宮城県・蔵王町の「蔵王爽清牛ざおうそうせいぎゅう)」
というブランド牛をご存知だろうか。
爽健美茶」の「爽」と乳清(チーズホエイ)の「清」を採ってネーミングされた、
おいしいのはもちろん、ヘルシーで安全、そして地球環境にもやさしい牛のことだ。
くしくも6月は、国として環境保全に対する関心を高め、啓発活動を図る環境月間。『Coca-Cola Journey』は、
蔵王爽清牛」の人気の秘密を探るべく、蔵王町を訪れた。

文=香川誠
写真=下屋敷和文

 

■おいしい肉に隠された驚きの事実

 東北自動車道・白石インターチェンジから車を走らせることおよそ20分。蔵王連峰のふもと、湯治場として知られる遠刈田(とおがった)温泉近くに、赤い屋根がひときわ目立つログハウスがある。隣接するチーズ工場でつくられる「蔵王チーズ」を使ったメニューを揃えた洋食レストラン、『チーズシェッド』だ。このレストランで絶品と評判のチーズハンバーグが、「爽健美茶」と深いつながりがあると聞き、宮城県・蔵王町の同店を訪ねてみた。

 観光地ということもあり休日はいつも混雑しているらしいが、平日のこの日も12時を過ぎるとどんどん席が埋まっていった。やはりと言うべきか、チーズハンバーグのオーダーは多い。見た目は普通のチーズハンバーグだが、その中身はひと味違った。

「爽健美茶」の茶がらを食べて育ちました。おいしくてエコな「蔵王爽清牛」が示す循環型社会の可能性

チーズシェッド』のチーズハンバーグ。
ライスとスープと「爽健美茶」がセットで付いてくる

 2種類の蔵王チーズをのせたハンバーグにナイフを入れると、肉汁がたっぷりとあふれ出す。ジューシーな肉にチーズのまろやかさが相まって、口の中でとろけるようだ。さらに特徴的なのは、後味。さっぱりとしていて、ハンバーグを食べた後でも胃がもたれるような感覚はまったくない。

 レストランを運営するのは、酪農畜産技術の調査や開発を行い、乳製品の製造や販売を行っている一般財団法人蔵王酪農センター。同財団常務理事の菅井啓二さんが、ハンバーグのおいしさの秘密を教えてくれた。

「ここのチーズハンバーグには、地元ブランドの『蔵王爽清牛ざおうそうせいぎゅう)』の肉が使用されています。『爽健美茶』の茶がらとチーズ製造時に出る乳清(チーズホエイ)を混ぜたエサを食べて育っているので、それぞれ一文字ずつ取って名付けられた牛です。この肉は、おいしさの指標とも言われているオレイン酸含有率が60%もあることが分かっています。これは一般的な国産牛に比べても高い数値で、良質な肉であるということを示しています」

「爽健美茶」の茶がらを食べて育ちました。おいしくてエコな「蔵王爽清牛」が示す循環型社会の可能性

蔵王爽清牛の誕生前からこのプロジェクトに携わっている菅井啓二さん

 脂肪酸の一種であるオレイン酸は低温でとけるため、これを多く含む牛肉は脂身があっさりしているという。近年は健康面でも注目されていて、悪玉コレステロールを抑制して動脈硬化や高血圧を予防する効果があると言われている。

 おいしいだけでなく、体にもやさしい。そして、もう一つ忘れてはならないのは、蔵王爽清牛が資源循環型社会への転換を象徴する“エコ”なブランド牛であることだ。

 

■栄養豊富でエコな飼料「乳茶餌(ニューチャージ)」誕生!

爽健美茶」の茶がらとチーズホエイが結びついたのは、2008年に蔵王町で開かれた蔵王町企業振興連絡協議会での意見交換がきっかけだった。菅井さんが振り返る。

「当時、私たち蔵王酪農センターが抱えていた課題は、牧場のエサ代が高くなっていることと、チーズ工場で出るホエイが産業廃棄物になっていることでした。一方で、コカ・コーラ社さんからは、茶がらやコーヒーかすが産業廃棄物になっているという話を聞いて。両者とも、産廃の処理にかかるコストが事業上のネックになっていたので、これらを廃棄せずに有効利用できないかと知恵を出し合いました」

 そこでまず菅井さんたちは、コカ・コーラ ボトラーズジャパン(以下CCBJI、当時は仙台コカ・コーラボトリング)蔵王工場で排出されるコーヒーかすを、蔵王酪農センターが管理する牧場で引き取ることにした。牛舎の床に敷くおがくずの価格が高いため、コーヒーかすで代用することにしたのだ。コーヒーかすには脱臭効果があるので、コスト面だけでなく牛舎の環境も改善された。

 続いて取り組んだのが、「爽健美茶」の茶がらの有効利用だ。「爽健美茶」の原材料にはハトムギ、玄米、大麦といった穀物が含まれており、その茶がらにも飼料としての栄養が残っている。茶がらの廃棄を減らしたいCCBJI蔵王工場と飼料を確保したい蔵王酪農センター、両者の思惑が一致し、話はスムーズに進んだ。

 まず菅井さんたちは、茶がらを牧草に混ぜて牛に与えてみることにした。しかし、それだけでは食べなかったという。

「においや食感が合わなかったようです。そこで牧草と茶がらを混ぜてサイレージ(牧草などの飼料を発酵させたもの)にしてみました。するとにおいが良くなり、牛も喜んで食べるようになりました。その後、栄養価をさらに高めるために我々のチーズ工場で出るホエイも混ぜることにしたのです」

「爽健美茶」の茶がらを食べて育ちました。おいしくてエコな「蔵王爽清牛」が示す循環型社会の可能性

びんに入っているのが「爽健美茶」の茶がら

「爽健美茶」の茶がらを食べて育ちました。おいしくてエコな「蔵王爽清牛」が示す循環型社会の可能性

牧草と混ぜて発酵させ、チーズホエイを加えるとこうなる

 安全性の調査を経て2010年、ついに両者のコラボによるオリジナルのエコフィード、その名も「乳茶餌(ニューチャージ)」が誕生した。エコフィードとは、食品製造の過程で生じる副産物等を廃棄せずにリサイクルして製造された家畜用飼料のこと。蔵王爽清牛を育てるニューチャージが完成すると、蔵王町と関係者も加わって、これを地域の利益につなげるための協議会が設立された。蔵王爽清牛は町をあげての地域ブランドとなり、牛肉はお土産品や給食として提供されるほか、工場見学や酪農体験をセットにした観光ツアーが組まれるなど、さまざまな形で活用されるようになったのだ。

 

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