■時代を超えて、グーグルとの運命的な出会い

コカ・コーラ社とGoogleがタッグを組んだ!? 最新テクノロジーで進化を遂げた、あの“名作”CM
グーグルのニューヨーク事務所でブレインストーミングに参加するガボア

それから約40年が経過した2012年。グーグルは、「Hilltop」の世界観をITの時代によみがえらせるべく、定年後ミシガン州で暮らしていたガボアを誘い出します。「デジタル恐怖症」を自認するガボアでしたが、最先端のテクノロジーを用いた実験的なプロジェクトのオファーを断る理由は何もありませんでした。

グーグルについては、自分の身体に生じる痛みや不調の原因、そして、死因になりそうな病気を調べるときに使っている検索エンジン、という認識しかありませんでした。彼らには、私がダイヤルやノブのついた旧式の機械を見ると思わず涙ぐんでしまうような年寄りだとは知られたくなかったんですがね」。プロジェクトの記録映像の中で、ガボアは冗談まじりに語っています。

動画:ハービー・ガボアグーグルとのコラボレーション
(*英語のみ)

息子と孫から最低限のIT知識を授けられたガボアは、ミシガン州の自宅からニューヨークに赴き、グーグル本社のクリエイティブ担当やエンジニアのチームと共に1週間を過ごしました。「Project Re: Brief」と名付けられたこのプロジェクトの中で、彼は自身の経験や知見をグーグル側に惜しみなく提供するのと同時に、初めてタブレット端末にさわる機会や、最新のターゲティング広告について学ぶ機会を得ました。「刺激的なぶつかり合いの日々でした。グーグルのメンバーは、私に考えを押し付けてくるんじゃないかと心配していたのですが、そんなことはまったくありませんでした。素晴らしい人たちばかりです」と彼は語ります。

 

■「世界中の人に『コカ・コーラ』を買ってあげる」という歌詞が現実に!

そのようにして完成した現代版「Hilltop」=「Project Re: Brief」とは、消費者がパソコンやスマートフォンを使って、実際に世界の誰かのために「コカ・コーラ」を買うことができるようになるというシステムです。グーグルが提供するディスプレイ広告プラットフォームと、特別な技術を取り入れた自動販売機が、このプロジェクトを技術的に可能にしました。

コカ・コーラ社とGoogleがタッグを組んだ!? 最新テクノロジーで進化を遂げた、あの“名作”CM
「無料の『コカ・コーラ』を贈って、見知らぬ誰かとちょっとした幸せを分かち合いましょう」
と表示された「Project Re: Brief」のスマートフォン画面

たとえば、ケープタウンにいる消費者が無料の「コカ・コーラ」にメッセージを添えて、ブエノスアイレスにいる別の消費者に贈ったとします。受け取り手がテキストや動画メッセージで返答すれば、まったく異なる地域に住む他人同士が、「コカ・コーラ」を触媒にして“つながる”ことになるわけです。

コカ・コーラ社とGoogleがタッグを組んだ!? 最新テクノロジーで進化を遂げた、あの“名作”CM
南アフリカにいる消費者が、自動販売機を通じて
アルゼンチンにいる他人に「コカ・コーラ」を贈る様子

ガボアはニューヨークのマンハッタン13番街に設置された自動販売機で、テクノロジーが人と人をつなげる様子を実際に目の当たりにしました。「世界一世間ずれした街の人々が、狂ったように盛り上がっていたんですよ」と彼は証言します。

盛り上がったのは、広告業界のプロフェッショナルたちも同様でした。「Project Re: Brief」は、世界で最も権威ある広告祭の一つ「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」で、モバイル部門の最優秀賞を獲得。授賞式のために南フランスを訪れたガボアは、「六日間、フランク・シナトラになった気分でした」と彼自身語るように、まるで王族のような歓待を受け、サインや写真をひっきりなしに求められたのです。

当初は少し緊張していたと認めるガボアも、プロジェクトが完了する頃にはグーグルの若手チームの創造性と熱意にすっかり魅了されていました。夢の実現に向けて共に取り組んだプロジェクトメンバーを、彼は次のように絶賛しています。「私は彼らから多くのことを学びましたし、彼らの方が私より優れたアイディアを持っていました。世界のどこかに住んでいる見知らぬ誰かに『コカ・コーラ』を贈るという夢を実現したことは、あえて比べるなら、『Let’s Buy the World a Coke.』に匹敵する成果ですよ」。

≪前のページ 「1」「2」