕の旅も、その国に降り立ち、街で安宿のオヤジにサッカーできる場所を聞いて、ボールを蹴るところから始まるんです。すると数時間で、その国の一番美しい言葉から一番汚い言葉まで覚えることができる(笑)。サッカーはコミュニケーションツールとして100の情報を飛び越す気がしていて、一緒にフィールドでプレーするだけで、人種も宗教も立場もいっさい関係なく、その国の人たちと一気に近付けるんですよね。
Naoto Talk about “Football and Music”
ナオト・インティライミが語るコカ・コーラ FIFA ワールドカップ™ 公式アンセム


──では、ふたつめは?
 たとえば、もし僕がフォワードで点を取ったら、スポーツ新聞の見出しに“ナオト、ゴール!”って載りますよね? どうしてもサッカーは、フォワードだけが注目されやすい。いま僕がやっている仕事も同じようなことだと思っていて、確かにマイクを持って歌って目立っているのは僕かもしれないけど、実は歌を歌うまでにあらゆるお膳立てをしていただいているからこそ、なんです。サッカーに置き換えれば、ゴールキーパーが体を張って止めて、ディフェンスも怪我をしながら頑張り、なんとか奪ったボールを中盤につないで、中盤は激しい運動量で前へボールを運んでいく。そして、サイドからいいクロスが上がるとフォワードはシュートを放ち、ポストに弾かれたボールがたまたま目の前に転がってきて、「じゃあ失礼します」ってフォワードの僕がゴールを決める。僕はそういう状態で、音楽をやれているんですよね。音楽もみんなでつくっているものだということをサッカーが教えてくれたんです。


──サッカー同様に音楽にも音楽ならではの力がありますね。
 音楽の力を痛感したのは、世界“一蹴”の旅(2003年8月から2004年末まで)の最中、PLOのアラファト議長の前で歌を歌った時です。パレスチナとイスラエルが戦っている中、アラファトさん自身も身の危険を常に感じているような状況で『上を向いて歩こう』を歌った時、その場にいた人みんなが戦いを忘れて、平和な時間を感じていたと思うんです。もちろん、そういった特殊な状況だけでなく、人それぞれ歯がゆさやもどかしさを感じながら生活している中にあっても、音楽を聴くその時間だけはそのもやもやから解放される。音楽にはそんな魔法があるんだということを、日に日に強く感じています。