ローウィが車体デザインを手掛けた「コカ・コーラ」のデリバリートラック

文=テッド・ライアン

 

■“流線型”がお得意。20世紀のインダストリアルデザインの巨匠

20世紀を代表するインダストリアルデザイナーであるレイモンド・ローウィは、冷蔵庫やバス、蒸気機関車から米国大統領専用機「エアフォース・ワン」に至るまで、さまざまな分野のデザインを手がけたことで知られています。洗練された流線型が彼のデザインの特徴で、1949年にはデザイン界の大御所として『タイム』誌の表紙にも登場しました。

コカ・コーラ カンパニー(米国本社)の製品デザインにも、ローウィは携わっています。ローウィが最初に「コカ・コーラ」関連のデザインプロジェクトに起用されたのは、販売機器の機能性とデザインを見直すためのもので、1940年代頃のことでした。このプロジェクトで、彼は、クーラーボックスやドリンクディスペンサー、配送トラックの車体などをリデザインし、それらのデザインは、計算し尽くされた合理性とアートのような美しさを兼ね備えたものでした。

プロジェクトの手始めにローウィが取り組んだのは、「コカ・コーラ」の業務用クーラーボックスのデザインの改善でした。第二次世界大戦によるプロジェクトの中断期間を含む数年間をかけて完成したデザインは、流れるような輪郭と丸みを帯びた角部分が特徴的で、蓋は開閉しやすい位置に変更され、前面にはボトルオープナーとボトルキャップを回収する容器が取り付けられました。このクーラーボックスは1947年頃から広く使用されるようになっていきます。

同じくローウィが手掛けたソーダファウンテン(カウンター形式の喫茶店)用ディスペンサーも、1947年に丸みを帯びたフォルムに生まれ変わり、清涼飲料をつくるスピードは大幅に向上しました(このとき、新しいディスペンサーの導入が利益拡大につながることをソーダファウンテン向けにアピールする広告も制作されています)。

ローウィが1947年にデザインしたソーダファウンテン用ディスペンサー

 

ローウィと彼が率いるデザイン事務所は、「コカ・コーラ」のデリバリートラックも設計しました。ローウィが得意とする流線型はここでも取り入れられていますが、最も大きな改良点は、トラックの使い勝手でした(この改良は、『コカ・コーラ』の配送を請け負うボトラー各社を対象にザ コカ・コーラ カンパニーが実施したアンケート調査で得られた、配達員の生の声を参考にしています)。ドアを車体側面から上に向かって開く着脱可能な構造にして、トラックの荷物の積載量を増やす一方、床面の位置を下げたことで、ケースを積み込む際の作業者の負担を減らしました。トラックの中には、店舗に届ける広告資材を保管するための専用スペースも設けられました。

ちなみに今から数年前、ザ コカ・コーラ カンパニーは、ローウィがデザインした車体を用いた1949年ホワイトモーター社製のデリバリートラックを展示用に購入しています(記事冒頭の写真がそれです)。

 

■真実としての、「コカ・コーラ」ボトルとローウィの関係

さて、「コカ・コーラ」とデザインといえば、「コカ・コーラ」ボトルのことに触れないわけにはいかないでしょう。その流れるような曲線構造のためか、「コカ・コーラ」のコンツアーボトル(グラスボトル)として知られる、オリジナルのボトルのデザインがローウィによるものだと誤解している人もいるようです。しかし、彼はコンツアーボトルのデザインには関わっていません(コンツアーボトルは、1915年にルート・グラスカンパニーが開発したものです)。彼がデザインチームに参画していたのは、1955年に発売された「コカ・コーラ」のキングサイズ(296ml、355ml)とファミリーサイズ(769ml)のパッケージと、1960年代によりスリムな形状でリニューアルされた、クォートサイズ(946ml)のパッケージです。

ローウィは、「コカ・コーラ」ボトルに対する自身の思いを、ザ コカ・コーラ カンパニーに宛てた手紙の中でこう書き綴っています。「『コカ・コーラ』ボトルは科学的かつ機能的な傑作です。簡単に言うと、合理的かつ無駄の抑えられた、見る者の目にも心地良い、よく考え抜かれたデザインだということです。私が知る限り、液体を包むのに最も完璧な形状であり、パッケージデザイン史上に残る作品の一つだと言えるでしょう」。

ローウィは1986年に92歳で亡くなりましたが、彼が生み出したデザインは、今もなお、さまざまな分野の人々に影響を与えているのです。

ローウィがデザインしたソーダファウンテン用ディスペンサーの
広告用に描かれた油彩画(1949年)

 

ソーダファウンテン用ディスペンサーの特許図面

 

ソーダファウンテン用ディスペンサーの広告。
デザインが新しいだけでなく、ソーダファウンテンの利益拡大につながると謳われている

 

ローウィがデザインしたデリバリートラックを紹介する
コカ・コーラ」ボトラー社向け業界紙の広告

 

ローウィのデザインの影響がうかがえる、曲線的なフォルムの自動販売機。
1970年以降は「コカ・コーラ」ロゴの「ダイナミック・リボン」(白い波模様)を強調するため
直線的なフォルムの自動販売機が主流となった