本多 多くの会社において、社内に育児を支援するインフラが整備されてきたことで、産休、育休は市民権を得たと思います。でも、時短勤務についてはまだまだ後ろめたく思っている女性が多いのが一般的な現状です。
資生堂は女性が活躍できる職場環境になるための第3段階を「男女ともにキャリアアップを目指せる、やりがいのある会社」と位置づけていますが、育児期の女性社員はなにしろ時間がないので、ものすごくダンドリを考えて仕事も家事も取り組んでいますよね。長時間は働けないけれど、「時間当たりの生産性」での勝負なら堂々と戦える。第3段階に進むためには、それを会社がどのように評価し、本人がどのように自覚するのかが重要なのです。そこで人事部から全社に向けて、「労働時間と成果」の関係を意識してほしいと強く発信する一方で、時短勤務中の女性に対しては、「制度で守られている」という意識を持つのではなく、ひとつ上の仕事を目指す攻める働き方に意識を転じてほしいというメッセージを送っているのです。
コカ・コーラ社社員、資生堂社員に
「女性社員が活躍する“ハッピーな”職場づくり」を学びにいく
社内のミーティングスペースで
部下とディスカッションする本多さん


清田 たしかに子育て中の女性は仕事も家事も常に最短距離でゴール(=成果)を目指しますよね。私もそんな日々を送っているうちに「ひょっとして私、自分が思っている以上に会社に貢献できるんじゃないかしら」と思うようになって、会社と話をして正社員化と昇進をオファーしてもらい、攻めの働き方に変えたのです。
弊社は、2012年から「women’s linc」(ウィメンズ・リンク)という女性社員のコミュニティを稼働させています。「women’s linc」は、コカ・コーラ社の2020 VISIONで掲げられている「女性雇用、女性の能力開発、女性のキャリアアップ」を推進し、真の働き方の多様化の実現を目指しています。私も、このコミュニティの立ち上げ時のコア・メンバーの中のひとりでしたが、「女性だから無理、女性だから発言できない、女性だから昇進できない」といった意識を持っている女性社員がいるとしたら、「本当はそうじゃないよ」というメッセージを発信して、草の根的に女性社員の意識改革もしていきたいと考えているのです。
コカ・コーラ社社員、資生堂社員に
「女性社員が活躍する“ハッピーな”職場づくり」を学びにいく


子供がいるからこそ働ける

本多 私は育児期の女性社員がもうひとつ上の働き方を目指すには、職場に自分の応援団を増やすことが大切だと思っています。「あの人は時短だから」とマイナスに思われるのではなく、周囲から「彼女と共に成果を最大にするために、自分たちはどう動けば良いだろう」と思って貰えるようにしていく。そのためには、まず自分自身が仕事を効率良く行い、周囲とのコミュニケーションをしっかりとることが必要です。それと、産休に入る前にどれだけ信頼の貯金をしておくかも重要。「あの人がんばり屋だね」という評価を得ておけば、復帰後も快く受け入れてもらえます。
また、若い女性社員は出産と育児で休みをとることを意識して、同期の男性社員の1.5倍の速さで成長するつもりで仕事に取り組むという気持ちを持ってほしいです。大変だなと思われるかもしれませんが、子どもの存在があるからお母さんは頑張れる。ワークライフバランスを考える上ではむしろ、仕事と育児の両立が、女性社員の強みになっていかなければならないと思います。

清田 本多さんの世代のチャレンジがあって、女性社員が働く職場環境がずいぶんと改善されたのだと思います。私は米国から日本に転勤してきたときにひとつ驚いたことがあったのですが、当時の日本の上司は仕事中心で、部下の日常生活にあまり関心がなかったんですね。その点、米国本社の上司は、ワークはもちろんですが、部下のライフに関する情報を聞き出すのがとても上手で、ひとりひとり異なるライフの状況をまさに「個性」であったり「強み」として引き出してくれる人が多かったと思います。こうしたマネジメントのあり方も、これから重要になってくるのかなと思います。本日はありがとうございました。

本多 ありがとうございました。