「Taste the Feeling」
これは、コカ・コーラ社が7年ぶりに刷新したグローバルキャンペーンのスローガンです。


コカ・コーラ社はその130年の歴史を通して、
いつまでも人々の記憶に残る、数々の名作スローガンを世に送り出してきました。
ここでご紹介するのは、そのほんの一部ですが、みなさんはいくつご存知でしょうか?


文=テッド・ライアン


■19世紀末:最初のスローガンに登場したキーワードとは?

コカ・コーラ」史上初の広告は、1886年5月29日付のアトランタ・ジャーナル紙に掲載されました。誕生して間もない「コカ・コーラ」がジェイコブズファーマシーという薬局で初めて売り出されてから、わずか数週間後のことです。その広告に使われたスローガンは「Delicious and Refreshing」。これは「コカ・コーラ」史上、最も長い間使われたスローガンのひとつでもあります。「Delicious(おいしさ)」と「Refreshing(さわやかさ)」の2語は、1920年に至るまでコカ・コーラ社が展開したほぼすべての広告と、トレイや時計など、さまざまな関連グッズに登場しました。
時代とともに変遷してきた
「コカ・コーラ」名作スローガンの数々

1904年の広告。スローガンは「Delicious and Refreshing」


1890年代半ばになると、コカ・コーラ社は、アトランタの広告代理店マッセンゲール・アドバタイジングとタッグを組み広告キャンペーンを展開します。この時期の代表的なスローガンは「Coca-Cola is a Delicious Beverage, Delightfully in Harmony With the Spirit of All Outings」(『コカ・コーラ』はあらゆる行楽にぴったりのおいしい飲み物です、という意味)、「The Great National Temperance Drink」(素晴らしき国民的清涼飲料、という意味)、「Coca-Cola Revives and Sustains」(『コカ・コーラ』は活力と持続力をもたらします、という意味)など、非常に優雅で凝った表現が特徴となっています。


■20世紀初頭:インパクト重視のカラー広告

19世紀末には、凝った表現の長めのスローガンが広告の主流でしたが、コカ・コーラ社は次世代の広告を見据えていました。当時社長を務めていたエイサ・G・キャンドラーと、広告担当役員のサミュエル・キャンドラー・ドッブズは、雑誌に広告を掲載して全国に展開するという新しいトレンドに目を留めます。当時一般的だった白黒の広告に代わって、4色刷りのカラー印刷の広告が標準となりつつあり、従来よりも視覚に強く訴えかけるダイナミックな表現が求められると考えたのです。

時代の最先端を行く広告を制作するために、キャンドラードッブズはミズーリ州セントルイスのダーシーという広告代理店を採用、ダーシーは、「コカ・コーラ」のブランドイメージを確立させるうえで多大な役割を果たしています。同社の創業者であるW.C.ダーシーは、1945年に引退するまで約40年にわたってコカ・コーラ社と深い関係を維持し、一時期はコカ・コーラ社の取締役会にも名を連ねていました。

クリエイティブ・ディレクターを務めたアーチー・リーとともに、W.C.ダーシーは広告史に残る素晴らしいスローガンをいくつも打ち出しました。初期のスローガン「Delicious and Refreshing」も引き続き使用されていましたが、ダーシーはすべての広告と製品パッケージに矢印のマークを表示し、「Whenever You See an Arrow, Think of Coca-Cola.」(矢印を見たら、『コカ・コーラ』のことを考えよう、という意味)というスローガンを付け加えました。1907年には「Good to the Last Drop」(最後の一滴までおいしい、という意味)も使われるようになりました。ダーシーが広告を手掛けていた時代の最盛期は1920年代で、彼らの手によるスローガンには1922年の「Thirst Knows No Season」(季節に関係なくのどは渇く、という意味)、1929年から30年近く、史上最も長期間使われた「The Pause That Refreshes」(さわやかな憩いのひととき、という意味)などがあります。


■20世紀後半:CMソングの台頭

第二次世界大戦後、広告界には新たなトレンドが生まれつつありました。ラジオやテレビのCMが広告の主流になるにつれ、覚えやすいメロディに乗せた短いキャッチフレーズを使用することが重要になってきたのです。それに合わせてキャンペーンのスローガンも短くなっていきました。当時のトレンドを如実に反映している事例として、マクガイア・シスターズが歌うCMソングで使われたスローガン「Be Really Refreshed」(本当に爽快になろう、という意味)があります。
時代とともに変遷してきた
「コカ・コーラ」名作スローガンの数々

1963年の広告に使われたスローガン「Things Go Better with Coke
(『コカ・コーラ』があるともっととうまくいく、という意味)


マッキャンエリクソンのクリエイティブ・ディレクターを務めたビル・バッカーは、1963年にCMソング「Things Go Better with Coke」を書き上げ、フォークトリオのライムライターズにデモテープの作成を依頼しました。録音はニューヨーク57番街にある古いアパートメントで行われましたが、完成したデモテープはバッカーが複数のテープをつなぎ合わせたために随所で音声が乱れ、良い状態とは言い難いものでした。しかしコカ・コーラ社は「かえって味わいがある」とデモテープをことのほか気に入り、6年にわたってその音源を使用し続けたのです。この他にもバッカーは、著名なスローガン「It’s the Real Thing」(それは本物だ、という意味)を盛り込んだCMソング「I’d Like to Buy the World a Coke」(世界中の人々に『コカ・コーラ』を買ってあげたい、という意味)の制作も担いました。


■まだまだ進化し続ける21世紀の広告

絶えず変化し続ける広告の動向を睨みつつ、コカ・コーラ社は1993年に再び広告代理店を変更しました。このときに採用されたのが、クリエイティブ・アーティスツ・エージェンシーCAA)です。CAAは「コカ・コーラ」のマスコットキャラクター「ポーラーベア」を生み出したケン・スチュワートロブ・レイナーといったクリエイティブの精鋭を投入して、スローガン「Always Coca-Cola」(いつでも『コカ・コーラ』を、という意味)を掲げた一連の広告を制作しました。

近年では、CGアニメの使用も「コカ・コーラ」の広告では定番となっています。2006年の「Coke Side of Life」(Cokeのきいた人生を)や2009年の「Open Happiness」(ハッピーをあけよう。)キャンペーンでは、「Grand Theft Auto」「It’s Mine」「Happiness Factory」といったコカ・コーラ社史上最高とも呼べるアニメ作品が話題を集めました。

広告スローガンの役目は、それを聞いた人の心に訴えかけ、記憶されることです。そしてスローガンをブランドと結び付けて覚えてもらうことで、はじめて宣伝効果が生まれます。「コカ・コーラ」は幸運なことに、その時代を代表する優秀な才能の持ち主たちを味方につけてきました。W.C.ダーシーアーチー・リービル・バッカーといった広告業界の巨匠たちの創造力によって、歴史に残る傑作スローガンやCMソングの数々を生み出してきたのです。


■スライドショーで見る、歴代の「コカ・コーラ」スローガン(英語のみになります)

http://www.coca-colacompany.com/immersive-galleries/coca-cola-slogans-through-the-years/#