文=テッド・ライアン

 

■「コカ・コーラ」広告のために描かれたのは6作品

ジョージア州アトランタ市にあるワールド・オブ・コカ・コーラ博物館のポップカルチャー展示室には、ノーマン・ロックウェルの絵画作品が展示されています。「コカ・コーラ」広告に使われたロックウェルの作品は合計6作品あり、ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)はこのうち3作品を保有。うち2作品が、ワールド・オブ・コカ・コーラ博物館の常設展示となっているのです。

動画:2013年に開催されたノーマン・ロックウェル展の紹介(英語のみ)

 

■行方不明のロックウェル作品を探せ!

ところで、なぜザ コカ・コーラ カンパニーは、広告に使用された6作品のうち3作品しか保有していないのでしょう?

理由はいたってシンプル。ロックウェルの作品が描かれた20世紀前半は、広告用の絵画や本の挿絵を手掛けるいわゆる“イラストレーター”は、芸術家とはみなされていなかったからです。だから、ロックウェルほどの人気作家が描いた作品であっても、お金をかけて保有するだけの芸術的価値を認められていませんでした。そのため、印刷会社や代理店に渡された作品の多くは、残念ながら、ザ コカ・コーラ カンパニーに戻されることなく散逸してしまいました。現在ザ コカ・コーラ カンパニーが保有しているロックウェルの3作品も、制作当時に手に入れたものではなく、25年かけて探し出して購入したものなのです。

ザ コカ・コーラ カンパニーがまだ発見できていない残りの3作品は、“行方不明のロックウェル作品”として、アンティーク界ではちょっと知られた存在です。1920年代後半から1930年代前半にかけて描かれたこれらの作品を、私たちは今も探し続けています(作品のありかに関する情報をお持ちの方がいましたら、コカ・コーラ社までご一報ください)。

ノーマン・ロックウェルが 「コカ・コーラ」広告のために描いた幻の3作品

「行方不明のロックウェル作品」その1
(1928年の雑誌広告に使用)

ノーマン・ロックウェルが 「コカ・コーラ」広告のために描いた幻の3作品

「行方不明のロックウェル作品」その2
(1930年の屋外広告に使用)

ノーマン・ロックウェルが 「コカ・コーラ」広告のために描いた幻の3作品

「行方不明のロックウェル作品」その3
(1932年作)

 

■“却下”されたロックウェル作品も

コカ・コーラ」広告のために制作されはしたものの、ザ コカ・コーラ カンパニーに採用されなかったロックウェルの絵画や下絵も存在します。ザ コカ・コーラ カンパニーロックウェルを非常に高く評価していたことを考えると(彼は、『コカ・コーラ』広告に署名入りの作品を掲載することが認められた数少ないイラストレーターの一人でした)、彼の作品を不採用にするには、それ相応の理由があったことと推察されます。現在、これらの作品は個人コレクターの手に渡っており、その多くは2013年にワールド・オブ・コカ・コーラ博物館で開かれた展覧会で初めて一般公開されました。

不採用になったロックウェル作品の中でも特に興味を惹かれるのは、1935年のサンタクロースを描いた作品です。「コカ・コーラ」入りのグラスを掲げるサンタクロースの横には、広告コピーとして使われることを意識したとみられる、ロックウェル自身による詩も書き入れられていました。この作品が採用に至らなかったのは、1931年以来サンタクロースの絵を描き続け、“サンタクロースの画家”としての地位を確立していたハッドン・サンドブロムとの関係を、ザ コカ・コーラ カンパニーが優先したからだと考えられています。

では、そのような関係があったにもかかわらず、なぜザ コカ・コーラ カンパニーロックウェルにもサンタクロースの絵を注文したのでしょうか? その理由については現在に至るまで判明していません。

一方、下の美しい作品は「コカ・コーラ」50周年を記念するカレンダー(1936年版)用にロックウェルが描いた下絵です。しかし、ザ コカ・コーラ カンパニーは同時代の著名なイラストレーターであったN.C.ワイエスが描いた「海辺の光景」の方を採用し、こちらの絵は、残念ながら日の目を見ることがありませんでした。

ノーマン・ロックウェルが 「コカ・コーラ」広告のために描いた幻の3作品

コカ・コーラ」50周年の広告用にロックウェルが描いたものの、
採用されなかった下絵