1993年に誕生した「爽健美茶」。
誕生から23年の時を経て、今年5月、
味わい、容器、パッケージデザインが大きく生まれ変わりました!
さっそく『Coca-Cola Journey』は、新「爽健美茶」の顔とも言える
パッケージデザインができあがるまでのプロセスを、
日本コカ・コーラ株式会社デザインチームの原田朋子さんにうかがってきました。

文=稲佐知子
写真=村上悦子

 

■パッケージデザインには、二つの役割がある

──原田さんは普段、どのようなお仕事をされているのですか?

原田 製品パッケージのグラフィックデザインのディレクションを担当しています。日本コカ・コーラが現在扱っているブランドは50以上あります。それぞれの製品特性、および、容器の形状やサイズ展開に合わせたデザインをつくり上げていくことが主な仕事です。

日本コカ・コーラでは、各ブランドのマーケティング全般を担当するブランドチームが中心となり、プロジェクトを動かしていきます。たとえば新製品開発や既存製品のリニューアルであれば、ブランドチームが随時、中身を開発するチームや容器を手掛けるチーム、その他あらゆる関係部署へ開発依頼をすることになります。プロジェクトの中でのパッケージデザインチームの役割は、販売戦略や製品の魅力を表現したグラフィックを開発すること。PETボトルであれば、容器に巻かれているフィルムに、どのようなイラストや写真、文字を入れるのかを検討し、デザインしていきます。

──お客様がその製品を認識するための「顔」を決めるお仕事ですね。

原田 そうですね。パッケージデザインには二つの役割があります。一つは、お客様に「買ってみたい」と思っていただくこと。もう一つは、その製品を「買いたい」という目的を持った方が、製品を探し出すための分かりやすい目印となること。製品の魅力を伝えながら、印象にも残るデザインにすることを心がけています。

──「『爽健美茶』を一新する」というプロジェクトがブランドチームからデザイン担当に届いた場合、そこからどのような作業が行われていくのですか?

原田 今回の新「爽健美茶」プロジェクトは、通常のリニューアルではなく、“ブランドリステージ”という特別な位置づけでした。過去の変遷は大きく二つのフェーズに分かれているのですが今回は第3のフェーズに移る決断をしました。30歳代以上のお客様に飲んでいただくことの多かった「爽健美茶」を、20歳代の若者にも飲んでいただくようにしよう=ブランドを次のフェーズに進化させよう、ということです。「爽健美茶」は、今年で誕生23年になります。つまり、現在成人されている方たちの身の回りには、物心ついたときから「爽健美茶」が当たり前のように存在したわけです。このような方たちを新しいユーザーとして獲得するためには、どのような「爽健美茶」にすればいいか。それが、プロジェクトのメインテーマでした。

そのテーマを分析した結果、「カラダにいいもの、やさしいものがたくさん詰まったブレンド茶」という製品コンセプトの下、パッケージデザインだけでなく、味わいも容器も一新することになりました。そのため、中身の開発、容器の開発、デザイン制作を並行して進めました。各チームの成果を最後に組み合わせてみたらズレが……なんてことが起きないよう、「爽健美茶」ブランドチームの指揮の下、各チーム間で、随時目線合わせをしながら進めました。それが、通常のリニューアルの仕事とブランドリステージの違う部分でした。

──まずは関わる人々がみなで目指す方向性を確認してから、同時に各チームが動き出したのですね。

担当者に訊く、デザイン一新の舞台裏 新「爽健美茶」パッケージデザイン制作物語

パッケージデザイン担当 原田朋子さん

 

■つくられたデザイン案数、なんと300!

──パッケージデザイン自体は、具体的にどのように進めていくのですか?

原田 まずは製品コンセプトや販売戦略を説明するためのブリーフシートを作成します。それに沿ってつくられたデザイナーの提案をもとに、ブランドチームと相談しながらデザインの方向性をまとめたり修正ディレクションをしたりして、ある程度固まったところで外部調査をします。外部調査は、年齢層や属性別の聞き取り調査、地域別の自由ディスカッションやインタビューなど、さまざまな方法で行われます。それらの調査結果を参考に、デザイン候補を取捨選択したり修正したりしながら、最終的な案を固めていきます。

──デザイナーさんとの作業ではブリーフシートが重要になってきますね。どのようなものなのでしょうか?

原田 製品のコンセプトなどを、言葉でくわしく表現したものなのですが、そこにデザインのトーン&マナーを表現する単語、形容詞やカラーチップ(色見本)、その年のトレンドなどの情報も合わせて用意します。

──デザイン自体のイメージではなく、製品イメージを伝えるのですね。

原田 具体的なデザインイメージや案を渡してしまうと、アイデアが固まってしまい、その幅でしか発想できなくなりがちです。それでは、デザイナーと協力し、多くの人の頭で考える意味が薄れてしまいます。そのため、まずはアイデアの素材になるようなものを提供します。

爽健美茶」のターゲットはこのような方々で、その方々の間では、アパレルならこういうもの、雑貨ならこんなものが流行っています、というような生活の情報、趣味嗜好の情報も集めてお渡しします。

──原田さんをはじめ、ディレクター自身もデザイナーであるということで、コミュニケーションがスムーズになるというようなことは感じますか?

原田 最初に全体の販売戦略を立てるのは、各ブランドの責任者であるブランドマネジャーですが、彼ら/彼女らはデザイナーとは違う思考や視点で仕事をしています。コンセプトを説明する場合、同じ単語でも違うイメージで伝わってしまうことがあるので、そこをうまく翻訳して、コミュニケーションがスムーズになるよう心掛けています。

 

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