──デザイン案というのは、どのくらいの数になるのでしょうか?

原田 今回のリステージでは、ものすごい数だったんです。このインタビューを受けることになって改めて数えようとしたのですが、数え切れませんでした(笑)。300は超えていますね。

──通常のリニューアルだと、どのくらいですか?

原田 リニューアルで100案程度、新製品で200案程度だと思います。

──新製品よりもずっと多いのですね! 本当に特別なプロジェクトだったことが実感できます。

原田 今回は特に、途中で案を追加したことも、数が増えた理由の一つです。現行のデザインと新デザイン案を比較した調査を行った際に、現行と同程度の評価であったものの、大きく上回ることができませんでした。けれど、「同程度」ではリステージする意味がない。そのため、さらに追加のディレクションをして、再度、デザイン案を作成することにしたのです。

担当者に訊く、デザイン一新の舞台裏 新「爽健美茶」パッケージデザイン制作物語

──追加ディレクションというのは、具体的にどのようなことを?

原田 たとえば、アパレル業界や建材・インテリア業界の方たちが参考にする流行色や素材に関する資料をデザイナーに提供しました。「今年はこんな配色や素材が流行る」といったような。情報に敏感な20歳代の方たちの感性に訴えたかったことと、ブランドの佇まい自体を変えたいという想いがあったので、感覚的な資料を追加してディスカッションしていきました。もう一歩の飛躍を求めて、飲料のデザインでは普段は使わない方法も模索しつつ進めていきました。

 

■売れるためのデザインをつくるのが使命

──最終的に、膨大な数のデザイン案の中から、どのように絞っていくのですか?

原田 まずはおおまかにスクリーニングをし、徐々に方向性を定めていきます。「カラダにやさしい」というイメージの表現はできているかどうか、ロゴはどの程度変えても大丈夫なのかなど……。

現行のロゴやデザインから大きく変え過ぎてしまうと、買いに来た方がお店で見つけられないというようなことが起こります。広く認知されている製品ほど、変わったことによって、製品自体が「ない」と思われてしまう。製品がお店で迷子になってしまうんです。

──先にうかがった外部の調査に出されるのは、その後の段階ですね。

原田 社内である程度デザインの方向性を固めたら、調査会社に依頼して、一般の方々の意見をすくいあげます。

──自分たちの思惑と、調査の結果が違ってしまうことも、時にはあるのでしょうか。

原田 ありますね。もちろん、「やっぱりこれだよね」というときもありますし。どちらにしても、デザインはアートと違い、受け取り手がいるものです。好きなものをつくるのではなく、売れるものをつくることが使命です。パッケージであれば特に、デザイン自体が売りものではなく、あくまで製品の一部。デザインがどんなにカッコよくても、中身のイメージと合っていなければ「なにか違う」ということになってしまいます。

さらに、一般消費者向けのお茶製品はマーケットが大きく、競合関係も非常に厳しい。そのような環境下で、どのような製品が売れるのかを突き詰め、ターゲットに的中させるための精度を高めて世に出す。それがマーケティングの面白さであり、デザインをつくる私たちも、製品開発の一端を担えているという意味でやりがいがあります。

爽健美茶」のリステージでは、「爽健美茶」の特長の一つである美しい液色がよりひきたつ形状を、ボトルの開発段階から一緒に考えました。これは、単なるパッケージデザインの仕事の範疇を超えた協働作業で、いい経験でした。

担当者に訊く、デザイン一新の舞台裏 新「爽健美茶」パッケージデザイン制作物語

──新しいパッケージデザインは、キーカラーが白に変わったことが印象的です。

原田 シンプルでやさしいイメージを、白というカラーで表現しました。「『爽健美茶』グリーン」と言われるほど、製品の特徴であったグリーンを変えるのは、ある意味冒険でした。通常のリニューアルでは難しかったでしょう。けれど、そこを思い切ったからこそ、お客様にも一新感が伝わるデザインになったと思っています。

また、デザイン意図も変えました。これまでのパッケージに描かれていた植物のイラストには、製品にどのような素材が含まれているのかを説明するという役割もありました。それを、今回のリステージでは、自然素材の“やさしいイメージ”を伝えることを優先させ、植物の葉の具体性にはこだわらないようにしました。

──そんな新「爽健美茶」が店頭に並んだのを目にしたとき、どのような気持ちでしたか?

原田 「長かった、やっとだなー」と(笑)。最初のブリーフィングから導入まで1年かかりましたから、ほっとした気持ちが大きかったかも。

──ご自身が手掛けた製品の売り上げは、やはり気になりますか?

原田 もちろん販売の動向は特に気になりますし、数字がよければ喜ばしいです。それはデザインが、製品の魅力を多くの方に伝える一つの手段となったということですから。

<プロフィール>
はらだ・ともこ / ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営会社で、パーク内の店舗開発や商品デザインを担当した後、2004年に日本コカ・コーラ入社。「ジョージア」などの担当を経て、現在は「爽健美茶」「日本の烏龍茶 つむぎ」「綾鷹 にごりほのか」のパッケージデザインを主に手掛けている。

>>「爽健美茶」ブランドサイトはこちら!

 

≪前のページ 「1」 「2」