ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)でアーキビストを務めるテッド・ライアンが、アーカイブ庫から貴重な写真を見つけ出しました。それは、とあるボトラー社(*1)によって今から86年前に撮影されたものでした。一見すると、少年と犬が一緒に写ったごく普通の写真のようですが、この1枚には、ある秘密が隠されているようです……。

文=テッド・ライアンザ コカ・コーラ カンパニー ヘリテージ・コミュニケーションズ担当ディレクター)

 

■人気カレンダーのコスプレで「コカ・コーラ」をPR

ノーザンネック コカ・コーラ ボトリングカンパニーは、米国東海岸のヴァージニア州モントロスを拠点とするボトラー社で、1921年にカーヴァー家という一族が事業を買収して以来、代々家族経営によって会社が維持されています。ボトラー社としての規模は決して大きくはありませんが、コカ・コーラシステム(*2)の中でも、製品PRの発想力の高さはずば抜けていました。その証拠写真を、今回はご紹介いたします。

ノーマン・ロックウェルもビックリ! 1931年「コカ・コーラ」 広告の“コスプレ”少年

ノーマン・ロックウェル作はだしの少年

まずは、こちらの1枚の画をご覧下さい。これは、本国アメリカの「コカ・コーラ」ファンには馴染みの深い絵です。これはノーマン・ロックウェル(*米国の民衆を描き、幅広い人気を博したイラストレーター。1894-1978年)が、1931年の「コカ・コーラ」の広告キャンペーンのために描いた「はだしの少年」という作品。この絵が印刷されたノベルティのカレンダーは、ザ コカ・コーラ カンパニーが作成した歴代のカレンダーの中で最も高い人気を誇り、200万部以上が全米のボトラー社を通じて配布されました。絵のモデルを務めたのは、ロサンゼルス出身で当時13歳のダニー・グラント。そばかすがチャームポイントのボーイスカウトの少年でした。

ヴァージニア州のボトラー社と、「はだしの少年」。一見関係がなさそうなこの二つを結びつけるのが、アシュビー・カーヴァーという少年です。ノーザンネック コカ・コーラ ボトリングカンパニーの経営者アーサー・カーヴァーの息子である彼は、毎年開催される五月祭のパレードに、「はだしの少年」に完全になりきって出場しました。当時カレンダーは大ヒットしていたのですから、彼の姿を見た人は、すぐに元ネタが分かったことでしょう。コスプレをすることで、みごとに「コカ・コーラ」の広告塔の役割を果たしたというわけです。写真で見る限り、アシュビーは1.2キロメートルほど続いたパレードの間中、笑顔で「はだしの少年」役を務めきったことが分かります。

ノーマン・ロックウェルもビックリ! 1931年「コカ・コーラ」 広告の“コスプレ”少年

はだしの少年」になりきってパレードに参加するアシュビー・カーヴァー

なんだか、一緒にいる犬まで笑っているように見えませんか? 犬はアシュビーが手にしているサンドイッチを狙っていたのかもしれませんが、結局サンドイッチにはありつけなかったのではないかと私は想像していますよ!

[日本版編集部より]
TVCMなどは存在しなかった当時、誰もが認識できる製品広告は相当珍しいものでした。そのような時代において、「はだしの少年」を誰もが知る人気の広告へと押し上げたノーマン・ロックウェルの力も素晴らしいですが、そこに目をつけて、広告の登場人物の“コスプレ”をすることにより「コカ・コーラ」のPRに結びつけたノーザンネック コカ・コーラ ボトリングカンパニーの先見性も、とても優れていたと言えるでしょう。

 

*1 ボトラー社コカ・コーラ社製品の製造、販売を担う会社。原液の供給、製品の企画開発、マーケティング活動はザ コカ・コーラ カンパニーが行う。
*2 コカ・コーラシステムザ コカ・コーラ カンパニーボトラー社、および、関連会社で構成されるシステムのこと。