「コカ・コーラ」の上を歩くビートルズ》 2016年

パクプーム・シラファンPakpoom Silaphan)というアーティストをご存知ですか?
彼は、いま、「コカ・コーラ」ボトルをモチーフにしたアート作品が注目を集めている
新進気鋭のタイ出身のアーティストです。
ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)の歴代製品や関連アイテムを保管する
アーカイブ庫の責任者、テッド・ライアンが、
彼の作品に出会うことになった経緯と作品の持つ魅力をご紹介します。

文=テッド・ライアン

 

ビートルズコカ・コーラが“まさかの共演”

私がパクプーム・シラファンの作品を知ったのは、いまから数年前のことです。ニューヨーク現代美術館の前でタクシーに乗ったとき、一緒にいた同僚がスマートフォンを取り出し、「こんなアート作品を知っているかい?」と見せてくれたのが、彼の作品でした。スマートフォンの画面に映し出された「コカ・コーラ」ボトルをモチーフにした作品に、私は即座に魅了されました。それと同時に、ビートルズモハメド・アリサルバドール・ダリといった現代におけるカリスマ的な人物と「コカ・コーラ」を組み合わせるという斬新なアプローチにも興味をかき立てられたのです。

当時、ザ コカ・コーラ カンパニーでは、「コカ・コーラ」ボトルの誕生100周年に向けて、ポップアート作品のコレクションを拡充していくことを検討していました。アトランタ本社に戻ると、私はさっそくパクプームについて調べ始めました。すると、ちょうど運良く、彼の作品のうち1点(『コカ・コーラ』ボトルの入った木箱にアンディ・ウォーホルの肖像をあしらった立体作品です)が、クリスティーズのオークションに出品されていたのです。もちろん、私たちはそれを落札しました。これがコレクション第1号でした。

ちなみに、ザ コカ・コーラ カンパニーがアート作品を購入する際には、守るべき二つのルールがあります。一つは、事前に社名を明かさず、匿名で購入すること。もう一つは、その作品がザ コカ・コーラ カンパニーの注文や働きかけによって生まれたものではなく、アーティストの自発的な意思でつくられたものであることです。

他にもいくつか作品を購入した後で、大学院卒業後ロンドンに住んでいたパクプーム本人にメールを送りました。私はそのメールで、彼の作品を非常に気に入っていること、そのうち1点(《モハメド・アリのダブルパンチ》と名づけられた作品)がザ コカ・コーラ カンパニーによるアート展「コカ・コーラ ボトルアートツアー」で展示されること、アート展は彼の出身国のタイにも巡回されることを伝えました。その後、私はバンコクで開かれた「コカ・コーラ ボトルアートツアー」の開会式に参加する機会に恵まれ、レセプションにパクプームの家族を招待することができました。

 

■「古くて新しい」ところに惹かれて

2016年の夏には、同僚のジャスティーン・フレッチャーが、英国で初めて開かれた「『コカ・コーラ』コレクターズフェア」を手伝うためにロンドンに出張しました。彼女はロンドンにいる間にパクプームのスタジオを訪問し、彼にインタビューしました。そして、作品と「コカ・コーラ」に対する思いを語ってもらったのです。その様子を次の動画でご紹介しています。

動画:パクプーム・シラファン、作品と「コカ・コーラ」を語る

インタビューの中で、パクプームは次のように語っています。
「昔から『コカ・コーラ』が大好きで、看板を集めていました。それがアメリカのブランドだとか、ポップカルチャーの象徴的な存在だということを当時は知りませんでしたが、私の日常の中に『コカ・コーラ』は常に存在していて、自然な流れで集めるようになりました。(中略)私は歴史を重ねたヴィンテージのものが大好きですが、同時に現代的な考え方も大切にしています。『コカ・コーラ』も、過去のなつかしさと現代の斬新さを共に体現しているブランドですよね。タイの田舎に住んでいたころ、私にとってザ コカ・コーラ カンパニーはとても遠い存在でした。それがいまでは、自分の作品がザ コカ・コーラ カンパニーのコレクションに収蔵されるようになるなんて……。まさに奇跡ですね」

<日本版編集部より>
彼の作品は、日本では数度展示されたきりで、知名度はまだまだ高くありません。しかし、どこかノスタルジックでもありながら斬新な創意にもあふれた彼の作品は、今後ますます注目されていくことでしょう。これをきっかけに、パクプーム・シラファンという一人のアーティストの存在を知っていただけたなら、幸いです。

斬新な作品でザ コカ・コーラ カンパニーを魅了したタイ人ポップアーティストの物語

「コカ・コーラ」の丸看板の上で絵を描くピカソ

斬新な作品でザ コカ・コーラ カンパニーを魅了したタイ人ポップアーティストの物語

《木箱に入った「コカ・コーラ」ボトルの上のアンディ・ウォーホル》 2014年

斬新な作品でザ コカ・コーラ カンパニーを魅了したタイ人ポップアーティストの物語

モハメド・アリのダブルパンチ》 2013年

斬新な作品でザ コカ・コーラ カンパニーを魅了したタイ人ポップアーティストの物語

『コカ・コーラ』看板の上のアイ・ウェイウェイ》 2013年

斬新な作品でザ コカ・コーラ カンパニーを魅了したタイ人ポップアーティストの物語

『コカ・コーラ』看板の上で座るサルバドール・ダリ》 2014年